FC2ブログ

白日陰影

箱詰系、拘束系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

少女二人の遠隔心中

でぃれに様からのご依頼で執筆したものです。
呼吸制御プレイに嵌ってしまった百合カップルが、家庭の事情に振り回された結果、遠隔で心中することを選び、最期で最高の呼吸制御プレイを行う話です

※呼吸制御と死ネタですので、耐性がない方はお気をつけください。

つづきからどうぞ
少女二人の遠隔心中


『やっほー。りっちゃん見えてるー?』
 画面の向こうで最愛の彼女が手を振っている。
 いつもと変わらない、太陽みたいな彼女の笑顔に安心した。
「うん、見えてるよ。うさりん」
 彼女とはもう長いこと直接会えていないから、ヘッドセットを通して耳元で声がするのにも慣れてしまった。
 こうしてやりとりをするようになった当初は、話すたびに彼女の声が耳元で聞こえ、すぐ傍で囁かれているような気がして、いちいち赤面していたものだ。
 そんな私をうさりんはいつも「可愛い」と言ってくれた。彼女の方は最初から特に照れる様子もなく、普通に喋っていたものだけど。
 私とうさりんの感覚や物事に対する捉え方は全く違うのだ。
 だからこそ、私は彼女に惹かれた。
 少し、というか結構陰気な気質のわたしにとって、彼女の眩しいほどに明るい気質は憧れであり、尊敬に値するものだった。
 逆に、私の方にうさりんが惹かれるようなところがある自覚はないけれど、彼女に言わせれば、彼女もまた自分にないところを持つ私に惹かれたのだという。
 私たちは全く違うけれど、そういう意味では似たもの同士でもある。
『そっちは大丈夫? 上手く逃げることはできた?』
「うん、大丈夫。ここは私がこっそり山奥に作っておいた隠れ家だから数日は大丈夫。……うさりんがここまで来られたら良かったのに」
 あ、しまった。
 言っても仕方ないのないことを、つい口に出してしまった。
(うさりんだって、こっちに来られるなら来たかったに決まってるのに……)
 自己嫌悪に陥ってしまうのを、うさりんの明るい声が浮上させてくれる。
『ごめんね。あたしも地下の秘密部屋までは何とか逃げられたんだけど……さすがに、そっちまで行くのは無理だったわ』
 ほんとにしつこいったら、と彼女は不満げに唇を尖らせた。
 そんな彼女の様子に、私は慌てて声をかける。
「ご、ごめんねうさりん……私の方こそ、そっちに行ければよかったのに。県内を逃げ回るので精一杯で……だから……だから、うさりんは悪くないの、悪いのは――」
『りっちゃん』
 いつもの癖で「悪いのは私」と言いかけたのを、うさりんが穏やかな声で遮る。彼女は私を優しい目で見つめてくれていた。
『決めたでしょ? 悪いのは――』
 そこまで言われて彼女との約束を思い出した。
 そうだ。悪いのは。

「『身勝手で、無理解な、身内』」

 決して私やうさりんが悪いのではない。
 身内にも色々と事情があるのは理解するけど、すべては身内が悪い。わたしたちは話し合った結果、そう考えることに決めていたのだった。
 それは当然の帰結だ。
 私たちは――女の子同士ではあるけれど――恋人なのだから。
 子供の頃から特別に仲が良くて、体が大人になって『そういうこと』に興味を持っても、私がそういうことをする相手はうさりん以外に考えられなかった。
 幸運にも、うさりんも同じように考えてくれていて、私とうさりんはお互いを愛していた。
 ただ、複雑な家庭の事情を抱えていた私たちは、同性愛であることも、お互いに愛し合っていることも周囲に話すことはできず、ひた隠しにしていた。
 表向きはあくまでも仲のいい友人であり、幼馴染の関係を貫いていた。
 普段は遠くに住んでいるために、会うことも中々難しかったけど、今の時代は家族にも内緒で話す方法がいくらでもあったし、時には示し合わせて旅行したりして、楽しく平和に過ごしていた。
 けれど、ある時を境に事情が根本的に変わってしまった。
 それまでは協力関係にあったお互いの家が、方針の違いから鎬を削る敵対組織になってしまったのだ。そのくせ、表向きは協力し合う関係を維持していたから性質が悪かった。
 ある時、親は私にうさりんを通じて相手の家の裏事情を探れと強制してきた。彼女を利用して、自分たちの家が有利になる情報を引き出せ、と。
 それと時を同じくして、うさりんもまた同じように私を使用して裏事情を探るよう、家族に強要されていた。
 もちろん、お互いを裏切るなんてことは考えられなかった私たちは、すぐにそのことを正直に伝え合った。
 示し合わせてなるべく当たり障りのないことを伝え合ってしのいだけど、その後も度々互いの家の裏事情を探るように強要された。
 誤魔化しはいつまでも続けられるようなものじゃない。
 それだけでも辟易していたのに、家族は私たちにお見合いをするように言ってきた。
 もちろん家の力を増すための政略結婚で、相手は十も二十も歳の離れた男性ばかりだった。
 私たちの恋愛対象も心情も、何も考慮されることはなく、ただ家のためにその身を捧げろというわけだ。結婚したら滅多なことでは繋がりが切れないよう、どんな手を使っても迅速に子供を孕めとまで言われた。
 ただでさえ恋人を利用しろと求めてくるのに辟易していたのに、そんなことまで強要されそうになり、私たちの身内への感情は完全に冷めてしまった。

 そして、身内の身勝手さに振り回されるのに疲れてしまった私たちは、一緒にこの世に見切りをつけることにしたのだった。

 当初は心中旅行を計画しようとした。
 けれど、私たちの家はお互いの家のことを常に監視していて、出入りや移動を厳しく制限されていた。そんな状況では、直接会うわけにはいかなかった。
 うさりんに会うと正直に伝えると監視がつくだろうし、万が一彼女と心中しようとしていることがバレれば、二度とうさりんとやりとりすることすらできなくなることは想像に難くない。
 だからといって、このまま唯々諾々と親の言うことを聞いていたら、いつか意に沿わない、私やうさりんの不利益になることをさせられてしまう。
 私たちが仲違いするように仕向けてくる可能性だってあった。
 だから私たちは、それぞれで準備を重ね、家にばれないように相談しながら、ようやくこの誰にも邪魔されない状況を作り出したのだった。
 直接触れ合うことが出来ないのが心残りだったけれど、無理やり引き離されて二度と話すことも出来ないまま終わるよりは、遠く離れていても繋がったまま終わりたい。
 それが私たちふたりの結論だった。
 いくら普通の子とは立場が違うとはいえ、家にもバレないようにこの状況を作り出すのには相当苦労したものだけど。
 私はこういうこそこそとした作業とか根回しが得意な方だったからまだよかったけど、逆に細かなことが苦手なうさりんは相当苦労したのだと思う。
 珍しく疲れた様子で、うさりんは溜息を吐いた。
『本当に苦労したわ……我が母ながら異様に勘が鋭いったら……』
「うさりんでも大変だったんだね」
『そう言うりっちゃんだって、大変だったでしょ?』
 そう問い返されると頷かざるを得ないけど。
「う、うん。まあ……お父さん、ものすごく疑り深いんだもん……」
 警戒するべきことが多い立場なのだから仕方のないことかもしれないけれど、私たちにしてみれば、本当にはた迷惑な身内だった。
『何はともあれ、準備は万端ってことでOKよね?』
 うさりんの質問に、私はこくりと頷くことで応える。
「うん、こっちは大丈夫。うさりんの方こそ、大丈夫なの?」
『問題ないわ。とはいえ、しっかり道具の確認はしないとね。ひとつひとつ確認しましょうか』
 そう言ったうさりんは、カメラを少し引き気味に動かし、自分のいる部屋の状況が私からよく見えるようにしてくれた。
 画面に、うさりんのいる部屋の様子が映し出される。隠れ家の一室なのだろう。壁に窓はなく、どこか薄暗くて、いかにも地下室らしい雰囲気が漂っている。
 広いけれど殺風景な部屋だ。十畳くらいの大きさの部屋に、ブルーシートらしきものが敷かれ、その上にうさりんが立っている。そのブルーシートの上には色々な道具が置いてあり、見る人が見ればそれが少し変わった性行為の際に使う類のものであることに気づいただろう。
 そして当然、彼女の性的なパートナーである私は、それらが何なのか知っている。

