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白日陰影

箱詰系、拘束系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

『福箱』に詰められて

箱詰倶楽部シリーズの『福箱詰』の別視点、というよりは別バージョンなお話です。
こんな福箱が欲しいですよね。

つづきからどうぞ
『福箱』に詰められて


 福袋ならぬ、福箱。
 一般の人に聞かせれば「中身が豪華すぎて、袋じゃなくて箱に入っているってこと?」という程度の反応で終わる。
 だけど、箱詰倶楽部の会員にとっては、その単語はとても特別な意味を持っていた。


 年の瀬のある日、箱詰倶楽部から配達通知が来て、私は舞い上がるような気持ちで待っていた。
 私は箱詰倶楽部が年末に出す『福箱』を注文していたのだけど、その『福箱』は元日よりも前に届くことになっていた。
 しかも、注文する時の条件として『大晦日から三が日までの予定が自由な者に限る』という一文がある。
 一般人なら「福袋を受けとるだけなのに、なんでそんなに予定を開けておかなければならないのか?」と不思議に思うだろう。
 けれど、倶楽部会員の私たちはその一文が意味するところを知っている。
 だから私も、どんな『福箱』が来ても大丈夫なようにお正月の予定は丸々空けてあった。
 期待に胸を膨らませて待っていると、見慣れた箱詰倶楽部のトラックが私の家の前に止まり、これもまた見慣れた箱詰倶楽部の作業員さんたちが、トラックから大きな箱を抱えて降りてきた。
(来た……!)
 私はチャイムを鳴らされるのも待っていられず、家の外に出て出迎える。
 運び出された箱の大きさにも反応してしまったけど、それより何より、トラックの中から箱と一緒に降りてきた人に視線が釘付けになってしまった。
 箱詰倶楽部の社長さんだ。
 見事な振り袖の着物を身につけている。正月にはまだ少し早いけど、運んできたのが『福箱』だからだろうか。
(うわぁ……似合ってるなぁ……)
 詳しい年齢はわからないけど、社長さんはとにかく図抜けた美人さんだ。何年も前から箱詰倶楽部の社長を勤めているはずだから、少なくとも30歳はいっているはずなのだけど、振り袖を着ていて全く違和感がないのが凄い。
 若干失礼なことを考えてしまっていた私の前に進み出てきた社長さんは、大人らしい見事な所作で一礼する。
「いつも倶楽部をご愛顧いただきありがとうございます。ご注文いただきました『福箱』をお届けに参りました」
「ご、ご丁寧にありがとうございます……えっと……楽にしてくださって構いませんよ?」
 私は会員歴がそれなりに長いので、普段の社長さんがどれだけはっちゃけた人か、よく知っている。
 服装もあるけど、普段とのギャップで違和感が凄すぎたので、私はそう促した。
 すると、社長さんにとってもそれは肩が凝る振る舞いだったようで。
「ではお言葉に甘えて……おめでとーございまーす! 石山美保さん! 貴女が今年の『福箱』の特賞に見事当選しちゃいました!」
 許された途端、はっちゃける社長さん。そういった態度の方が慣れているので落ち着く。
 それよりも、社長さんの言った内容だ。
(私『が』福箱の特賞に選ばれた……!)
 一般人が聞けば、奇妙な言い回しだろう。
 間違っているんじゃないかと思うかもしれない。
 けれど、箱詰倶楽部の会員にとって、その言い方は極めて正確なものだった。
「ほんとですか!?」
 思わずあげてしまった声は、我ながら上擦っている。社長さんはそんな私の声を聞いてか、微笑ましそうに笑っていた。
「ふっふっふっ、そのまさかまさかのご当選なんですよね! ……とりあえず、詳しくは中に入ってからでもよろしいですか?」
 そう言って社長さんはちらりと後ろを振り返る。そこでは、箱詰倶楽部の作業員さんたちが、大きな箱を抱えたまま、律儀に待ってくれていた。帽子を目深に被っているので、表情はわからないけど、微かに笑んでいるようだ。
 こういう時に箱を運んだり、色々な裏方作業をしてくれたりする倶楽部の作業員さんたちは、あくまでマンパワー要員であって、直接私たち会員に話しかけてくることはない。
 文句一つ言わず、大きな箱を抱えたまま、私と社長さんの話すのを待ってくれていた。
 いくら作業員さんたちが力自慢らしい体躯をしているとはいえ、確実に並みの重さではないだろう箱を抱えたまま立ち続けるのはしんどいはずだ。
 慌てて、家のドアを全開にした。
「ど、どうぞどうぞ! お願いします!」
 箱詰倶楽部の人たちを家の中に招き入れる。
 会員である私は、たまに倶楽部の出張箱詰めサービスとかも受けているから、部屋はちゃんと綺麗にしてあった。
 部屋の中央に鎮座する机を退ければ、それだけで十分なスペースが確保出来るようになっている。
 とはいえ、一人で暮らしている私の部屋は決して広くはない。
 部屋の中央に置かれた箱は、ででん、という擬音が聞こえて来そうなほど、大きな存在感を放っていた。
 まだ段ボールのような梱包材で覆われているから、中身が何かはわからない。
 人が一人入れそうなほどの、長方形の箱である、ということしかわからない。
 けれど、恐らく私が思っている通りのものがそこには入っているのだろう。
 期待に胸の鼓動が早くなるのがわかる。
 社長さんが床に置かれた箱の前に立ち、改めて私に向かって頭を下げる。
「さて、この度は当倶楽部の新年特別企画『福箱』へのご参加、誠にありがとうございます」
 福箱を購入ではなく、参加というのは箱詰倶楽部くらいだろう。
「今回、石山様は『福箱』の特賞にご当選なさいましたので、この――」
 社長さんが合図すると、作業員さんたちが動く。
 どういう仕組みだったのか、箱を覆っていた梱包材が一瞬で取り除かれる。
 梱包材の中から姿を現したのは、多数の物々しい仕掛けが施された『箱』だった。
 見た目は、お寺や神社などで見られる、大きな賽銭箱のようだ。箱の上部がまさにそんな感じで、お賽銭を入れられそうな構造になっていた。
 側面には見慣れた箱詰倶楽部のマークと、『福箱』の文字がデカデカと記されている。
 社長さんはそんな箱を示しながら、楽しそうに告げた。

