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白日陰影

箱詰系、拘束系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

岩のように硬い女の子の身体を解してあげる話

とある方の呟きから発想を得て生まれた作品です。
岩のように硬い体の女の子が、誘拐犯と一緒に拘束具(アームバインダー)を付けるために奮闘する話です。
概略からもわかりますように、エロというよりは、半ばギャグというか、コメディ。

※誘拐・監禁は犯罪です。信頼関係が生まれるとか幸せとか幻想ですので、現実に持ち込まないようにしてください。

つづきからどうぞ
岩のように硬い女の子の身体を解してあげる話


 誘拐して来た彼女――三樹佐木咲良ちゃん。
 可憐な美少女である彼女の腕を掴み、後ろ手に捻り上げる。彼女は抵抗しようとしたけど、男の僕の腕力に敵うわけもなく、あっさりと捻り上げることができた。
 その瞬間、彼女の関節が悲鳴をあげた。
 擬音で表すなら『ボキボキッ、パキッ』という凄い音だ。デスマーチで何十時間も残業をし続けた社会人が肩を回した時にするような音。
「い”だああ”あ”あ”いいい”い”ッ!!!」
 そして彼女の小さく可愛らしい口からは、ヒキガエルが潰れる時のように濁った、凄まじい悲鳴――というか怒声が迸った。
 あまりのことに、思わず彼女の腕を捻り上げていた手を離してしまった。
 彼女は捻り上げられた側の腕を抑えて床に蹲り、大粒の涙を零しながらガチ泣きし始める。痛がる演技で隙を作ろうとかじゃなくて、マジで痛かったようだ。
「えっと……ご、ごめん……?」
 思わず謝った僕は、悪に染まりきれない半端者なのかもしれない。誘拐しといて、悪に染まりきれないも何もないとは思うけども。
 少し痛みが和らいだのか、顔をあげた咲良ちゃんは、物凄い形相で僕を睨み付けてきていた。その視線にはとんでもない恨みが篭もっている。
 どうやら怒りが誘拐犯に対する恐怖を上回ったようだ。
 さっきまでは恐怖に涙を浮かべつつも、せめてもの抵抗で睨み付けている、という僕的には理想的な――実に健気で嗜虐心をそそる感じだったのに。
 彼女の視線から逃げ出したくなったけど、ここで退いてしまっては、誘拐という犯罪行為に手を出してまで攫ってきた意味がない。
 せめて立場は明確にするべきだと、精一杯胸を張って威圧的に声を上げる。
「この程度のことで音を上げていたら、この先持たな――」
「この程度? めちゃくちゃ痛かったんだけど?」
「あ、はい」
 僕をへたれと言うことなかれ。
 ガチ切れした美少女の圧は、想像以上にヤバいから。
 この子のことを調べる過程で、おしとやかに見えて、意外と気が強くて負けず嫌いだということはわかっていたものの、まさかここまでとは思わなかった。
 大きな丸い目が半眼になって睨み付けてくる時の威圧感は、彼女が小柄だとかそういうことは一切関係なく、僕を圧倒していた。
 しどろもどろになりながらも、なんとか立て直そうと奮闘する。
「いや、でもさ。腕を捻って後ろに回そうとしただけだよ? それくらいなら、ほら、僕にだって出来るし……」
 実際に腕を後ろに回して見せる。僕の両腕は綺麗なコの字の形を作っていた。僕は特に軟体というわけでもなく、極普通だ。そんな僕でもこの形くらいは簡単に作れる。
 すると彼女の目は益々不機嫌に細められ、顔が伏せられた。
 大げさに騒ぎすぎたと思い直したのだろうか。僕は少し余裕を取り戻す。
「男の僕でも出来るんだから、女の子の君が出来ないわけが――」
「……のよ」
 ぽつり、と彼女が呟く。
 俯いていたのもあって、呟いた言葉が僕には聞こえない。
「え? なんて?」
 聞き返すと、彼女は顔をあげる。
 その目には大粒の涙が溜まっていた。
「だから! 私は体が硬いのよ!! 女の子だからって体が柔らかいとか、偏見なんだから! ばかぁ! うわあああああああああんんん!!!!!」
 予想以上の大泣きである。この部屋は防音のため外に声が漏れる心配はなかったけれど、耳が痛くなるような大音声だった。
 僕に攫われたということを理解した瞬間でさえ、ここまで泣いてはいなかった。どうやら僕の言ったことは想像以上に彼女のトラウマを刺激してしまったようだ。
「ご、ごご、ごめん! 悪かった! うん、そういうのは個性だよね!」
 彼女を泣き止ませるのに相当な時間を有したのは言うまでもない。
 ようやく咲良ちゃんが泣き止んだ時には、僕はもはや疲労困憊だった。
(どうしてこうなった……?)