 それらは、SMプレイの際に使われる道具だった。

「じゃあ一緒に道具の最終確認しよっか」
 私も同じようにカメラの位置を調整して、部屋の中の様子が見えるようにする。
 私のいる部屋も、うさりんの部屋と同じように敷いたシートの上に、無数の道具が並べられていた。山奥の隠れ家だから、どこかじめじめしている窓のない部屋であることも共通だ。
 ある理由から、床に敷いたブルーシートだけでなく、壁紙の色も合わせたものにしていたから、ぱっと見は同じ部屋にいるようにも見える。
『最高ね、りっちゃん! あ、その足元にあるのは、私が頼んでた奴?』
「うん。そうだようさりん」
 彼女が示したのは、胸に取り付けるピアスだった。
 乳首のピアスホールは、まだうさりんに直接会えていた頃に開けてもらった。その穴をきちんと維持していたから、いまでも乳首にピアスを問題なく装着することが出来る。
 このピアスは一見小さなものだけど、細かく振動する機能が付いていた。
 私の胸を責めるのが好きなうさりんが用意させるのも納得の逸品だ。
 これを取り付けることで、そしてそれが動くことで、どれほどの快感を得られるのか。
 想像するだけでドキドキする。
 私がそのピアスを手に取って、うさりんがよく見れるようにカメラに近付けると、彼女はとても嬉しそうな笑顔を浮かべた。
『いいわね! とてもキュートよ、りっちゃん! 着けてるところを早くみたいわぁ……』
 そんなことを言う彼女の言葉に、さらにドキドキさせられる。
 一方私も、うさりんの画面を見て、私が頼んでいたものがあることに気づいた。
「うさりん、そこにある長いのって……」
 するとうさりんはそれを手にとって、カメラに向かって嬉々として見せつけてくれた。
『じゃじゃーん! そうよりっちゃん! りっちゃんが言った通りの機能を持つ、送ってもらった型の通りのサイズ・形状を用意したわ! つまりこれはりっちゃんの一部と言っても過言ではないわね!』
「そ、それは過言だよぉ……」
 あまりに堂々と見せつけてそんなことを言うものだから、恥ずかしくなってしまった。
 なにせ彼女が見せつけているものというのは――結構な長さを誇るバイブのついた、貞操帯だったからだ。
 そのバイブの長さは私が真っ直ぐ手を伸ばしたときの、指先から手首までの長さに設定してある。
 形状も私の手から型を取っているので、確かにそれは私のものに似せたものではあるのだけど、私のものそのものじゃない。
(まあ、確かに自分の代替物として頼みはしたんだけど……)
 私は自分の手を彼女の膣の中に入れてみたいという願望を持っていた。
 私とうさりんには体格差があるがゆえに、フィストファックをしても大丈夫だろうという確信があった。
 そうして彼女の体の奥まで自らの手で開発し、いつもは天真爛漫で元気いっぱいの彼女を、ひとりの女として泣くほど啼かせてあげたい、と考えていた。
 残念ながら自分自身の腕を入れることは叶わない夢に終わってしまうけれど、うさりんがそのバイブを『私の一部』として体の中に受け入れてくれるのであれば、夢が叶ったといってもいいのかもしれない。
 ちなみにバイブはいまの状態だと私の腕そのものみたいな大きさで太さだけど、芯の部分以外は柔らかな素材で出来ているので、挿入したときの太さはそこまで大したものにはならない。普通のバイブと比べれば、まあ太いけれど。
 私の小さな手とは言え、それなりの時間をかけて慣らさないと膣の中に腕を挿入することは、本来はさすがにできないためだ。
 うさりんは普段から拡張してこの日に備えようかと言ってくれたのだけど、そこまでさせるのは純粋に彼女に悪いし、万が一周りに気付かられたら監視の目が厳しくなることも考えられたので、そう言ったことはせずにいてもらっていた。
 ともあれ、その特注のバイブは、疑似的に私の夢を叶えるためのものだったのだ。
 用意するのは大変だっただろうに、やってくれたうさりんに感謝だ。
 ひとまずそれは置いて、他の道具へと話を移す。
『こっちの道具は――』
「前から使ってるこれも――」
 私たちはお互いに用意した道具の数々を見せ合う。
 それらはすべて、お互いがお互いに身に着けて欲しいという要望に従って用意したものだった。共通した道具もあり、離れていても私たちは一緒だという想いが籠っている。
 これだけの数の道具を、ちゃんと全部身に着けることが出来るのだろうか。
 少し不安でもあったけど、それが出来た時、最大の快感と最高の死が訪れるであろうことも予感していた。
 そして、道具の状態を確認しながら姦しく話し込んでいたわたしとうさりんは、最後の道具に手を伸ばした。
「……これで最後だね」
『ええ、これが一番大事だわ』
 うさりんの言う通り、その道具こそ、今回のプレイで一番重要な装備だった。
 その装備とは。

 呼吸制御を行うための、リブレスバッグ。

 なぜこれが一番重要なのか。それにはこのリブレスバッグが持つ機能だった。
 普通のリブレスバッグには外気を取り入れるために開いている弁があるけど、このバッグはその弁を任意で閉じることが出来る。
 しかも、その閉じる閉じないの操作は、遠く離れた場所からでも出来るようになっていた。
 私とうさりんはその操作権をお互いに持っている。
 つまり、私とうさりんはものすごく遠く離れた場所にいながら、お互いの命を奪うことが出来るというわけだった。
「これで一緒に逝けるね、うさりん」
 とても嬉しい気持ちでそう言うと、画面の向こうのうさりんも綺麗な笑顔を浮かべていた。
『そうね、りっちゃん』
 傍から見たら、私たちは気が狂っているように見えたかもしれない。
 けれど、私たちにとって一緒に死ねる――それも間接的にとはいえ、相手の手によって――ということは、救いに他ならなかった。

 これが私たちの愛の形。
 傍からは狂っているように見えても、私たちは幸せなのだった。




 私とうさりんは、それぞれ体を洗い、お腹の中まで空にした状態で再びカメラの前に戻ってきた。
 カメラの向こうにはすでにうさりんが戻って来ていて、その裸身を恥ずかしげもなく晒している。
 いくらお互い以外に見る者がいないとはいえ、私はうさりんほど堂々とすることはできなかった。
 それは性格的なものもあったけど、女の子らしい体つきをしているうさりんに比べて、私は自分の体がどうしても貧相に思えてしまうからでもあった。
 うさりんの体はとても健康的だ。
 彼女の住んでいる街が港町だからということもあるのか、よく水辺に遊びにいくのだという。だから、その裸身には水着の形に日焼けの跡が残っていて、生々しくも艶やかだ。
 白い肌とのコントラストに思わずドキリとしてしまう。
 モデルみたいにすらっとした長い手足も羨ましいけど、私が特に羨ましく感じてしまうのは彼女の大きなおっぱいだった。
 本当に同い歳なのかと思うほど、うさりんの胸は大きい。
 たわわに実った、という表現が適切なのだ。直接会えていた頃から人一倍大きくて、触り心地も最高だったと記憶している。頂点にちょこんと乗っているかのような、ピンク色の綺麗な乳首がアクセントになっていて、むしゃぶりつきたくなる妖しい魅力を滲ませていた。
 そんなうさりんの魅力溢れる体に比べると、私の体のなんと貧相なことか。
 そもそも背丈からしてうさりんとは違い、背の順で並んだ時に一番前以外になったことがない。お腹がぽこっとした幼児体型ではないことだけが救いで、うさりんと並んだ時の胸の平たさときたら虚無感に悲しくなるくらいだ。
 痩せぎすの貧相な体は、魅力が溢れる体とはとても言えず、太陽のように輝くうさりんとの釣り合いはお世辞にも取れているとは言い難い。
 太陽と月、どころではなく、太陽と石ころくらいの差があると思っている。
 そんな私がうさりんと並んでも劣等感に苛まれずに済んでいたのは、うさりんが私の全てを受け入れ、愛してくれているからだった。
 小さな背も、足りない胸も、痩せぎすな手足も、全てが可愛く、愛おしく感じるのだと彼女は言ってくれていた。最愛の彼女がそう言ってくれるのだから私が私の体に劣等感を抱く理由は何一つないのだ。
 そもそも、うさりん以外の誰かに気に入られたいわけじゃないのだから、うさりんが私の体を好いてくれている限り、私は私の体を嫌いにならずに済んでいた。
 彼女みたいに堂々と晒すほどには、好きになれなかったけど。
 私は手で体を隠しつつ、ヘッドセットを身につけた。うさりんも同じ格好とは言え、裸にヘッドセットだけを身につけるのはなんともアンバランスで恥ずかしい格好に思える。
「お待たせうさりん」
 声をかける前から画面を見てこちらに気付いていたうさりんが、即座に声を返してくれる。
『湯上りのりっちゃんはやっぱり綺麗ね!』
 私の素裸を見た第一声がそれなのだから、私は赤面せざるを得なかった。
「もう……何言ってるの。うさりんの方がよっぽど綺麗だよ」
『そんなことないわ! りっちゃんの方が綺麗よ!』
 うさりんの言葉は力強い。
 だけど、今回ばかりはそう簡単に譲れない。
「ううん、うさりんの方が絶対綺麗だから」
『そんなことないわ、りっちゃんの方が――』
 私とうさりんはしばらくどっちが綺麗かということを言い合い、そして、どちらともなく笑い出してしまった。
「ふふっ……この話はやめようよ、うさりん」
 お互いにお互いの体が綺麗だと思っている限り、決着がつくはずもない。
 客観的に、という話をするのなら別だけと、うさりんがそういう話を求めていないのは私にもわかる。
『そうね。ちょっと熱くなりすぎちゃったわ』
 お互いが好きすぎるのも時には困りものだ。
 私は少し湿り気を持った髪を払い、カメラの位置を改めて調整する。私の体がきちんと全部映るように。
「それじゃあ……始めよっか」
『ええ。そうしましょう』