「『完全拘束型賽銭箱』へ封入されることができます!」

 彼女の合図と共に、作業員たちがくるりと箱を回転させ、私からは見えていなかった箱の一面を、私に向ける。
 その側面は、ガラス張りになっていて、箱の中の様子が外からでも見られるようになっていた。
 箱の中身を見て、思わず心臓がどくりと跳ねる。
 箱の中には、ラバースーツを着た人影が閉じこめられていた。顔まで余すところなく黒いスーツに覆われているので、どんな人かもよくわからない。なんとなく、体の輪郭からすると女性のようには見える。
 確実にわかるのは、その人がとんでもなく厳重な拘束を施された上で、狭い箱の中に閉じ込められているという事実だけだった。
 いくら箱自体が人が入れそうなくらいに大きいとはいえ、窮屈そうに体を縮ませて、ようやく入れるくらいの大きさだ。正座した状態で上半身を限界まで前に倒し、両腕は背中側で捻って固められている。
 頭は膝と膝の間に押し込めるようにして丸めていて、その後頭部を抑えるような形で壁が迫っているので、首は動かすことがほとんど出来ないだろう。
 頭部や股間は人影自身の体に隠れていてよく見えないけど、唯一側面からでもわかることがある。
 それは、彼女の股間と頭部に繋がっていると思われる、チューブやコードが見えている、ということだ。箱の側面の穴に繋がっているチューブが、人影の股間や頭部の見えないところに向かって伸びている。
 箱詰倶楽部での活動が長い私には、それらが長期間箱詰めをするための、様々な液体や呼吸するための空気を導引するものだと知っている。それがあるということは、数時間箱に詰められて終わりという容易い箱詰めにはならないということでもある。
 人影は完全に四角く、小さな箱詰めにされていた。
 これから私もその人と同じようにされてしまうのだと思うと、心臓が痛いほど跳ね回ってしまう。
「あ、ちなみにいま入っているのはダミー人形です。そして、その人形は石山様の身体データを元に、作成しています。つまり……」
 社長さんが私の後ろに立ち、肩に手を置いて耳元で囁いた。
「ふふふ……いまこの人形が身に付けているものを、そのまま石山様に身に付けていくことになるわけです」
 社長さんの甘い囁きが、脳を揺らす。
 つまり、私はいまから目の前でガラス張りの箱に詰められている人形と同じように。

