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白日陰影

箱詰系、拘束系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

遠隔操作で自縛したら「自分」が増えた


 わたしの目の前で、限りなく自由を奪われた女の子がもがいている。

 至って普通の家の一室、日常的な香りのする部屋の中。
 目に眩しいほどに白いシーツがキッチリ整えられたベッドの上に彼女は仰向けに寝かされていた。
 細く華奢な両手両足は、それぞれ別の拘束具で折り畳んだまま包まれ、伸ばすこともできないようにされている。
 指先はミトンのような丸まった手袋に包まれて、使えないようになっている。遊びが一切ないので、仮に縄抜けなどのエスケープの達人でも抜け出すことは出来ないだろう。
(まあ、そんな技術なんて持っていないから、過剰なんだけど……)
 両肘と両膝には丸い金具があって、太い鎖が連結されている。その鎖が左右に引っ張られて、ベッドの裏で手足の鎖それぞれが繋がっているので、彼女は身体を開かざるを得ない状態にさせられていた。
 彼女がいくら短くなった腕や足で身体を隠そうとしても、鎖は強固に彼女の両手足を固定している。手足に込められるだけの力を入れているようだけど、鎖はわずかに軋むだけでテンションが緩んだりはしなかった。
(恥ずかしい格好よね……部屋に流れる空気が身体に当たるのがよくわかるし……)
 両手両足は完全にラバーで出来た袋状の拘束具で覆われている彼女だけど、それに比して身体は比較的露出度が高かった。
 胴体にはボディハーネスと呼ばれるものが食い込んで、その裸身を彩っていた。掌にあまるほど大きな乳房も、革のベルトが絞り出して大きさを強調している。
 その先端にある桃色の乳首。それに対して、小さなローターが二つ、挟むように固定されている。小さな振動音を奏でながら刺激を与え続けていた。
 その結果、彼女のその敏感な先端は傍目にもわかるほどに硬く尖っていて、どれほどの快感を強制的に与えているのか容易に想像がつく。
(少しもがいただけでも揺れるから、刺激に慣れないのよね……)
 彼女の股間は、両足が曲げた状態で、膝が左右に引っ張られていることで、女の子が普通は絶対にしない格好で開けっぴろげに晒されていた。
 その上、両足は足の裏を合わせる形に固定されている。ボンテージテープというガムテームのようなものでぐるぐる巻きにされていて、足先が微かにぴくぴくと動いているのがわかる程度にしか動かない。
 そんな形で晒されている股間、女の子の一番大事な場所には、恐ろしく大きく太いものが挿入されていた。それはボディハーネスの股間部分を通るベルトに固定され、抜けないようにしている。
(最初はあれだけキツかったのに、よく入るようになったわよね、これ。普通の男の人のものとは違う動きだけど、それがいいっていうか……)
 多少女の子が暴れた程度では抜けず、むしろ押し込んでいるような形だ。男性器を模したそのバイブはローターとは比べものにならない大きな音を立てて動いていて、彼女がその動きに翻弄されているのがよくわかる。
 さらに、クリトリスは丁寧に皮が剥かれたあと、クリキャップで吸い出された上で、ローターが張られていた。
(直接つけたらすごすぎたから、クリキャップ越しに着けてみたけど……余計酷いのかな?)
 仰向けに寝ているから傍目からは見えないけど、お尻の穴にも細工がされていることをわたしは知っている。
 彼女のお尻には太くて長いアナルパールが押し込まれていた。丹念に中のものを出してから入れたから、お腹の奥の奥までそれの感覚が満たしているはずだ。
 いまはお尻の穴から引っ張り出すための金具が飛び出しているだけだから、見た目は大したことがないように見える。
 けれど、ボディハーネスが食い込んでいないあたりのお腹をよく見ると、便秘で大便が腸内に溜まっている時のように、少しぽっこりとしていることから、入れているそれがどれほど太く大きく、長いものなのかは伺いしれた。
(ほんとに苦しいのに、よくやったわよね……)
 必要以上の、執拗なまでの責め具の数々。
 そしてそれは身体だけじゃなく、首から上の頭部にも及んでいた。
 いや、むしろそこから上が本番といえるかもしれない。
 まず首には太くて重い金属製の首輪が巻き付いている。この首輪、着けたまま動くことを想定していないと思えるほど物凄く重い。もし柔らかいマットのベッドに寝かされたら首輪の自重で首が絞まってしまいかねないほどだ。