 たまたま街で見かけた、可愛らしく美しい彼女に、僕は一目惚れした。
 そんな彼女を辱め、穢し、虐め抜いて心から僕に屈服させたかった。
 そのために様々な手段を駆使し、首尾良く彼女を攫い、目覚めた彼女に状況を伝え、立場を理解させた、までは順調だったと思う。
 調教のために用意しておいた様々な責め具を取りつけようと、まずは軽く自由を奪うつもりで後ろ手に拘束するだけのつもりだったのに。
 まさか彼女が後ろ手に腕を回すだけでも悲鳴をあげるほど、体が硬い系女子だったとは。
 僕はたくさん用意した拘束具のほとんどが意味を成さなくなったのを感じ、物凄い虚脱感を覚えていた。
(本気で泣かしたいわけじゃないんだよなぁ……)
 女の子の泣き顔は好きだ。羞恥に涙ぐんだり、多少の痛みや苦しみを覚えて涙を堪えたりする姿には、正直ぐっとくるものがある。
 けれど、本気で絶叫され、号泣されると引いてしまう。
 拷問とか処刑とか、リョナ・グロ系統が好きな人ならまた違うのだろうけど、僕の場合はそこまで鬼畜じゃない。
(もっとこう……穏やかじゃないといけないんだよ……静かで……気品があって……そんでもってエロかったら最高なんだよ……)
 ざっくり言うなら、性的弱点を責めて泣かせるのはとても良いけど、顔面を拳で殴って泣かせるのは違うのだ。
 我ながら実に難儀な性癖である。
(どうしよう……)
 用意した拘束具はどれも彼女のために用意した一品だ。密かに体のサイズを調べ上げ、ジャストフィットするように作った。
 だから彼女に使えないとなると、その意味がなくなってしまう。
(いきなりやろうとしたから、ダメだったっていう可能性はないかな?)
 無理矢理に、いきなりしたからダメだったのかもしれない。
 そう考えた僕は、ぐすぐすと静かに泣いている彼女に声をかける。これくらいの泣き具合なら十分そそられるのだけど。
「あのさ。もう無理矢理にはしないから……ちょっと試してみてくれないかな」
「……」
「ほら、どれくらい動かせるかわかれば、痛い思いさせなくて済むしさ」
 そもそも痛い思いをさせるために誘拐したような気もするけど、あえて無視。
 彼女は渋々、といった様子ではあったけど、協力してくれた。誘拐された子が誘拐犯に協力っていうのもどうなんだという気がするけど、それも無視。
「まずは普通に立って、前屈してみて?」
(床には届かないだろうけど、足首とかなら……)
 基本的に素直な彼女は立ち上がってまっすぐ背筋を伸ばし、腰を曲げて両手を降ろして行く。
 その手が、向こうずねのあたりで止まった。
「oh……」
 思わず外国人みたいなリアクションをしてしまった。
 びくんと、彼女の肩が細かく震える。
 ヤバい。また泣きそうだ。
「お、オッケー! いいよいいよ大丈夫! 次いこう次!」
 僕は一体何をやっているんだろうか。
 内心自問自答しつつ、いまにも泣きそうな彼女を宥めて、次の柔軟ポーズを取らせる。
 結果、わかったのは彼女の体は恐ろしく硬い、ということだった。
 開脚などは100度を超えて少し行ったところで限界だったし、手を後ろに曲げるのに関しては頑張って90度、両腕をコの字型にするのがギリギリ精一杯。それすら結構苦しそうだから、高手小手縛りなんかは夢のまた夢だ。
 肩の可動域もかなり狭い。腕の拘束具の花形・アームバインダーなんて装着しようものなら、泣き喚いて調教にならないのは試すまでもなく明らかだった。
 咲良ちゃんは、日常生活に支障が出ていないのが奇跡に感じるほどの、肉体激硬系女子だった。