 全身にラバースーツを着せられ。
 両手両足を太い革のベルトで縛られ。
 体の各部に色々なおもちゃを取りつけられて。

 体を限界まで縮ませてようやく入れる、小さな四角い箱に押し込められることになるのだ。

「……っ! ふ、ぁ……!」
 ゾクゾク、と背筋を不思議な感覚が突き抜ける。足が震えて立っていられない。
 背後から社長さんが支えてくれなかったら、そのままその場にへたり込んでいたかもしれない。
 そんな反応をしてしまった私を、社長さんは楽しそうに見詰めている。
「うふふ。やっぱり貴女も箱詰め倶楽部の会員ね。人形と同じことをされるのを想像して、イっちゃいました?」
 社長さんの意地悪な問いに、私は顔を真っ赤にして慌てて首を横に振る。
「い、イっては、ないです」
 そう応えた。それは本当だ。さすがに想像だけでイクほど、はしたなくはない。
 体を揺すった拍子に、少し股間に湿り気を感じたような気もしたけど、気のせいだ。
 社長さんはニッコリと笑うだけで、私の言葉を肯定も否定もしなかった。
「それでは、早速今日から三が日までの間、箱詰められて貰おうかと思うのですけど……可能ですか?」
 箱詰められる、なんてこの倶楽部以外じゃ、誘拐されるときくらいにしか使わないんじゃなかろうか。
 私は緊張で喉が渇くのを感じつつ、こくりと頷く。わざわざ事前に配送の連絡が来た時点で、出張箱詰めサービスを申し込んだ時の要領だとわかったので、すでにシャワーを浴びて体は綺麗にしてあった。
「では、さっそく始めましょう。人形を箱から出して道具を取り外しますので、服を脱いでお待ちください」
 もし私の方の準備が出来ていなかったら、私が体を綺麗にしている間に準備をするつもりだったのだろう。
 結果として、私は準備をすでに済ませていたので、人形が箱から解放されていく様子を側で見ることが出来た。
 まず、『福箱』の蓋を固定している蝶番にかかっていた大きな南京錠が解かれる。一個、二個、三個、四個。物凄い厳重な封印だった。
 さらに、何かのリモコンを作業員の人が操作すると、蓋から「プシュー」という空気の抜けるような音が響く。内側を真空状態にしていたのか、あるいは蓋そのものが箱に張り付いていたのか、その音が響くと同時に、箱の蓋が動くようになった。
 恐らく蓋は箱に吸着していて、そのリモコンで操作しない限り、鍵が開いても開かないようになっていたのだろう。
(すごい厳重……絶対に私の力じゃどうしようもないんだ……)
 その事実にドキドキがさらに加速した。
 蓋が取り除かれると、人形の背中側で固定された腕が背中と共に少し持ち上がる。確かダミー人形は限りなく私の身体と同サイズに作られているはずだから、蓋を閉めるとそれによって多少圧迫されるみたいだ。
 想像していたよりもずっとキツそうな圧迫感が待っていそうだった。
 蓋が一端脇に置かれると、作業員さん達は手際よく蓋と人形を繋いでいると思われるチューブやコードを取り外し始めた。
 口側の方は箱の壁側を、股間の方は――人形の股間の方を弄って、チューブやコードが取り外されていく。
 自分が触られているわけではないのだけど、その扱いに思わず息を呑む。
 コードやチューブの接続が切り離された後、作業員さん達が二人がかりで、ダミー人形を持ち上げた。
 ずるずる、とラバースーツと箱が擦れる音もさせつつ、人形が外に引き出される。
 しかし拘束具のこともあって、人形は箱から解放されても四角いままだった。壁に抑えられていた頭が少し持ち上がったくらい、だろうか。
 箱の隣に、その四角く押し固められたに人形が置かれる。
 そんな人形の腕を、コの字型に拘束しているベルトが、まずは取り外された。拘束具から解放された腕はだらりと左右に垂れ下がる。その手の先端はラバースーツが完全に覆っていて、指先が使えないようになっていた。合掌する時のように、指先が全く開けないようになっている。曲げることは出来ると思うから、掌で包み込むようにすれば何かを持つくらいは出来るかもしれないけど、当然拘束を自力で解くことなんて望むべくもない。
 さらに体を土下座に近い形に折りたたんでいたベルトが取り除かれ、ようやくその人形は普通に体を伸ばすことが出来るようになった。
 人形だということはわかっているけど、だらりと投げ出された手足が妙に扇情的だ。
 はたしなく開かれた股間は、さっきまで管などが取りつけられていた金属の貞操帯が覆っている。その内側がどうなっているかはわからないけど、想像するのは簡単だった。
 頭部は、まだチューブなどが繋がったままの開口具などに覆われている。目の部分も分厚い目隠しに覆われていて光を感じることも出来ないだろう。
 耳もかなり分厚そうな耳当てが覆っていて、音もほとんど聞こえないに違いない。
 徹底した拘束具合に、目眩がした。
 食い入るように作業を見詰めていて、動けていなかった私の側に、社長さんが立った。