(ベッドの硬さが足りなかった頃は、危うく気を失いかけたわね)
 いま彼女が寝ているベッドはほどよい固さのマットを使っているから、分厚い首輪がほどよく凹み、固定されているわけでもないのに彼女の首はそこからほとんど動かせなくなっていた。
 顔の下半分、口を覆っているマスクのようなものは、口の中央に丸い栓のようなものがある。いわゆる開口具というもので、その栓を外すことで口内が無防備に晒される仕組みだ。本来なら、男性が着用者にフェラチオを強制させるための装置だった。
 ただ、この口枷の栓は特注品であり、内側に物凄く太くて長いゴム製の張り子が接続されている。
 それは彼女の喉の奥までを犯し、喉のほとんどを占領して、わずかな呼吸さえも苦しいものにしている。
(ほんと苦しいのよね、これ……喉のほとんどが圧迫されて……空気は通るけど、それ以外のものはほとんど通らないし……)
 舌が内側に張りだしたものによって抑え込まれているから、彼女は明瞭な声をあげることもできない。開口具の時点で開きっぱなしになるのだから、ほとんど呻き声しかあげられないのだけど、その栓の残酷な仕掛けによって、呻き声すらささやかなものになっている。
 口で呼吸のできない彼女は、鼻で呼吸するしかできないのだけど、そこにも当然細工がしてある。鼻には穴を塞ぐ形でチューブが通されていて、そのチューブの先端は彼女の顔の横に置かれたリブレスバッグに接続されていた。
 知らない人が見たら黒い風船のようなものにしか見えないものが、彼女の呼吸に合わせて膨らんで萎んで、を繰り返している。そのリブレスバッグは、彼女の鼻のチューブに繋がっているのとは別の太いチューブである程度の外気を取り入れているため、酸素がなくなって死ぬことはない。
 けれど、吐いた息をほとんどそのまま取り入れることになり、酸欠気味になってしまう。
 彼女がそれを通して呼吸をするようになってからしばらく経っているから、頭がぼんやりとして思考が定まらなくなり始めている頃だ。
(ぼーっとして、息を吸っても吸っても楽にならなくて。最初は焦って余計に呼吸して苦しくなったりしたなぁ)
 目の焦点の合い方などを確認出来れば、より詳しくどんな状況かわかるのだろうけど、残念ながらそれはできなかった。
 彼女の目は、分厚い目隠しによって覆われているからだ。その目隠しは普通の布を巻いただけのものではなくて、こういう時のために使われる、革で出来た本格的なアイマスクだった。暴れることはそもそも出来ないけど、仮に頭を振って暴れたところで、全く動かないだろう。それくらい強固に彼女の視界は奪われている。
 彼女は、光の濃淡すら感じられない暗闇を感じているのだ。
(目が見えないだけでも、十分なのにね……)
 耳にはノイズキャンセラー付きのヘッドセットが被せられ、目隠しや口枷と連結して取れないように固定されている。しかも、これだけではなくて、ヘッドセットの中にある耳の穴には、だめ押しとばかりに穴を塞ぐタイプの耳栓が押し込まれていた。
 それにより、わずかな音さえも一切聞こえない。
 身体を通して聞こえる分しか、彼女の耳には音が届いていなかった。それは静寂というにはあまりにも静かすぎる環境で、目も耳も鼻も利かないため、身体の感覚が酷く鮮明になるのだった。
(自分の身体だけしか世界に存在しないような、心細くて、不安になる感覚……)
 彼女は、人間が本来持っている自由をことごとく奪われて、そこにいた。
 とても恥ずかしく、ひどくいやらしい格好で囚われている。自由のない中、少しでも身体を動かそうと懸命に足掻いていた。
 もちろんその程度で彼女を戒める拘束は外れない。
 それを一番よくわかっている彼女は、はしたないほどに股間を濡らし、挿入された張り子の隙間から愛液を滴らせてベッドにシミまで作っていた。
 絶望的なまでに自由を奪われているのに股間を濡らすなんて、どれほど変態かと思うだろう。ほとんどの人がそう思うはずだ。
 だが、わたしはそうは思わない。思うわけがない。
 この彼女にここまで徹底的な拘束を施したのはわたしだ。
 無抵抗な彼女のあそこにバイブを入れ、アナルパールを押し込み、ボディハーネスで絞り出しつつ固定して、ローターを乳首とクリトリスに宛がって、両手両足を折り畳んで拘束し、鎖でベッドに固定して、指先までも完全に覆って封じ、首輪を着けて鍵をかけ、口枷を噛ませて喉の奥まで張り子を押し込み、鼻の穴を封じてリブレスバッグに繋ぎ、目隠しをして耳栓を入れてヘッドセットで固定して。
 すべての準備を整えた。
 そうやって拘束した張本人だから、彼女を変態と思わない、のではなく。