 私たちは人生を終わらせるために、最後で最高の呼吸制御プレイを行うべく、用意した道具を順番に体に身につけ始める。

 まず、最初に手に取ったのは、ラバースーツだ。
 ラバースーツ自体は前々からよく使っている道具だ。このラバースーツが何代目かも、もう忘れてしまった。破れたり肌触りが悪くなったりすれば着心地に影響するし、修理も難しいため、すぐ買い替えなければならなかった。なので、一番消耗が早くて買い替えが早いものかもしれない。
「ラバースーツを着出したのは、どっちが言い出したんだっけ?」
『どっちでもなかったんじゃない? 拘束プレイといえばこれってことで用意したような気がするわ』
「……そういえば、そうだったかも」
 まだそういう性的なことに興味を持ち出したばかりの頃に、こういうことをするなら着るもの、という印象・イメージだけでラバースーツを着るようになったような気がする。
 結果としては、もうラバースーツなしでのプレイは考えられなくなったのだから、イメージは間違ってなかったというべきか、私たちに合っていたというべきか。
 いずれにせよ、人生最後になる今回のプレイで着ないつもりはなかった。
 ラバースーツは手足の先が出るタイプで、首から下の体を覆う。
 背中のジッパーを引き下げ、中に潤滑油を馴染ませたら、ラバースーツを足から履いていった。
 ピチピチ、と音を立てながらラバースーツが私の体を覆う。画面の向こうでうさりんも同じようにラバースーツを身につけていた。
 うさりんのガゼルのように引き締まった足がラバースーツに覆われていく。肌に張り付くラバースーツは、はっきりとその引き締まった筋肉を浮かび上がらせ、とても魅力的に、そして性的な魅力に満ちた姿に変えていた。
 一方、私の足もラバースーツが覆っていく。
 痩せすぎで貧相に見えた自分の足も、ラバースーツを身に纏うと少しはマシになるのだから、ラバースーツの魔力はすごい。
 足首から先を出したら、弛まないように手でしっかりと引き伸ばしながら身につけていく。ビチビチになった足はラインがハッキリと浮かび上がるから、うさりん以外の誰かに見られたらかなり恥ずかしい。
 ふと見ると、すでにうさりんは太腿までラバースーツを引き上げていた。私も負けじと急いでラバースーツを身につけていく。
 太腿は足の中で一番肉の着き方がハッキリして、一番魅力が出るところでもある。
 肉付きが不足しがちな私でさえ、ラバースーツがそこを覆うと、引き締められて体つきが綺麗になるので、ありがたい代物だった。
 一方、元から筋肉が引き締まって綺麗な足のラインをしているうさりんの方は、かえって着付けるのに苦労しているようだった。
 ミチミチと、かなりキツそうな音を立てながら、ラバースーツを引き上げているのがわかる。うさりんが少し苦しげに呻くのがヘッドセット越しに聞こえてきた。
『ん……ッ』
 苦労するだけではあって、ピッチピチになった時の姿はすごく魅力を感じる。生地の余裕の問題なのか、私とうさりんではラバースーツのテカリ具合もかなり変わっている。
 そうして足が覆われて行き、とうとうラバースーツが股間に達する。
 このラバースーツには着るためのジッパーの他に、胸と股間に別口でジッパーが走っている。それはラバースーツを着込んだ後でも、胸や股間へのアクセスを容易にするための機構だ。
 ただ、ラバースーツには伸縮性があるため、触れなくてもジッパーを開けるだけでも効果は大きい。開けるだけで大切な部分がむき出しに晒されて、恥ずかしい状態になるからだ。
 着る際には邪魔になりかねないので、ちゃんとジッパーは閉じている。
 きついサイズのズボンを無理やり履くときのように、スーツの腰のあたりを握って引き上げる。お尻をラバースーツの生地が覆っていく感触は、何度経験しても慣れるようなものではなく、とても気持ちがいい感覚だった。
 私の肉付きの足りない体でも、ラバースーツによって引き締められると、ちゃんと肉がついているように見えるのだから、この点に関してはラバースーツの効果は素晴らしかった。
 ただ逆に、元からちゃんと肉がついているうさりんの方はラバースーツの中にその体を押し込めるのに苦労していた。
『ん……っ、っしょ……っ!』
 サイズはちゃんと合っているはずなのだけど、かなりギチギチな様子だった。苦労はしていたけれど、その分ちゃんと着てしまえさえすれば、女体の魅力を最大以上に引き出した状態になる。
 ぴちぴちのラバースーツに覆われたうさりんの下半身は、私とは比べるのもおこがましい、とても素晴らしいものだった。
 ラバースーツを着た私とうさりん。
 そのどちらの方が性的に魅力的かを聞けば、百人中九十九人がうさりんだと答えるはずだ。
(うさりんは私っていうだろうけど……)
 恋人が一番性的に見えるのは当然なのでカウントしない。
 次に、ラバースーツの袖に腕を通す。
 腕の先端から肘、二の腕とラバースーツを引き上げていくと、それに伴ってお腹にラバースーツの前面が触れるようになった。ひやっとしたラバースーツの感触が触れてきて、思わず腰が逃げそうになる。
「ひゃっ……う、んっ……」
 それを堪え、むしろラバースーツを張り付かせるように腰を突き出すと、ラバースーツがお腹だけではなく胸にも張り付き、自分の体がラバースーツに覆われて行っているということを、改めて自覚することになった。
「『ふぅ……ふぅ……』」
 少し息が荒くなる。ラバースーツを身につけるだけで変な気分になってしまう私たちは一般的にみればとんだ変態なのだろう。
 けれど人にどう思われようと気にはならない。お互いがお互いを好きである以上は、他の人にどう思われても問題ないからだ。
『ん……と、んしょ……っと』
 もぞもぞ、とうさりんが自分の胸を掴んで揉むような動きをしていた。それは急にオナニーを始めたというわけじゃなく、乳房の位置を整え、ラバ^スーツがちゃんと体を覆うようにしているのだ。
 乳房は柔らかいものだから、適当に着ると位置がずれてしまうのだった。
 まあ、私は普通に着るだけで綺麗に収まってしまったけれど。
 思わずジト目になってしまっていたのか、うさりんがこっちを見て苦笑いを浮かべる。
 何を言っても地雷になりそうだったので何も言わず、私は手を後ろに回してお尻の上くらいにあるジッパーの金具を直接指で掴んだ。
 一方、うさりんの方はラバースーツのジッパーにそこそこ長い紐が繋いであって、その紐を掴んでいた。
 おおよそ体に関係するほとんどのこと――身長やスタイル、運動などの身体能力的なこと――でうさりんに負けているけど、唯一柔軟性に関することだけは、うさりんより優れている。
 彼女に言われせれば「足が速いとか力が強いより、そっちの方がよっぽど羨ましいよ」とのことだ。
(女の子座りが自然に出来ないのを気にしてたしなぁ……)
 それくらいうさりんの体は硬い。うさりんが自分のラバースーツの金具に紐を取り付けているのも、私がしているように手を後ろに回して直接金具を引っ張り上げるということが出来ないからだった。
 私からすれば大した欠点ではないのだけど、彼女がそれを気にしていることは私も当然知っているので、それを茶化したり指摘したりするような野暮はしない。
 恋人という親しき仲にも配慮あり、である。
(まあ、そもそもの話、うさりんの場合は柔軟性が足りないっていうか、ギチギチだからな気もするけど……)
 かつてうさりんにラバースーツを着せてあげた際、相当な力を込めてジッパーを上げなければならなかった。あの力が必要だと考えると、体が柔らかい私でも背中に手を回して自分でジッパーをあげられる自信はなかった。
 ともあれ、私とうさりんはそれぞれの方法を取って、背中のジッパーを引き上げていった。