「ふふ……脱がしてあげるわね」
 そういって私が着ている服を脱がし始める。恥ずかしかったけど、私は社長さんの為すがままになっていた。
 私は人形が身に付けている拘束具がどんなものなのか、そちらの方に集中してしまっていたのだ。
 口枷や恐らく鼻の穴に繋がっていたチューブが取り外され、口枷や耳当て、目隠しなどが解かれていく。各穴の部分だけ開いたラバー全頭マスクだけの姿になった。
 人形の口内や目は作り物なのが明らかで、特に濡れてたりはしなかったのだけど、口枷が抜き取られる際、想像以上に長い張り子が口の中に押しこまれていたことはわかった。
(うあ……あ、あんなに長いのを入れたら……喉の奥まで貫かれるんじゃ……!)
 少なくとも、苦しいのは確実だった。
 だというのに、私の体は冷えることなく、ただ燃えるように熱くなっていく。
 社長さんに全ての服を脱がされ、丸裸にされても、私は汗ばむほどに熱を感じていた。
 社長さんは私の裸の肩に手を置き、一緒に作業を見守ってくれた。
 頭部も凄かったけど、股間の部分の装備も凄い。
 股間全体を覆っていた金属の貞操帯が取り外されると、体内に潜り込んでいた三つの突起がゆっくりと人形から引き抜かれる。恐ろしく長く、太く、そして凶悪な形をしていた。なにやら根元付近には膨らむとしか思えない膨らみもあり、そんなものを入れられて膨らまされたら、どれほど苦しく、そして強固に固定されてしまうのかわからない。
 それは果たして地獄の苦しみか、それとも天上の悦びか。
 いまからそれを実際に味合わなければならないのだ。
 最後に人形を覆っていた全頭マスクとラバースーツが脱がされる。
 中から出てきたのは、私の姿をした人形だった。決して本人と見間違えるほど精巧なものじゃないけど、私だと言うことはわかる程度には造形が凝っている。
 このためだけに、そんな人形を用意したのだろうか。
 箱詰倶楽部の妙な拘りに感服せざるをえない。
「なんでこんな精巧な人形を作る必要があったのか――と思ってるわよね?」
 心を読んだ社長さんがそう問い掛けてくる。思わず肩を竦めてしまった。
「うふふ。それはね……まずは見て追体験してもらいたかったからなの。これから貴女がこうなりますよって、はっきりと想像することが出来るでしょう?」
 だからといって、ここまで手の込んだことをする必要はあったのだろうか。
 そう思いはしたものの、実際社長さんの思惑通り、明確に何をされるのか意識してしまったのだから、完全に術中に嵌まっていた。
 私のすぐ側に、汚れ防止なのか、青いシートが用意される。
 社長さんが、まるで私を崖から突き落とすように、優しく背中を押して、そのシートの上に誘導した。
「それじゃあまずは――ラバースーツからね」
 社長さんの合図に従って、作業員さん達が潤滑油を手に出し、そしてそれを私の全身に塗りたくってくる。
「ひゃっ!? ちょ、ちょっと待って!」
 思わず止めかけた私の言葉に構わず、作業員さんたちは淡々と作業を進める。
 全身をどろどろしたローションまみれの手で、撫で回された。
「ひゃんっ、やっ、ああっ!」
 ただでさえ期待で昂ぶっていた私の身体は、その刺激にまんまと昂ぶらされてしまった。
 抑えようと思うのに、声が止まってくれない。
「ふふふ。設置するまでの時間もあるから、待てないのよ。ごめんなさいね」
 謝罪の言葉を口にする社長さんだったけど、明らかに笑いを含んでいる。
 私は全身余すことなくローションを塗りたくられ、そしてキツキツのラバースーツを着せられていった。
 全身をもうひとつ別の皮が覆っていく感触。箱詰倶楽部では全裸で箱詰められることも多いけど、ラバースーツを着て箱詰められることも同様に多いので、ラバーの感覚に慣れていないわけじゃなかった。
 何度味わっても、やはりその気持ちよさに、思わず声が出てしまう。
 ラバースーツにうなじまでの全身を包まれ、改めて気付いたのは、このラバースーツ、股間に穴が開いていて、スースーするということだ。
 考えてみれば管やチューブを通していたのだから当たり前なのだけど、頭で理解するのと、実際にラバースーツを身につけた時の感覚は全然違う。股間の頼りなさに、思わず内股になってしまう。
(それに人形が身に付けていた時には気付かなかったけど……これ、胸のところにも何かあるわね)
 乳首、というか乳輪までを覆うように、円形の薄い板のようなものが胸の先端に触れていた。単なる当て布的なものじゃないのは予想がつく。
「次は……そうね。先に腕を拘束してしまいましょう」
 そう社長さんが指示を出し、私は両腕を背中側で捻り上げられた。さっきの人形の時は最初に取り外していたのに、いまは先に拘束するみたいだ。
 元々逃げる気も抵抗する気もなかったけど、そうして腕が拘束されると、いよいよ自分では何も出来ないのだと理解させられる。