 僕の目論見を外して気力を失わせるのが目的かもしれないと思い、軽く補助して体を曲げさせてみたが、本気で痛がって泣きそうになったのですぐに止めた。演技でもなんでもなく、彼女の体はとにかく硬いのだった。
 僕は本来なら拘束した彼女をニヤニヤしながら眺めるために用意した椅子に座り、背中を丸めて両手で顔を覆い、嘆く。
(どうしてこうなった……)
 彼女については散々調べたつもりだったけど、どこにもこんなに体が硬い子だなんていう情報はなかった。
 一言断っておいてくれれば、僕もここまで落ち込まずに済んだのに。
 彼女は体の硬さを確かめるための柔軟行動だけで関節が悲鳴をあげたのか、地面にへたり込んで関節を掌で擦りながら、ぐすぐすと鼻を鳴らしている。
(泣いてる咲良ちゃん可愛い……けど、さっきみたいにガチ泣きされたらなぁ……)
 鬼畜になり切れない僕には、とてもじゃないが調教をやりきれる自信がない。
 虚脱感に苛まれた僕は、彼女の調教を諦めるしかないと思った。
(苦労は全部水の泡になるけど……出来ないんじゃ仕方ないしなぁ……)
 大きく溜息をひとつ落とす。
 僕は椅子から立ち上がって、彼女の側にしゃがみ込んだ。
「あー、うん。咲良ちゃん、ごめんね。悪かった。おうちに帰してあげるから、出来れば僕のことは誰にも言わないでくれると助かるなぁ」
「……どういうこと?」
 解放すると言ったのがあまりにも唐突だったからか、彼女は喜びよりも困惑が勝っているらしく、きょとんとした顔をしていた。
 そういう顔は本当に可愛らしいんだけど。
「いや、その、なんというか……うん。僕のしたいことを君にさせるのは無理だってわかったから――うぉうっ!?」
 いきなり胸ぐらを掴まれて、素っ頓狂な声がでてしまった。
 烈火の如き怒りを滲ませた彼女の瞳が、真っ正面から僕を睨み付けている。
「私の身体が、硬いから?」
 目が、目が怖い。
 解放してあげるといっているのに、なんで自分の方が追い詰められているのか。
 僕はなんだか妙なことになってしまったと思いつつ、正直に応える。
「だって、無理させたら可哀想だし」
「かわいそう?」
(あ、なんか地雷踏んだ気配)
 僕はそういう気配に敏感なのだ。
 彼女は勢いよく立ち上がり、僕を見下ろす。ただでさえ強い圧が、立ち位置的にもさらに増した。
「ふざけないでっ! 緊張してるだけよ! もっとリラックスしたら、ちゃんと体も柔らかくなるんだから!」
 誘拐されてるのにリラックスするって何さ。
 ツッコミたくなったが、あまりの勢いに何も言えなかった。
 わざわざ僕に背を向けて、深呼吸をしてリラックスしようとしているのがわかる。
「……すー、はー、すー、はー……見てなさい……!」
 そういって彼女は両手を後ろに回し、コの字型に組もうとする。
 けれどもちろん、多少リラックスしたところで――そもそもリラックス出来ているとは思えなかったけど――彼女の体の硬さが劇的に改善されるわけもなく、中途半端にしか腕を組めていなかった。
「んぎ、んぎぎぎ……っ」
 真っ赤な顔をして喘ぐ彼女の姿はとても魅力的ではあったのだけど、拘束されているわけでも悪戯されているわけでもなく、ただ腕を後ろに回そうとしているだけというのが、悲しいというか虚しいというか。
「ん、んぁぁ……う、ぅぅ……」
 彼女自身、後ろ手に回した腕が、ちゃんと組めていないことを自覚しているのか、だんだん声に覇気がなくなり、声が濡れ始めた。
(あ、やばいこれまた泣く)
 僕は咄嗟に、口を開いていた。
「わかった! うん、無理はいけない! まず落ち着こう! ね! そんなに力が入ってちゃ、出来るものも出来ないよ!」