――ジジジ、ミチ、ピチ……

 ジッパーが上がっていくほどにラバースーツが体に密着し、体への締め付けが強くなっていく。
 痩せている私でさえそうなのだから、肉付きの良いうさりんが味わうラバースーツの締め付けは私の比ではないことは確実だった。
 うさりんは両手を頭の後ろに回し、胸を見せつけるような体勢を取っている。背中を丸めてはいるものの、両肘が頭の上にくるくらいまで腕をあげているため、脇が晒され、結果として彼女のたわわなおっぱいが普段以上に大きく見えていた。
『んぅ……んん……っ』
 ヘッドセットの向こうから、押し殺したうさりんの呻き声が聞こえてくる。それはとても悩ましい響きを伴っていた。
 そんな響きが私の耳朶を震わせてくるのだからたまらない。こっちまで
変な気分になってしまう。
 位置を調整しつつも、徐々にジッパーを引き上げていく。
 程なくして、ジッパーが背中の上、うなじのあたりに到達した。首回りのラバースーツが変に捩れないように注意しながら最後まで引き上げると、ラバー自体の伸縮性で首回りに完全に密着する。
 常に首が緩く締め付けられているような感じで、なんとも心地よかった。
 私に少し遅れて、苦労していたうさりんもジッパーを上げ切り、ラバースーツを着用し終わる。
『ふぁ……はぁ……はぁ……ふぅー……んっ♡』
 ラバースーツを体に馴染ませるために体を捩っていたうさりんが、うまくラバースーツが収まったのか、少し可愛らしい喘ぎ声をあげた。
 私たちがこう言ったプレイをするときは常にこの服を着ているため、この服を着るだけですっかり気持ちが昂るようになってしまった。
「なんとか着れたみたいだね、うさりん」
 そう声をかけると、うさりんがこちらに視線を向けて来た。
『りっちゃんも着れたみたいね。うん、とってもイヤらしくて魅力的で可愛いわ!』
 めちゃくちゃな褒め言葉を口にする彼女。
 それがこちらに気を遣った褒め言葉ではなく、本気で言っていることだと理解できるので、恥ずかしいことこの上なかった。
「支離滅裂だよ、うさりん……うさりんの方こそ、とっても素敵……エッチだよ」
 いつもは能動的で積極的なうさりんに言われっぱなしなので、今回は逆に自分からも言ってみた。
 恥ずかしさで言えなかっただけで、今までも思ってはいたことだ。言えなくとも、うさりんは私の心中の言葉をちゃんと拾ってくれていたし。
 最期くらいは私からも本心を口にしよう、と思った私の判断は思いがけずうさりんに突き刺さってしまったようだ。
『ふへっ!? あ、ありがと……な、なんだかとても恥ずかしいわ!』
 いつも堂々としているうさりんの頬が、いつもより赤く染まっていた。
 狼狽え、もじもじと恥じらって体を捩るうさりんはとても慎ましい乙女だった。
 ここに来て、彼女の意外な姿を目の当たりにしたような気分だった。そんな風に恥じらわれると、こっちまで恥ずかしくなってしまう。
「い、いつもうさりんが私に言ってることとそんなに変わらないからね!?」
『だってだって! りっちゃんからそんな風に口に出してくれることってほとんどなかったじゃない! ずるいわ!』
 それは確かにそうなのだけど。
「ず、ずっと思ってたことだもん!」
『いやん! もう、恥ずかしいからやめてちょうだい!』
 うさりんが両手で頬を押さえて悶々としていた。
 そんなうさりんの姿は新鮮で、私まで余計に恥ずかしく感じてしまい、それを誤魔化すために口にした言葉がまた彼女を照れさせてしまい――しばらくそんなループを続けてしまった。
 傍で見ている人がいたら「何をバカップルがじゃれ合っているのか」と呆れるであろうやりとりで散々騒いだ後、ようやく私たちは準備を再開した。
「つ、次はこれね……」
 思いがけないところで気力を消耗してしまった。
 とは言え、いままでずっと心の中では思っていたうさりんへの想いを、思う存分口に出来たので、気分としては悪くない。
 それは普段言われ慣れていないことを言われて恥ずかしがっていたうさりんも同じようで、疲れはしていてもどこか幸せそうな気配が滲んでいた。
『ええ、これね』
 ラバースーツと同じく、それも私たちそれぞれの体に合わせた特注品だった。
 分厚い金属でできた首輪である。
 ただ金属で出来ていて丈夫というだけではなく、特注品ならではの特別な機能が備わっていた。
『これを着けたら、もう後戻りはできないわね』
「……後戻りする?」
 今ならまだ引き返せる。
 私にそのつもりは一切なかったけれど、一応そう尋ねた。
 もちろんそれはうさりんも同じだった。
『まさか。早く着けたくて仕方ないくらいだわ』
「じゃあ、一緒に着けよっか」
 その首輪は二つの半円に分かれるようにして、パカリと開くようになっていた。
 私たちの首の直径に合わせたそれを、首に被せるようにして、ラバースーツの上から身に着ける。
 そうすると、ラバースーツの縁が首輪の下になり、首輪を外さないとラバースーツが脱げなくなるのだ。
 ラバースーツのジッパーの金具は取り外せるようになっているので、それが首輪によって食い込んでくることもない。
 ふたりで呼吸を整え、合図を送り合う。
「『……せーのっ』」
 声を合わせ、首輪をカチッという音がするまで同時に閉めた。

――カチッ、チチチ、ガチッ……

 首輪から機械的なロックが施される音が響く。
 鍵穴も何もないからこの首輪が開くことは二度とない。
 首輪にはプレートが埋め込まれていて、私の首輪には「りつ」と「鬼島卯佐美」という名前が入っている。
 もちろん、「りつ」は私のことで「鬼島卯佐美」とはうさりんのことだった。
『嵌ったよー。りっちゃん、見てみてー』
 うさりんがカメラの近くまで首を寄せ、見せてくれている。
 彼女が付けている首輪のプレートには「うさりん」と「鮫山里津」とあった。
 それも、もちろん私とうさりんのことだった。私たちはお互いにお互いのものである。そのことを知らしめるための、首輪。