 その調子で、私の身体は拘束具に覆われ、そして気付けば数分前までの人形のように、小さく四角い形に押し込められていた。

「ふーっ、ふーっ、ふーっ……!」
 口枷を噛まされた口から、荒い呼吸が零れる。チューブは鼻にも通され、気道を確保しているのと、胃まで細いチューブが伸びている。
 真っ暗で何も見えない。何も聞こえない。声を出すことも出来ない。
 正座のような状態で座らされ、膝と膝の間に頭を押し込め、ぴくりとも体は動かせなかった。
 貞操帯を嵌められ、その内側にある突起が股間の穴という穴を塞いでいるのがわかる。
 太ももに押しつける形になって潰れた胸の先端に、硬い円形の板のような感覚がある。
 そういった体の感覚だけが、いまの私の全てだった。
(いよいよ……箱に詰められちゃうんだ……!)
 どくん、と心臓が鳴り響くのが、縮ませて小さくなった体の中で響く。
 不意に、耳元で電話する時のようなノイズが走った。
『あー、あー、聞こえますか? まあ、聞こえてなくてもやるんだけど。これから箱に詰めて運びますので、暴れないようにしてくださいね』
 なんというか雑な忠告だった。これはまあ、私が箱詰めに慣れていることもあって、なるべく体を動かさない程度のことは勝手にすると判断してのことだろう。
(信用されてるのは嬉しいような、雑な扱いで悲しいような……)
 複雑な私の心中に構わず、作業員さんたちと思われる手が私の身体をゆっくりと持ち上げる。
 さっきみたばかりの、人形が箱から取り出される光景の逆を想像する。
 持ち上げられた私の身体が、四角い箱の中に収まってく光景を。
「んッ……!」
 思わず体が震えてしまう。なんとか押し殺したけど、触れている作業員さんたちには伝わってしまっただろう。微かに作業員さんに笑われた気がする。
 そのことを恥ずかしく思う余裕は、私にはなかった。なくなった。なぜなら――