 そういって一端腕を降ろさせ、宥める。幸い泣き出すまでには到らず、涙ぐむくらいで止まっていた。
「まず柔軟だ。柔軟が必要だ。うん。特に君はいま目が覚めたばかりだからね。知っているかい? 目が覚めた直後は一番体が硬くなっているんだ。うん。そうなんだよ」
 実際どうかはどうでも良かった。とにかく彼女を宥める。
「よし、まずは体操をしよう。柔軟体操をすれば体は解れる」
 何が悲しくて誘拐した相手と一緒に柔軟体操をしなければならないのか。
 考えたら負けだと思い、僕はネットから柔軟体操のやり方の動画を引っ張って来て、それを彼女に見せた。
 彼女の表情は晴れない。
「友達に教わって、柔軟体操、やってみたことあるけど、変わらなかった……」
 むぅ、これは強敵だ。前からの悩みなだけにある程度の努力はしていたらしい。
 僕は覚悟を決める。
「……よし、わかった。咲良ちゃんの体を柔らかくするところから始めよう。やるなら徹底的にだ。必ず君の体を柔らかくしてみせるから、ふたりで頑張ろう!」
 これでも調べ物と根気に関しては自信があるのだ。
 こうなったらイチから彼女を育てようと、真剣に取り込むことに決める。
 その熱意が伝わったのか、咲良ちゃんの顔がぱあっと明るくなった。
「……! うん! がんばる!」
「よぉし、その意気だ!」
 固めた拳を打ち合わせる僕と彼女。
 なんだかノリが完全にスポ根になったけど、気にしてはいけない。


 それから、僕と彼女の柔軟生活が始まった。
 彼女はあまり効果がなかったというけれど、人体である以上、必ず効果は出るはずだとなだめすかして、柔軟体操に毎日取り組んだ。
 関節を伸ばす運動を毎日繰り返し、きっちり数値で成果を確認する。たとえ数ミリでも成長は成長だ。無駄じゃないということを自覚するだけで熱の入り方が違う。
 マッサージにも力を入れた。
 とにかく筋肉や関節をもみほぐす。時には専門のマッサージ師に教えを請い、しっかりと理論と実践を踏まえ、それを彼女の体にフィードバックした。
 食べるものも重要だ。特定のものを食べれば体が柔らかくなるというような、直接的な影響があるわけじゃないけど、ストレッチなどの効果を最大限発揮するために必要な成分というものは存在する。
 彼女は好き嫌いなく何でも食べていると言っていたが、細かく話しを聴いて品目を調べていくと、栄養が偏りがちなことがわかった。栄養士の知り合いにアドバイスも貰いつつ、彼女の食生活を徹底的に改善した。
 さらに、人体の構造も徹底的に勉強し直した。
 どの筋肉や関節がどう影響して体が硬いという状態になっているのか、彼女と一緒に学び、咲良ちゃん自身にどう体を動かせばいいのかしっかり理解してもらう。もちろん僕はそれ以上に細かく、人体の各部の動きがどのように影響を及ぼすか、調べ尽くした。
 お風呂の中でマッサージをしたり、お風呂上がりに柔軟体操をしたり、一切の協力を惜しまなかった。
 ストレスを感じる環境では体が硬くなることもあるので、できる限り彼女が快適に過ごせるように調教部屋の環境を整え、咲良ちゃんがのびのびと暮らせるようにした。
 寝る時にはリラックス効果のあるアロマオイルを使ったり、ヒーリングミュージックを流したりして、最大限の休息効果が出るように工夫した。あまり布団が柔らかすぎると逆効果になることもあったので、ほどよい硬さの寝具をオーダーメイドで作ったりもした。
 睡眠時間は精神の安定に重要だし、体を作るためには欠かせないものだ。
 だから毎日八時間から十時間は寝てもらい、寝ている間も寝違えたり体に負荷がかからないよう、細心の注意を払った。
 そんな生活を二週間。