 そしてこの首輪には、数日後に激しい煙と音を上げながら爆発炎上する機能も備わっていた。

 私たち自身は、これから半日も経たずに死ぬ予定だ。
 けど、万が一死に切れず生き残ってしまっても、あるいは、死に切る前に誰かに見つかって生かされそうになっても、この首輪がある限りは数日後の死は避けられない。
 確実に死ぬための仕掛けだった。
 解除する仕組みは最初からない。着けた者が死ぬことを前提に作られた首輪だからだ。
 我が家の倉庫に保管されていたものを、こっそりくすねて改造したものだった。
 この首輪の本来の使用方法を考えると、我が家の真っ黒さ加減を認識してしまうことになるので、気にしないようにしている。
 ともかく、解除の方法のないそれを身に着けたのは、これでも後戻りできないことを、するつもりもないことを自覚するため。
 わずかにあるかもしれない現世への執着を、徹底的に断つためだった。
 これで、うさりんと一緒に、気持ちよく逝くことだけを考えられる。
 私たちは最高の終わりを迎えるべく、着々と状況を整えて行っていた。
 次に私たちが手に取ったのは、お尻の穴に入れるアナルバルーンだ。
 差し込んだ後、バルーンを膨らませればそれでもう外れなくなる。そのバルーンには空気を通す仕組みがあり、このあと身に着ける予定のガスマスクの排気口にホースを繋ぐと、自分の吐いた息がその仕組みを通じてお尻の穴に注ぎ込まれる仕組みになっている。
 それによって、呼吸するだけで空気浣腸を行うことが出来る。
 私もうさりんも苦しければ苦しいほど気持ち良くなれる性癖持ちだったので、このお腹を膨らませる仕組みは非常に有効に作用するはずだった。
「それじゃあ、まずは私からね」
 私はカメラに背を向け、お尻を突き出すようにしながら、股間のジッパーを開けて行く。今まで密閉されていた股間部が露わになった。
 さすがに秘部の外に垂れるほどにはなってなかったけど、ラバースーツを着る過程で覚えたラバーの感触で濡れ始めてはいた。
 カメラに映るように気を付けながら、アナルバルーンを肛門にあてがう。
「う、うさりん、見えてる……?」
 死ぬほど恥ずかしかったけど、うさりんにそう確認を取る。
 ヘッドセットから聞こえてくるうさりんの声はとても楽しそうだった。
『ええ、バッチリよ! りっちゃんの可愛いお尻の穴がちゃんと見えてるわ!』
「そ、それは言わないでいいよぉ……」
 恥ずかしさのあまり、顔から火が出そうだ。
 私は手早く済ませてしまおうと、肛門に力を入れながらアナルバルーンを押し込む。
「んぅ……んひゃっ!」
 もう少し抵抗があると思っていたのに、私の肛門は想像以上にあっさりアナルバルーンを飲み込んでいた。
 いくら初めてではないとはいえ、あまりにあっさりとバルーンを飲み込んでしまった。自分の体ながら恥ずかしくて死にたくなる。
 いまから死ぬんだけども。
『わぁ……! とてもすごくてキュートだったわ! りっちゃんの体の柔らかさはさすがね!』
「い、いや……さすがにそれは関係ないと思う……」
 確かに体の柔軟性に関しては、うさりんより優れているかもしれないけど、さすがに括約筋には関係ないはずだ。関係あっても嫌だけど。
 そう言いながら、私はアナルバルーンを膨らませるポンプを握り、挿し込んだばかりのバルーンを膨らませていく。
 ぎゅっとポンプを押し込むたびに、体の中が押し広げられ、お尻の穴が広がったままになっているような、奇妙な感覚が広がっていく。
「ん、ぅぁ……っ!」
 しっかりと膨らませると、もうちょっとやそっとじゃ抜けないようになった。
 まだガスマスクと接続していないから、飛び出している管がプラプラと揺れている。
 尻尾――というには卑猥だったけど――が生えたみたいで少し恥ずかしい。
『尻尾が生えてるみたいで、キュートだわ!』
 うさりんも同じことを考えていたようだ。私は顔を赤くしつつ、今度はうさりんの番だと画面に向き直った。
「つ、次はうさりんの番だよ」
『はーい。わかってるわ』
 さっきの私と同じように、うさりんがカメラに背を向け、体を曲げて股間のジッパーを開く。黒いラバースーツが開かれると、その隙間からうさりんの白い肌が覗いた。
 そしてその割れ目の中央に、小さく窄まった肛門があった。
(うさりんは肛門まで綺麗だなぁ……)
 そう思った。
 とはいっても、自分の肛門をしっかり見たことはないし、うさりん以外の人の肛門なんて見たことはないから、うさりんの肛門が普通よりも綺麗なのかどうかは全くわからない。
 だから今この瞬間、私がうさりんの肛門をみて「綺麗だ」と感じたその感覚が全てだった。
 うさりんが、手にしたアナルバルーンの先端をその肛門にあてがう。
『ふー……っ、ん、ん、ぅ……っ』
 さすがの彼女も肛門を晒して平静ではいられないらしく、特に何も口に出すことなく、淡々と肛門にバルーンを差し込んでいった。
 ずぶずぶとバルーンを飲み込んでいくうさりん。
『ふ、う……ん……っ、あ……っ』
 無意識なのかうさりんが小さく呻く声が私に聞こえてきていた。本来ならほとんど声になっていないくらいの呻き声なのだろうけど、マイクとヘッドセットがあるためにそんな小さな呻き声も全て拾い上げてしまっていた。
(もしかして、さっき私が入れた時も、同じように小さな呻き声が聞こえてたのかな……?)
 全然意識していなかった声まで聞こえていたとすると、改めて恥ずかしくなる。
 私がいまさら赤面していることに、背を向けているうさりんは気付かない。
 アナルバルーンを挿入し終えると、それを膨らませる手押しのポンプを握り、力を込めようとする。
 その時、悪魔的な思い付きを閃いてしまった。
「待って。うさりん」
 声をかけると、ポンプを持つ手に力を込めようとしていたうさりんが驚いて、止まる。
『ふえっ? な、なにかしら……?』
 このタイミングで声をかけられるとは思っていなかったのか、うさりんが普段出さない声をあげた。それにも触れたかったけど、我慢して本題を口にする。
「私の合図でポンプを押して? 苦しくなったら言ってね。いくよ」
『え、あ、わかっ――』
「いーち」
 うさりんの言葉を遮り、カウントを始めた。うさりんがポンプをギュッと握り締めるのが見える。
「にーい、さーん……しーい……ごーぉ、ろーく」
 わざと一定のテンポではなく、少しずらして声をかける。
 自分の意思で膨らませているのではなく、私の意思で膨らませている、と感じるように。
『ん……っ、はっ、あっ、あぁっ、ん……あっ♡』
 それをうさりんも感じてくれているのか、自分で膨らませた私よりずっと気持ち良さそうな声を上げた。効果は抜群みたいだ。
『り、りっちゃん……! もう、くるし……っ』
 十何回かくらいで、うさりんがギブアップする。
「じゃあラスト一回ね。3、2、1――はいっ」
 最後の合図を出すと、それに応じてうさりんがギュッとポンプを握り締め――ガクガク、とカメラ越しでもわかるくらいに足を震わせ、その場に膝を突いた。
 うさりんの荒い呼吸音が耳元で響いている。熱の籠ったその声と、明らかに感じているうさりんの姿に、背筋がぞくぞくする。もちろん悪いぞくぞくじゃなく、興奮を伴うゾクゾクだ。
「……えっと……だ、大丈夫? うさりん……」
 いきなりすぎたかな、と反省していると、背を向けていたうさりんがじとっとした目で振り向いた。
『りっちゃん、ずるいわ……私もりっちゃんにこれをやってあげたかった……』
 翻弄されて悔しい、のではなく、自分がしてもらって気持ち良かったから私にもそれをやってあげたかったとうさりんは言ってくれる。
 本当に、私にはもったいないくらいの恋人だった。
「ご、ごめんね。今思いついちゃったから……」
 ちょっとした予定の変更はあったけど、ともあれ、これでお互いに肛門への仕込みは終わった。
 次は、前の穴への処置だ。
 うさりんが身につけるのは最初に見せてもらった、金属の貞操帯に取り付けられる仕組みの、巨大なバイブである。
 私の指先から手首までの長さと形を踏襲したバイブ。それをうさりんは体の中に受け入れてくれる。
 私の手をうさりんの体に入れる代わりだった。
『うふふ。これをつけたら、りっちゃんに体の中を触られているのと同じことになるのね』
「……うさりんはこっちで良かったの?」
 そう言って私が見せたのは、私の膣に入れる予定のもの。
 それはうさりんの指の形をした細いバイブだった。こっちは貞操帯に繋ぐのではなく、入れた後にベルトで抑える仕組みになっている。
 これもうさりんが膣に入れるバイブと同じく、うさりん本人の指の型を取って作られている。
 材質はシリコンで色もピンク色だし、現状の見た目はそんなにリアルではないけれど、型だけは正確に取ってあるので、着色などをしっかりしたら切断された指のように見えるのかもしれない。
『ええ。りっちゃんみたく腕の型を取って……というのも正直惹かれたけど、体格的に実際にできることじゃないもの。私の腕をりっちゃんの大事なところに入れるのは、興奮より心配が勝っちゃうわ』
 体格に差があるゆえに、私はうさりんの膣に自分の腕を入れる想像ができるけど、体格差があるがゆえにうさりんは私の膣に腕を入れる想像ができないのだ。
「私のもサイズそのままになるわけじゃないから、気にしなくていいのに……」
 とは言ったものの。
 私の膣に無理なく入れられるサイズにまで縮めるとなると、もはやそれはうさりんの腕と言っていいのかわからない中途半端な代物になる。
 大きさや太さ・長さを完璧に踏襲した指の形のバイブの方が、よほど一体感があるのかもしれなかった。
『それじゃあ入れましょうか』
 私たちはそれぞれの膣に入れるバイブを、まず口で咥えた。舌を絡めて唾液を塗していく。
(ん……これがいまのうさりんの指の形……)
 直接会えていた頃には、手や指だけでなく全身余すことなく口づけしていたものだ。代替物だとわかっていたけど、うさりんの指を口にしているような気持ちで奉仕する。
 うさりんも同じように、私の腕の形をしたバイブを丁寧に舐めてくれていた。
 十分に塗れたことを確認し、膣へと挿入する。
「ん……っ」
 さすがに指くらいの太さと長さなら、受け入れることに難はない。
 私たちの処女はお互いの指に捧げていたので、その時のことを少し思い出した。膣の中がきゅんとして締まる感覚がする。
『んぅ……ふ、んぅぅ……っ!』
 私があっさり挿入できてしまった一方、うさりんの方はかなりきつい様子で、ガニ股になってまで私の腕の形をしたバイブを膣に入れてくれていた。
(いくら柔らかい素材にしたって言っても……やっぱり腕の太さはやり過ぎだったかな……)
 心配で見守る私の前で、うさりんの膣はバイブを飲み込んでいく。
 ずぶ、ずぶっと音が聞こえてきそうなほどの抵抗はありつつも、気づけばうさりんの膣は、私の腕を模したバイブを根元まで飲み込んでいた。
『ふ、ぅ……すごい……お腹のなか……りっちゃんので、いっぱい……』
 ポツリと呟くうさりんの声が聞こえてきて、私は喜びが湧いてくると同時に、顔から火が出るほど恥ずかしく感じた。
「うさりん……それは、反則だよ……」
『え? ……あ、ごめんなさい! 口に出てた?」
 どうやら無意識の発言だったらしく、うさりん本人もかなり慌てていた。お互いに恥ずかしくなってしまい、貞操帯やベルトを弄ってそれを固定するのに集中する。
「こ、これでいいかな……?」
『私の方も、お、オッケーよ」
 私たちは恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、その装着を終えた。
「……動くかどうか、試しておこっか」
『そ、そうね」
 それに触れるのは恥ずかしかったけど、ちゃんと動くかどうか確かめておかないと先に進めない。
 私は道具の中から、一風変わったグローブを取り出した。
 うさりんも同じグローブを手にしている。
「……いくよ、うさりん」
 そう声をかけつつ、私は手袋を身につける。手袋は指先が分かれておらず、指を伸ばした状態で真っ直ぐになるものだった。
 同じようにうさりんも手袋を身につけていたけど、そちらは指先が分かれているタイプだ。
 手首までしっかり手袋をはめると、私たちはその手袋の機能をオンにする。