 わたしは、ベッドの上で快楽に悶えてもがいている――彼女本人だからだ。




 わたしは、どこにでもいる普通の女の子だった。
 とあるエッチなネット小説を読んだことがきっかけで、SMというか、拘束されることに興味を持ってしまった。
 彼氏はいなかったし、友達に頼むわけにもいかなかったから、自分で自分を拘束する、いわゆるセルフボンテージに嵌まっていった。
 そうしているうちに、自分の身体ひとつで出来ることには限界を感じ、思い切ってお助けロボットを購入することにした。
 本来、このロボットは寝たきりの患者や高齢者などが使用するためのものだ。一時的に意識をロボットに移し、ロボットの体を行動することが出来る。身体は部屋で寝たまま、買い物や料理が出来るということで、自分で自分の介護ができると人気だった。
 自分の体と同時には動かせないけど、ロボットの体は力が強く、わたしのような女の子でも重い荷物を持つことができるようになるので、寝たきりの人以外にも活用されている。
 だからわたしがそれを購入しても不自然ではなかった。
 お助けロボットはできる限り操作する本人に似せる、というのが通例だった。もちろん人と区別がつかないほどではないけど、作業の関係上、手先なんかは人間そっくりにできているし、その気になって工夫すれば人間の体の振りをすることも一応は可能だ。
 そこまでする人は滅多にいないし、どうしてもロボットである部分はあるから、ずっと騙しきれるものではないけど。
 ロボットは操作する人間が、頭に着けるコントローラーがないと動かない。ヘッドバンドのような形状の機械によって、意識をロボットの方に転送して動かしている。
 コントローラーがないとロボットは動かせず、もし取り外せばすぐに人間の体の方に意識が戻るようになっている。
 ロボットの体と自分の体、両方を同時に動かすことはできない。それは主体性の保持という意味で絶対の前提だった。

 そのはずだった。

 いつものように事前の準備を人の体で整え、ベッドに裸で寝転がったわたしは、ロボットを動かすためのヘッドバンドだけを身に付け、ロボットの体に意識を移した。
 ロボットの体で動けるようになったわたしは、ベッドの上で無防備に寝る自分の体に拘束具や責め具を取りつけた。
 その間、わたしの人間の体は一切動かず、身動ぎ一つしていなかった。
 問題は何もなかったはずだった。
 すべての準備を終えたわたしは、嬉々としてロボットの体から意識を人間の体へと戻した――はずなのに、ここにいる「わたし」という意識はロボットの体にあり続けた。
 人間の体の方はいつものように縛り上げられ、自由を奪われた快感を享受しているようで、ロボットの体がいまだに動いていることに気づいてすらいないようだ。
 ほとんどの感覚を遮断しているから無理もないとはいえ、呑気なものだった。
 人間の体のわたしが身悶えているのを視界の端に納めつつ、わたしは自分の手に視線を落とす。ロボットの手が見えた。
(……どうしよう)
 間違いなくこれはバグだ。どういうわけだか、人間の体に戻るはずだったわたしの意識が、ロボットの体の中にも残ってしまった。
 本来ならこれはあり得ないことだ。だってこのロボットは人の意識を再現するほどの性能をしていない。色々な感覚をロボットの体を通して人間が得られるというだけで、原理としてはラジコンに限りなく近いからだ。
 指示を出す脳は人間の側にしかなく、いまはその脳が人間の体を動かしている以上、さらにロボットの体が動かせるわけがない。
 そもそも、ここにわたしをわたしと認識している自己があるのがおかしい。意識が分裂したとしか思えない。
(わたしは……どうすればいい……?)
 いつまでこの状態が続くのか、見当も付かない。
 普段こうやって楽しむ時、わたしは時間が経てば自動的に意識がロボットに移るようにしていた。
 そうして自分の拘束を解き、後片付けをしてから、再び自分の体に戻ってシャワーを浴びるなどの後始末を行う。
 向こうの意識がこっちに移って来た時、ここにいる「わたし」はどうなるのだろう。
 記憶や意識が統合される、というのが一番ありえそうだけど、本来存在し得ない「わたし」は消えてしまうのかも知れない。
 それは、ぞっとする予想だった。