 とうとう、彼女は前屈で指先が床に届くほどになっていた。
 ぷるぷる震えながらも、指先が地面に着いたとき、思わず僕はガッツポーズをしてしまっていた。
 彼女も指先が地面に届いたことを実感したのか、両手の先をじっと見詰めて、ぴょんぴょんと跳ねる。
「や、やったよ! 届いたよ!」
「よし! よくやった! うん! いいね!」
 近付いてくる彼女の頭を撫でてあげながら僕はこれならいけるかもしれない、と感じた。
 指先が地面に着く程度ではまだ十分とはいえないけど、くるぶしにも届かなかった初期に比べれば劇的な変化だ。
 少なくとも、『ちょっと体が硬い』程度にはなったと確信が持てる。
 だから僕はこう提案した。
「初日に出来なかった後ろ手拘束……やってみるかい?」
 彼女に緊張が走る。
 実はこの数週間、初日にさせたような、拘束具をつけるためのポーズは全く取らせていなかった。
 下手にやろうとして出来なかったら、折角ついた自信が水の泡になってしまうからだ。
 だからそれは目標のひとつとして設定し、普段は意識しないようにさせていた。
 けれどいま。体が多少は柔らかくなり、自信がついた今なら。
 彼女は緊張した面持ちではありながら、こくりと頷いた。
「やって、みる……!」
「よし! いい気合いだけど、待って! まずは落ち着こう」
 緊張していては体が硬くなってしまう。
 そのことを思いだしたのだろう、彼女ははっとした様子だった。
 緊張を解く方法は色々あるけど、僕たちは色々試した結果、筋弛緩法を採用していた。
 心の緊張と体の緊張は繋がっているため、意図的に体の緊張を高め、そして緩めることで、連鎖して心の緊張も解く、というものだ。
「それじゃあ、まずは腕から始めよう」
 やり方は簡単。わざと筋肉に力を入れて緊張させ、一気に緩める。それを体の各部位ごとに順番に、丁寧に行っていく。
 筋肉の緊張と弛緩の感覚をしっかり捉え、ルーティンのように淡々と繰り返すことで、体の緊張を解し、心の緊張も解していく。
 順番に筋弛緩法を繰り返すうちに、力の入っていた彼女の体から、力が抜けていくのがわかる。
「よし……じゃあ、次は腕を後ろに回して、手首で背中を擦るようにゆっくりあげて……」
 筋弛緩法の流れで、彼女の動きを誘導する。
 彼女は僕の指示に自然体で従って、腕を後ろに回してゆっくりと腕を上げていく。
 初日は90度にあげるのにも苦労していた彼女だけど、果たして。
 固唾を呑んで見守る僕。
 咲良ちゃんの腕が、九十度を超えて曲がった。
 こぼれ落ちそうなほど、目を見開く咲良ちゃん。僕はそんな彼女に待ったをかける。
「そのまま! そのまま動かないで!」
 水平に組んだ彼女の腕に、分厚いベルトの拘束具を手早く巻き付ける。
 ギュッとベルトを絞っても、咲良ちゃんは悲鳴をあげたりしない。
 がっちり彼女の腕はコの字型に固定される。
「でき……た……」
 思わず零れた言葉に、咲良ちゃんが反応する。
「できた? 私、できた?」
 彼女には実感がわかないのだろう。
「ああ……出来てるよ……」
 だから僕はそう教えてあげた。
 やばい、今度は僕が泣きそうだ。
「や、やった……! 出来た!」
 後ろ手に拘束されたまま、咲良ちゃんがぴょんぴょん跳ねて喜ぶ。
 人は共に協力して大きな目標を達成したとき、こんなに喜べるものなのだ。
「ふぅ……よかった……」
 いままでの苦労が報われた。
 本当に良かった。苦労した甲斐もあるというものだ。
 僕は飛び跳ねて喜ぶ咲良ちゃんを呼んで、後ろ手に締めたベルトを外してあげる。
 外してから、ふと気付いた。
(……外してどうする?)