 それと同時に、体の中に差し込まれたバイブが動いた。

「『あっ♡』」
 二人同時に声が出て、お互いにバイブが動いたのだと感じることができた。
 私はうさりんに手を見せつけるようにしながら指先を軽く曲げてみる。
『んぁ、ひゃんっ♡」
 するとそれに合わせるようにうさりんの喘ぐ声が聞こえてきた。うさりんもまた、私に見えるように手袋をした手をかざすと、その中指だけを折り曲げる。
 それを私が認識した瞬間、私の中に差し込まれたバイブが、みているうさりんの指と同じように曲がったような感覚が走った。
「ひゃぁん♡」
 相手の手によって、体の中を弄られている。
 そんな錯覚を覚えるのに十分な現象だった。
 今度はうさりんには見えないようにして、手を動かす。
『んぁっ、あふっ』
 私が手を動かす度にうさりんが声をあげた。まるで私の手がうさりんという楽器の指揮棒になっているかのようだ。
 うさりんの反応を楽しんでいると、私に差し込まれているバイブが不意に動き出した。同じようにうさりんが指を動かしたのだ。
「んにゃっ!」
 自分の手の動きに集中していたから、不意を突かれて変な声を出してしまった。頬が熱くなるのを感じる。
 しかしこれで、私たちの身に付けている道具がきちんと動くことが確認できた。
 私たちがはめている手袋は、いわゆる遠隔操作デバイスの一種だ。
 本来であればこんな用途ではなく、遠くからその人にしかできない手術を執刀するなど、遠く離れた人の手助けをするための技術だった。
 数ミリ以下の誤差しかない本来のそれに比べると稚拙なものではあるのだけど、遠く離れたところにいる私たちが「お互いの手でお互いの秘部を弄っている」と錯覚するには十分な操作感だった。
「う、うさりん……っ」
『え、ええ。わかってるわ、りっちゃん』
 私とうさりんは同時に手袋の電源をいったん解除する。すると膣の中で動いていたバイブの動きも止まった。
「思ってたより、結構すごいね……」
『りっちゃんもそう思う? 私の方もすごいわ。まるで本当にりっちゃんの腕が入って来てるみたいで……』
「私も同じだよ……うさりんに弄られてるみたいで……」
『興奮した?』
 そう意地悪な顔で訊いてくるうさりん。
 私は思わず顔を赤くしつつも、頷く他なかった。
 興奮したというのなら、うさりんだって立場は同じはずなのだけど。
 ともあれ、股間部分に対する仕込みを終えた私たちは、次の道具の装着へと移行する。
 ラバースーツ、首輪、アナルバルーンに、秘部への挿入物。
 次の道具は胸に対して刺激を与えるおもちゃだった。
 私の方はうさりんに指定された、振動機付きのピアスだ。
「見ててね、うさりん」
 私は胸のあたりが大きく写るように立ち位置を整え、胸の上を縦に横切っているラバースーツのジッパーを引き下げる。その場所はラバースーツの伸縮力によって、割れ目のように勝手に開いた。
 その割れ目の中央から、小さなピンク色の突起物が覗く。
『りっちゃんの乳首……相変わらずキュートだわ♡』
 お世辞でもなんでもない、うさりんのまっすぐな言葉を向けられ、私は頬が赤くなるのを感じていた。
 うさりんはあえて触れなかったのだと思うけど、私の乳首はここまでの刺激もあってすでに固くなって隆起していた。
 ただ、その乳首が普通と違うのは、その尖がった乳首には普通なら存在しない位置に、横向きの穴が開いているということだろう。
 うさりんに開けてもらったピアスホール。さっきまではホール維持用の簡易のピアスを通していたけど、体を洗う際に取ってしまっていた。針で貫いた穴が開いている。
 私はその横穴に、うさりんから用意するように言われていた振動機付きのピアスをゆっくり差し込んでいった。楽しげなうさりんに見つめられる中、私の乳首にピアスが通る。
「ん……っ♡」
 思わず声が出てしまった。私の乳首はピアスホールが開いていることを隠すために、日常生活ではブラジャー以外にも絆創膏などで覆い、隠していた。
 そのため、擦れるなどの刺激を受けることがほとんどなく、わずかな刺激にも敏感になってしまっていた。
 今回のピアスは今までつけていた暫定的なピアスよりも若干重いため、そのせいもあって、余計に敏感にその重さの変化を感じてしまう。
 私はもう片方の乳首も露出させ、同じようにピアスを通した。
 二つの乳首に同時に刺激がくるのは久しぶりで、ピアスをつけただけなのに頭の中がその感覚でいっぱいになる。
「つ、着けた、よ……」
 うさりんに見えるように示した後、もういいだろうとジッパーをあげようとしたら。
『ちょっと待ってりっちゃん! そのまま!』
 強い静止の声がかけられて、思わず動きを止めてしまった。
 うさりんは手に何か持っている様子で、楽しげな笑みを浮かべてみた。
『動作テストしてみなきゃ、ね?』
「え、ちょっと待ってうさ――びゃんっ!?」
 電流を流されたのかと思った。敏感なところに対する振動は、それくらいの衝撃を私に与えていた。
「♡♡♡ッッッ!!!♡♡♡」
 けれど同時に、その刺激は確かな快感も生み出していて。
 私は気持ちいいんだかなんだかわからない、とにかく凄まじい衝撃に翻弄されることになった。
 とっさに手で抑えそうになったけど。
『りっちゃん動いちゃダメ! 隠さないで!』
 うさりんに強い声で命令され、それに従わざるを得なかった。
 手が中途半端なところで硬直し、乳首を震えさせる振動と快感は全く収まらない。
「ん♡ ん、んんっ、あっ♡ あんっ♡」
 自然と背筋が伸びて胸を張り、余計にうさりんに見せつけるような姿勢になってしまっていることを自覚しながらも、体が思うように動かせない。
 快感は足にまで影響し、なんとか立ち続けていたけど、膝がガクガクと笑ってしまうほどに震えていた。
 そんな時間が数十秒は続いただろうか。
 不意にピアスの振動が止み、私は快感の渦から解放される。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
 ようやくまともに呼吸が出来るようになって、新鮮な空気を求めて激しく呼吸する。
 けれどもまだ快感の余韻は残っていて、じんじんとする余波がいまだに私の体を震わせていた。まだピアスが動いているんじゃないかと思うくらいに、その余韻は強烈だった。
『りっちゃん、大丈夫? もうジッパーを上げてもいいわよ』
 うさりんから許しを得た私は、震える指先でなんとか胸を縦断しているジッパーを締めていった。
 その際、ピアスにぶつからないように注意するのは忘れない。もしも今ジッパーをピアスに引っかけでもしたら、その刺激で絶頂しかねないことがハッキリわかっていたからだ。
 なんとかジッパーを閉めることができたけど、その結果違和感はより強烈なものになった。
 ラバースーツによって押さえつけられているピアスが、そのことによってより強く存在を主張して来ているためだ。
 あまりに強烈なその違和感は、私が今まで日常生活でピアスをしていることを隠していたときに、うっかり胸をぶつけてしまった時よりも遥かに強い。
 そういった時は一時の衝撃さえ乗り切れば、余韻もそんなに大きなものにはならなかったものだけど、今は際限なく余韻が響き渡っている。
 何が違うのかといえば、うさりんとのプレイ中であるかないかの違いしか考えられない。うさりんと気持ち良くなっているこの瞬間だからこそ、胸のピアスが与えてくる快感は収まりこそすれ、なくなりはしてくれなかった。
 ドクンドクン、と心臓がうるさく響いている。
 私は何度か深呼吸して、その快感を体の奥へと一端押し込めた。その快感をじっくり味わうのは、もう少し後でいい。
 数歩下がって改めて画面に向き直ると、今度はうさりんが自分の胸につける道具を取り出していた。
『りっちゃんのご指定は、この道具で間違いなかったわよね?』
 そう言ってうさりんが手に持って見せてくれたのは、パッドのような形状の、低周波マッサージ機だった。
 スイッチを入れるとそのマッサージ機を貼り付けた場所、つまり乳房が揉まれているような感覚を覚える、のだという。
 うさりんのように、たわわなおっぱいの持ち主にはとても気持ちいい道具らしかった。残念ながら私にはまったく効果がなく、ただ振動が痛いだけだったけれど。
『乳首には何もつけなくていいの?』
「うん。多分うさりんはそれだけで十分気持ち良くなれると思うから……」
 私と違ってうさりんはせっかく大きなおっぱいを持っているのだから、それを活用しない理由はないと思う。
 うさりんも胸を縦断するジッパーを引き下げ、私と同じように乳房を露出する――はずが、うさりんの場合おっぱいがジッパーの開いた裂け目からボロン、と零れ出してしまった。
 飛び出した、という方が正しいかもしれない。
『あいたたたっ! に、肉がジッパーに食い込んで……っ』
 一体うさりんは何を言っているんだろうか。
 私には全然わからないなぁ。
「うさりん、早くして」
『りっちゃんひどい!』
 悲鳴を上げるうさりん。もちろん私が本気で急かしているわけじゃないことは彼女もわかっているだろう。
 悪戦苦闘しながらも、うさりんはなんとかパッドをつけた乳房をラバースーツの中に押し込んで、再度ジッパーをあげることに成功した。
 かなりキツキツになっているのが、見た目にもわかる。
 うさりんの胸を覆うラバースーツが、ぱつんぱつんになっていた。
「試運転するね?」
 私が低周波マッサージ機のスイッチを入れると、彼女はびくんと体を跳ねさせて反応した。
『お、思ったより、結構すごい振動が……っ、あ、これすご……っ♡』
 気持ちよさそうに体を捩るうさりん。どうやら問題なさそうだったので、適当なところでスイッチを切った。
 これでほぼ整った。
 あとは動けないように自らの体を縛り付けていくだけだ。
 私とうさりんは、それぞれ準備をして、予め決めておいた位置に座り込む。それぞれの体の事情に合わせた責め具と違い、拘束の道具は基本的に二人とも同じものを採用していたから、手順も一緒だ。
 まず足首に太いベルトを巻き付け、足を開けないようにしつつ、歩けないようにする。
 さらに膝の上でもベルトを閉め、足を開けないようにした。
 その上で、袋状の拘束具を取り出し、両足を折り曲げた状態で包んでしまった。袋の口は私は腰のベルト、うさりんは金属の貞操帯に固定する。
 これで足は正座の状態から、ほとんど動かせなくなった。
 足を覆った袋状の拘束具の、足の膝頭にあたる部分には、金属の金具が頑丈に縫い付けてあり、その金具に床に取り付けたウインチから伸びる太い鎖を繋いだ。
 ウインチはそれなりに強い力で鎖を引いてくれるけど、ある程度のテンションで止まるようになっている。簡易的なものとはいえ機械なので、人間の力で抗えるような力ではない。
 しっかりベルトを締めた後、要所要所を南京錠で閉じて固定してしまう。ベルトも袋状の拘束具も耐刃性能が高く、そんじょそこらの刃物じゃ傷ひとつつけられない。
 そしてその南京錠の鍵は私のはうさりんが、うさりんのものは私が持っているので、足の拘束を外す術はもうない。
 私たちはもうここから歩いて移動することも出来ないのだ。
 徐々に終わっていく自分の状況を自覚し、心臓が痛いほど高鳴っている。
 足の拘束はこれで完成。
 次は腕と行きたいところだけど、全部自分でやらないといけないから、先に頭部にガスマスクを装着する。
 ガスマスクは鼻から口元を完全に覆うタイプのもので、喋れはするけど相当くぐもった声になる。
 ただ、今回の場合はそのマスクの内側にマイクを取り付けてあるので、うさりんとだけは会話ができるようになっていた。
「もしもし、聞こえる? うさりん」
 試しにガスマスクをつけた状態で呼びかけてみる。
 すると、先ほどよりずっとくぐもった響きを伴ってはいたけど、うさりんの声がヘッドセットから聞こえてきた。
『ええ、聞こえてるわ。りっちゃん』
 最後の瞬間までうさりんと会話しながら逝けるというのは、最高だった。
 私はうさりんと何気ない会話をしつつ、準備をさらに先に進める。
 股間から伸びている管の先端をガスマスクに装着。私の吐いた息が逆流防止の弁を通って、私のお腹の中に流れ込むようになる。
 ただ、吐いた息がすべて流れてしまうとすぐ限界に達してしまう。
 だから弁には逆流防止の他に調整機能もあって、じわじわとお腹が膨らんでいく程度の量になるようにしてあった。
 いずれにせよ、このままだとお腹は際限なく膨らんで破裂するのだけど。連結部分は一度取り付けると私たちの力では取り外せないように作ってあるので、もうどうしようもならない。
 私は苦しくなっていくときのことを考えてドキドキしつつ、なるべく長くこの瞬間を楽しめるよう、急いで準備を進めた。
 ガスマスクの吸気側、本来ならフィルターを通して外気を吸うべき管に、特殊改造した例のリブレスバッグを装着する。
 本来リブレスバッグというものは、呼吸を制御しつつも、弁が開いていてそこから新しい空気を取り入れることができるようになっている。
 仮に酸欠で気絶したとしても、そこから新しい空気が取り入れられる限りは、そう滅多なことで窒息して死ぬことはないように作られているわけだ。安全に呼吸制御プレイを楽しむために作られた道具なのだから、それはある意味当然だった。
 だけど、この特製のリブレスバッグは違う。
 このリブレスバッグは、その外気を取り入れるための弁を、遠隔操作で塞いでしまうことができるように改造してあった。
 その目的はもちろん、遠く離れた場所にいるうさりんの――うさりんは私の――命を奪うためである。