 私の身体は、小さな四角い枠の中に入り始めたからだ。

 ぎゅっと体を縮ませて、頭も出来る限り小さく曲げる。それでも箱の壁が四方から私の身体を圧迫していた。
 ずずず、ずずず、と全身を覆うラバースーツと箱が擦れる感覚が、全身を震わせる。
「んぅ……っ、んんんん……っ」
 その感覚に耐えている内に、足の先や向こうずねのあたりが、箱の底に触れる。
 四角い形に小さく固められながら、私は箱の中に詰められた。
 まだ背中側、上の蓋は閉められていないから、その部分には開放感があったけど、それ以外の方向は全て閉じられている。
 どくん、どくんと心臓の鼓動が全身に伝播する。
 私の身体から伸びるチューブやコードを、箱の壁に接続するような間があって暫く。
『心の準備はいいかしら?』
 耳元で再び社長さんの声が響いた。
『それじゃあ、これから大晦日と三が日の間、石山様には箱詰倶楽部の福箱になってもらいます。定期的にバイタルチェックは入るから安心して、二年参りならぬ――二年箱詰めをご堪能くださいね』
 そう社長さんの楽しげな声が響いてすぐ。

 私は背中に圧迫感を感じ、四角い『福箱』の中に、完全に箱詰められたのだった。




 完全に『福箱』の中に詰められた石山様――美保ちゃんの姿は、芸術的とさえ言えるものだった。
 見ていて、思わず羨望の溜息が零れる。
「ああ……やっぱり私が詰められればよかったかしら……」
 これから美保ちゃんは、箱詰倶楽部のエントランスに飾られる。
 今回の『福箱』には賽銭箱のようなギミックが用意されていて、上からお賽銭を入れると、それに応じて美保ちゃんの体の各部に着けられている玩具が動き、彼女を責めるようになっているのだ。
 これだけ箱詰倶楽部の賽銭箱として相応しい箱はないだろうし、大晦日から元旦にかけて倶楽部にやって来る人たちはこぞってお賽銭を入れたがるだろう。
 その光景を想像すると、正直なところ羨ましいと言った感想が出てしまう。
 だから、思わず口に出してしまったのだけど、それを作業員のふたりに聞かれてしまった

「まだそんなこと言ってるんスか」
「またしずなさんに怒られますよ~?」
 呆れ混じりに指摘を受け、私は言葉に詰まる。
 新年には挨拶に来る関係各所の人も多く、それの応対は私の仕事だった。
 そんな忙しい年が変わる瞬間に、何日もかけた箱詰めプレイなんて、望めないのだ。
「わかってるわよぅ……ほら、早く運んじゃって!」
 そういって私は作業員のふたりを急かした。
 ふたりは「はいはい」と言いながら、力を合わせて美保ちゃん込みの『福箱』を持ち上げる。
 梱包材に包まれているため、外からはその中に美保ちゃんが――人が入っていることなんてわからない。
 中にいる美保ちゃんは、存分に浮遊感を味わっていることだろう。
(羨ましいけど……今年も皆が箱詰めプレイを楽しめるよう、頑張らなくっちゃね!)
 私は自分が箱詰めされるのも好きだけど、箱詰めされて快感を味わっている会員の皆を見るのも好きだ。
 今年も良い箱詰めの年になりますように。
 私は運び出されていく美保ちゃんの箱を追いかけながら、そう願うのだった。


『福箱に詰められて』 おわり
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