 すっかり目的を見失っていたけど、本当は拘束具を嵌めたあとで性的に悪戯をするつもりだったのだ。
 ずいぶん時間はかかったけど、拘束具を取りつけられたのだから、性的な悪戯の段階に移るべきではないだろうか。
(まあ、正直いまさら感はあるんだよなぁ……)
 なにせこの二週間、一緒に暮らしていたのだ。
 ひたすら柔軟に時間を費やしていたから、特にこれということがあったわけじゃないけど、ストレッチやマッサージをする過程で散々ボディタッチはしていた。
 彼女に性的な気持ちを抱かなくなったかといえば、決してそんなことはない。ないのだけども。
 なんだか無性に大事にしたい気持ちが湧いてしまって、彼女が嫌がるようなことはしたくない、という気になってしまっていた。
(咲良ちゃんはどう思ってるのかな……)
 そう思って彼女を見ていると、彼女は部屋の隅に詰んでおいた拘束具の数々を興味深そうに見ていた。
 そして思い掛けないことを尋ねてきた。
「……ねえ、お兄さん。あーむばいんだーって、どれ?」
「アームバインダー? これだけど……これがどうかした?」
 性的なことについて、学校で教えて貰えるレベル以上のことを彼女は知らなかった。
 拘束具に関しては目標を明確にするために教えたけれど。
 アームバインダーを手に取り、どうするつもりなのか眺めていると、彼女はそれを僕に手渡し、そして背中を向けて両腕を後ろに回した。
「着けてみて! 今の私なら、きっと身に付けられるはずだから!」
「ええ……」
 僕は躊躇した。それはアームバインダーを身に付けた彼女を見たくないからではなく、アームバインダーがかなりの柔軟性を求める拘束具だったからだ。
 咲良ちゃんの柔軟性はずいぶん改善されたとはいえ、まだとても体が柔らかい域には達していない。
 せっかく培った彼女の自信を潰してしまわないか。
 しかし、そんな風に躊躇する僕とは対照的に、咲良ちゃんは真剣に、希望に満ち溢れた目を輝かせている。
(そうだ……彼女の努力を誰よりも近くで見てきたんだ。僕が彼女を信じなくてどうする)
 僕と彼女の柔軟生活は、二人の間に確かな絆を生んでいた。
「わかった。ダメそうだったら、途中で止めるからね。正直にいうこと」
「はい!」
 良い返事だ。
 彼女は前を向き、深呼吸をして息を整える。リラックスして、拘束具を受け容れようとしているのだろう。
 僕は彼女の腕を取って、背筋を伸ばさせ、まっすぐ揃えて合わせる。
 拳を緩く握らせ、そのふたつの拳を納めるように、アームバインダーを被せていった。
 どくん、どくんという心臓の鼓動がやけに耳に響く。
(僕の方が緊張してるじゃないか……しっかりしろ……)
 不安を感じさせたら、体は硬くなってしまう。僕は努めて平静を装い、まずアームバインダーの袋を彼女の腕に被せることに集中した。
 肩を限界近く後ろに回すというのは、体の硬い子にとってかなり苦しい体勢だ。
「んぅ……っ」
 案の定、彼女の口から微かに呻き声が漏れる。痛みを堪える時の声。僕はこの二週間の生活で、その呻き声のテンションから、彼女がどの程度痛みや苦しみを感じているか、おおよそ推し測ることが出来るようになっていた。
(まだ、大丈夫。まだいける……!)