 スイッチを握り合った私たちは、それを使って遠隔で心中するつもりだったのだ。

 そのおまけ程度の機能だけど、ガスマスクはお腹の方にも空気は流れるようになっているから、弁を閉じればリブレスバッグ内の空気は徐々に減っていく。
 二重三重の苦しみが私たちを襲うことになるわけだ。
 今回は吐いた息も利用する目的があったから、リブレスバッグの大きさは普通よりかなり大きめのものを選んでいたけど、それでも保って一時間程度だろう。
 下手すればもっと短い時間で限界が訪れるかもしれないけど、その時は限界が訪れたそのタイミングで弁を閉めればいい。
 そのタイミングはうさりんと一緒に決めることができるのだから。
 私は確かな破滅の予感を覚えつつ、次の道具を手に取った。
 それはVRゴーグルを改造して作ったもので、ゴーグルの内側に映像を映し出せるようになっていた。
 それを取り付けると、さっきまでうさりんに見せていた、自分の部屋の映像が映し出される。
 拘束具によってガチガチに拘束された私が、部屋の中で座り込んでいるのが見える。
「私、こんな風に見えてたんだ……」
『自分で自分を見ると、ちょっと間抜けよね』
「ふふ、そうだね」
 うさりんと笑いながら言葉を交わしつつ、映像を見ながら残りの拘束具を取り付けていく。
 まず首輪には、頭側の床に取り付けたウインチから伸びる鎖を繋いだ。さっき足の方に取り付けたものとは別で、これによって私は鎖によって上下に引っ張られ、転がって動くこともできなくなる。
 これだけでも動きを制限するには十分だったけど、最後に後ろに回して真っ直ぐ伸ばした腕の手首に、ほとんど動かす余裕のない金属製の手枷を取り付けた。
 これによって私たちは腕を動かすこともままならなくなり、十分な拘束が完成する。
 私は最後に色んな装置のスイッチを組み合わせたリモコンを握り、勢いがつかないように気をつけながら体をその場に横たえた。
「はぁ、はぁ、はぁ……いよいよだね、うさりん」
『そうね、りっちゃん……ふぅ……ふぅ……』
 私はリモコンを操作し、ゴーグル内に表示される映像を切り替えた。

 すると、目の前に拘束具に包まれて横たわるうさりんが現れる。

 私たちが横になった床の前には、ちょうどお互いの視線と一致するようにカメラが置かれている。
 それから送られてくる映像はうまく修正されて、私たちは自分の目の前で相手が横たわっているように見えるようになっていた。
 本当は何千キロも離れているのだけど。
 相手の息遣いや体を捩って拘束具が軋む音が、ヘッドセットの向こうからいい感じに聞こえてくるので、相手が目の前にいるように錯覚するには十分だった。
 うさりんの呼吸に合わせて、うさりんの体の前にあるリブレスバッグが膨らんでは縮んでいる。
 彼女も同じような光景を見ているはずだ。
「うさりん、準備はいい?」
 そう問いかける。はぁはぁ、と呼吸が荒くなる。
『ええ……いいわ……一緒に逝きましょう、りっちゃん』
 フゥフゥとうさりんの呼吸音と、私の呼吸音が重なった。
「『せぇ、の……っ!』」
 私とうさりんは、同時に互いの全ての責め具をオンにした。
 瞬間、首輪と膝辺りに繋がって鎖がウインチによって引かれ、私とうさりんは体を一本の棒のように伸ばさなければならなくなった。
 体を曲げることも出来ない。
「んぎっ、ぎぎぎ……っ」
 ギシギシ、と体が軋む。思わず体を動かそうとしたけど、ウインチの力にただの人間が抗えるわけもなく、私は一本の棒のような状態になったまま、動けなくなった。転がって逃れることもできない。
 さらにそれどころではなく、全身に取り付けた責め具が、次々私に襲いかかってきていた。
「うぶっ――あふっ、ああっ!」
 特に強烈だったのは、胸に取り付けたピアスの振動だ。ビリビリと発生した快感が脳を貫く。
 それに呻いて呼吸が荒くなると、リブレスバッグが膨らみ、そして同時にお腹の方にも圧迫感が生じていくのを感じた。吐いた自分の息が注がれて、お腹を膨らませているのだ。
 私がそんな様々な感覚に翻弄されていると、股間を誰かに弄られた。
 いや、弄られたような気がした。その原因は明らかで。
「んんっ♡ う、うさりん……っ」
 私の秘部に仕込まれたバイブをうさりんがその手に付けた手袋上のデバイスで操作している。
『ふ、ふふっ、りっちゃん、カワイイわ♡』
 うさりんだって全身を様々な快感が襲っているだろうに、私の膣の中に差し込まれたうさりんの指とリンクしたバイブが執拗に動いてくる。