 アームバインダーの口に着いている紐を、背中側から胸をクロスするように回し、ずり落ちないように反対側の口に止める。紐が彼女の胸に食い込み、テンションがかかった。
「……っ」
 微かに漏れる息。それには熱が篭もっていた。
(問題は、ここからだ……)
 アームバインダーの紐を締めて行き、完全に両腕を固定しなければ、アームバインダーを装着したとは言えない。
 そのことが彼女もわかっているのだろう。まだ喜びを滲ませることはなかった。
 僕は手首の方から順番に、じっくりと時間をかけて紐を締め上げていく。両腕の間隔が狭まり、彼女の肩が軋んで音を立てた。
「ん、ゥっ……あ、ゥ……ぁっ……!」
 喘ぐ声が大きくなる。
(がんばれ……もうちょっと……!)
 祈るような気持ちで、アームバインダーの紐を締めていく。
 一番苦しいであろう腕の付け根を締める部分に差し掛かった。一本編む込みを進めるたびに、臨界点を突破してしまうのではないかと、冷や汗を流しながら手を進める。
「んあっ、はっ、あぁっ、ん、ぅあ……っ」
 荒い呼吸をくり返しながら、咲良ちゃんが耐える。痛みにか、苦しみにか、彼女の顔は真っ赤で、口の端から唾液が糸を引いて垂れているのも気にしてはいられない様子だ。
 その姿はとても扇情的で、久しぶりに本気で彼女に対して劣情が湧いた。ズボンの中で僕のものが硬くなっているのを自覚する。
(これで……っ、終わり……!)
 最後に一際強く紐を締め、結んで拘束を完成させる。
 拘束が完了したのが彼女にも伝わったのか、彼女の膝から力が抜け、その場にへたり込んだ。
 悲鳴はあがらない。アームバインダーに両腕が封印されている。
 完璧な形だった。
「できた、できたよ……!」
 この感動をどう言い表したらいいのかわからない。
 アームバインダーに捕らわれた彼女は、依然として苦しそうな表情は浮かべつつ、ほっとしたように綻ばせた。
「わたし……できた……?」
「ああ! 完璧だよ! すばらしい!」
 思わず僕は彼女の前へと回り込み、両腕を広げて彼女をハグしていた。もちろんアームバインダーによって絞られた両腕に負担がかからないように。
「や、ったぁ……ぁっ、んぁっ」
 感動しすぎて、お互い言葉にならなかった。彼女の体が歓喜に震えるのがわかる。
 僕と彼女は、成し遂げたのだ。
 暫くの間、僕は彼女を抱き締めて離さなかった。
「ん、ぅ……お、お兄さ……ん……ちょっと、恥ずかし……」
 暫くして、ふと我に返ったのだろう。
 彼女は僕に抱き締められているということを理解したのか、恥じらい始めていた。
「あ。ごめ、ん……」
 思わず離れそうになった僕だけど、その前に彼女の顔を見てしまった。
 真っ赤な顔をして喘ぐ彼女を見て、情欲がむらむらと沸き上がるのを感じる。
(そうだ……元々は……このために彼女を攫ってきたんじゃないか)
 僕は彼女の背後に回り、アームバインダーで拘束されて抵抗の術を持たない彼女の体に、手を這わせた。
 びくん、と彼女の体が強張る。マッサージやストレッチの時とは触り方がまるで違うことに気付いたのだろう。
「おにい、さん?」
「ここまで出来た君には……ご褒美をあげないとね」
 それはそれは性的なご褒美を。
 僕は彼女の耳元で小さく囁いた。
「大丈夫、痛くしないから。いっぱい気持ちよくしてあげるよ――」
 そしてそれはこれから先も、ずっと。
 そう囁く僕の腕の中から、彼女は逃れられない。逃れようとしない。
 彼女の体の震えが、恐怖によるものではないことを、僕はよくわかっていた。

 彼女の心と体は――すっかり僕の手で解されてしまっていたのだから。


おわり
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