――グチュ、グチュ、ぬちゅ……

 私の中で水音が響いている。それは普通なら聞こえない音だったけれど、全身の感覚が鋭敏になった今の私には明確に感じ取ることができていた。
 うさりんに弄られているんだ、という錯覚が私を絶頂に押し上げていく。
 けれど、翻弄されてばかりでは、ダメだ。
(わ、私からも、うさりんを気持ちよくしてあげなきゃ……!)
 うさりんに秘部を弄られて絶頂しそうになっていた私は、その一念で絶頂を堪え、自分からも手を動かす。
 すると目の前に横たわるうさりんが、その体を大きく跳ねさせた。
『あんっ♡ り、っちゃ……っ!♡  ……っ! だ、だめぇ♡』
 私を弄るだけの余裕がありそうなうさりんだったけど、彼女も彼女で結構限界に近かったようで、今までだと散々盛り上がったときくらいにしか聞いたことのない甘い声を早速あげていた。
 そんなうさりんの姿に触発され、私もかなり昂る。
「あっ。ああっ♡ い、一緒に、いこっ、いこう! うさ、りんっ♡」
『はぅ♡ あっ♡ いき、いきましょっ、りっちゃんっ♡』
 お互いにお互いだけを求めて、激しく手と指を動かしつつ、私とうさりんはほぼ同時に絶頂に達した。
 視界が真っ白になって、うさりんの嬌声が遠くなる。
 きっとうさりんも同じ状態にあるのだろう。
 私はうさりんと一緒になれた喜びで、幸せで胸がいっぱいだった。
 絶頂後の気怠い余韻。普段ならそれに浸るところだけど、今回はそれだけでは終わらない。
 絶頂から降りてきて、少し落ち着いたかと思うと、私たちの体は再び快感を求めて動き出してしまっていた。
「う、さ、りんっ」
『りっ、ちゃんっ』
 お互いの名前を呼び、お互いに秘部を弄り合って。
 どれくらい時間が経ったのかもわからないまま、私たちはお互いに快楽を与え合い、それを貪りあった。
「『はぁ……はぁ……はぁ……』」
 呼吸音だけが響いている。
 酸欠なのか、イき過ぎたからか、頭がぼうっとし始めていた。
 気を抜いたらこのまま意識を手放してしまいそうだ。
 私はそのギリギリ残った意識を意思の力で繋ぎ止め、うさりんに向けて呼びかける。
「ねえ、うさ、りん……きこえて、る……?」
 荒い呼吸音しかしない中で、うさりんのか細い声が聞こえてきた。
『う、ん……きこ、えてるわ……』
 聞こえてきたけど、うさりんの声は遠く囁くようで、いつもの元気な声の張りはない。
 今この瞬間を逃したらダメだ、と本能的に察する。
「うさ、りん。あり、がと……」
 体は離れていても、心はずっと一緒だったから。
 だから私は耐えられた。ここまで生きてこられた。
『……わたし、のほう、こそ……あり、がと、りっちゃ、ん』
 うさりんがそう言ってくれるなら、私は生きてきた甲斐があった。
 一緒に最後を迎えられたのが、うさりんで良かった。

「いこ、う……うさりん……いっしょ、に」
「え、え……いき、ましょ……りっちゃん」

 最期を迎えることを決めた際、私たちはお互いに「ごめん」と「さよなら」は言わないでおこうと決めていた。
 だって私とうさりんは、お互いに対して謝るようなことはなく幸せだったし、これからもずっと一緒なんだから。
 その願いを込め、最後のボタンを押し込む。

 リブレスバッグの弁が閉じ、新鮮な空気が入ってこなくなる。

 確かに近づいてくる死の予感を感じつつも、私たちは全く取り乱さなかった。
 もう何のしがらみも、思い残したこともない。
 あとはもう、ただ、彼女を気持ちよくしてあげればいい。
 だから私は最後の力を振り絞って、右手を動かした。
『あっ……♡ り、っちゃ……♡』
 画面の向こうでうさりんが体を跳ねさせる。手の先を曲げ、彼女の一番弱くて反応がいいところを刺激する。
 ぴくぴくと痙攣するうさりんの姿は普段とは比べ物にならないくらいにとても弱々しい。
 けれど、そんな様すら私にとっては愛おしいものだった。
 彼女の姿を見つめながら手を動かしていると、私の中に挿入されているうさりんの指も動き出した。
「んっ♡ あっ♡ う、さ、りん……♡」
 うさりんの指が私の体の一番奥を刺激する。私が彼女の一番弱いところを知っているように、彼女も私の一番弱いところをよく知っているのだ。

――ハァ、ハァ、ハァ……

 お互いの呼吸音が頭の中に響く。
 新しい空気が入ってこなくなったことで、いままでの状況がまだ天国のようなものだったのだと、改めて知ることが出来た。
(吸っても……吸っても……全然楽に、ならない……っ! 苦し……い……!)
 いままでのプレイで、完全にリブレスバッグの弁を閉めたことはなかった。
 呼吸制御プレイに本格的に嵌ったのは、うさりんとこうして遠隔でしかやりとりできなくなってからだったし、万が一のことを考え、安全機構はちゃんと機能するような状態でプレイしていたからだ。
 もちろん今回の実験として弁が動くかどうか、遠隔で閉じた弁がちゃんと機能しているかを確かめはしていたけど、あくまで実験だったのでリブレスバッグ以外の責め具を併用したりはしていなかった。
 それがいま、初めて経験する苦しみになって私とうさりんを襲っている。
 苦しみは受け入れていたつもりだったし、実際興奮度合いも高まっていたのだけど、苦しみによる不安や恐怖も増大していた。
 涙が溢れて視界が滲んで、目の前に見えるはずのうさりんの姿がハッキリ見えなくなる。
 絶望が顔を覗かせていた。
「うさ……りん……うさ、りん……っ」
 声を振り絞って、余計に苦しくなることはわかっていてもうさりんの名前を呼ぶ。
 それに、うさりんは応えてくれる。
『りっちゃ……だい、じょうぶ……いっしょに、いる、から……』
「うさりん……あぅっ♡」
 私を慰めるように、膣の中にもぐりこんだうさりんの指が優しく動く。
 思わずぎゅっと膣でうさりんの指を締め付けてしまった。
『んぁっ♡ ふふっ……りっ、ちゃ……きもち、いい……?』
 まるでうさりんが私の締め付けに反応したようなタイミングだった。
 よく考えれば私が腕を動かしたことによって彼女も感じたというだけのことなのだけど、思考力も判断力もほぼ失われていた私は、彼女とのより強い一体感を覚える。
「いい、よ……うさ、り……♡」
『り……ちゃ……♡』
 息が苦しい。
 無理に喋ったからか、余計に苦しみが増しているような気がした。
 けれど、さっきみたいな不安や恐怖は生じない。どれだけ苦しくても、うさりんが傍にいてくれるとわかったから。
 私は朦朧とする意識の中で、うさりんの体に取り付けられている責め具を動かした。
『んっ……♡ り、っちゃ……あん……っ♡』
 うさりんも負けじと私に取り付けられた責め具を動かす。鋭い振動が胸を貫き、動かないはずの体が動く。
「ぁっ……♡ うさ、り……っ♡ うさ、りん……♡」
 私たちはお互いに名前を呼びながら、お互いを責め続けた。
 リブレスバッグの中にはもうほとんど空気は残っていないだろう。
「『……ぁ♡ は……っ♡ ぅぁ……♡』」
 声が形になっていないのに、うさりんが私の名前を呼び続けてくれているのがわかったし、私もまた彼女の名前を呼び続けた。
 うさりんの指がひときわ強い力で私の膣を刺激する。
 それに合わせて、私も腕を動かした。
「『――ッ!』」
 ひときわ大きな絶頂が訪れた。
 いまだかつて感じたことのない、途方もなく大きな快感が膨れ上がる。
 頭の中が真っ白になって、あまりに大きな感覚に体の輪郭すら消え、幸せだという感覚しか残らない。

 そして、その人生最高の絶頂が、私たちの最期を告げる合図だった。

 最期の絶頂が過ぎ去った後は、お互いの呼吸音すら聞こえなくなっていた。
 まだ体が動いているのか、完全に止まってしまったのか、それすらわからない。
 目はとっくに見えなくなっていたし、声も出せず、耳も聞こえない。体の感覚は麻痺してバイブが振動しているかどうかもわからなかった。

 けれど、私は彼女がすぐ傍にいると感じていた。

 彼女に抱き締められている。
 体はどんどん冷えていくのに、彼女が触れている部分だけが暖かい。少しでも暖かさを返すために、私も彼女を抱き締め返した。
 私たちは、とても幸せだった。
(ありがとう……うさりん)
(ありがと……りっちゃん)
 声なき意思が通じ合う。
 何も見えなくとも、何も聞こえずとも、何も感じなくとも――うさりんが一緒にいてくれるのだから、全く怖くない。
 またこの世界に生まれ落ちたとしても、私はきっとうさりんと一緒にいられる。
 明るい太陽の下で手を繋いで、その太陽みたいな笑顔を浮かべたうさりんと笑い合いながら歩いているだろう。
 私の命は独り、山奥の隠れ家で、陽の光なんて一切届かない薄暗い部屋で果てたのかもしれない。

 けれども私の心と魂は、最後までうさりんと寄り添い、共にあった。
 そして――共に逝ったのだった。


おわり
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL

カウンター
プロフィール

夜空さくら

Author:夜空さくら

はじめに
当ブログは箱詰・拘束系の18禁小説ブログです。関連の同人誌・版権物のレビュー、個人的な語りなども書きます。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。

『このブログについて』
・当ブログについてです。

『twitter』
・管理人のツイッターです。取りとめのないことを呟いています。

管理人運営の姉妹ブログ一覧
『黎明媚態』(露出・羞恥系)
『黄昏睡蓮』(猟奇・グロ系)
『白日陰影』(箱詰・拘束系)
『夕刻限界』(時間制御系)
『極夜天蓋』(催眠・改変系)
『東雲水域』(性転換交換系)
『星霜雪形』(状態変化系)
『異種祭祀』(異種姦系)

『pixiv』
・イラストは全て3Dカスタム少女を使用し作成して投稿しています。基本は小説の投稿です。

『ノクターンノベルズ』
・一部の小説をこちらでも掲載しております。