 わたしは確かにわたしとしてここに存在する。消えたくない。

(ど、どうしたらいいの……?)
 もう一度わたしの意識がこちらに移って来ないようにするには。
 わたしはベッドの上で脳天気に快楽を貪るわたしを見た。
 その額には、ヘッドバンドが巻かれている。ヘッドバンドは不自由な体で暴れた程度では外れないけど、第三者の手なら取り外すのは簡単だった。
 ロボットに喉を鳴らす機能はないのだけど、ごくり、と唾を飲み込む感覚を覚える。
 それを行うことで、わたしがどうなるのかはわからない。
 もしかすると、取り返しのつかないことになる可能性は否定できない。
 それでもわたしは「わたし」であるために。

 ベッドで寝ているわたしの頭から、ヘッドバンドを取り外した。


つづくかもしれない

箱詰倶楽部の福箱詰


 福袋、それはお正月の風物詩。
 店によっては袋と言いつつ箱だったりすることもあるけど、そんな細かいことはどうでもよく、ちょっとお得にお高いものがランダムで手に入るチャンス、ということで日本人が大好きな風習だ。
 もちろんランダムだから好みじゃないものがたまに混じっていたりはするけど、その辺りも含めて福袋の醍醐味と言える。
 だから、いつもお世話になっているあの『例の倶楽部』で福箱が販売されると聞いた時、一も二もなく予約したのは確かだ。
 まさか、まさかとは思うけど、ひょっとしたら、という気持ちがあったのは否定しない。
 常識で考えたらありえないけど、あの倶楽部ならそういうことをやってくれるんじゃないかなという期待はあった。
 けれど、そのまさか、まさかじゃないか。

 本当に、箱詰めの『それ』が送られてくるなんて思わないじゃないか。

 僕はごくりと生唾を飲み込んだ。それを前に、そうすることしかできなかった。
 家に届いた時から、何かやばい気はしてたんだ。倶楽部専属の配送屋が届けに来たのもそうだし、四人がかりで運んできたのもそうだ。
 そしてなにより――わざわざ部屋の中まで運び込み、台座と共に置いていった段階で、そういう予感しかしなかった。
 一人暮らしの部屋には大きすぎる荷物。はっきりいって邪魔だけど、最低限の寝床と行動スペースは確保できていたので、まあ、問題ないといえば問題ない。
 そんな些細なことは置いて、僕の興味はそれ自体に釘付けだった。
 ついでにとばかりに置いていかれた小さな――といっても本体に比べればという意味で、十分ダンボールとしては大きい――箱も気になるが、本体の異様な存在感に、僕は本体から開けないわけにはいかなかった。
 金属製のパイプを台形に組んだ台座は、下部にゴムが貼ってあり、容易なことでは動きそうにない。
 設置していった作業員にも、なるべく動かさないように言われている。
 もしも緊急で動かさないと行けなくなった時は、動かしにきてくれるのだという。
 その台座の上に置かれた本体は、見た目だけ見ればただの寝かせた長方形の箱だ。台座で腰の位置の高さになっているけど、賽銭箱、という表現が一番わかりやすいかもしれない。
 材質は金属、鉄やアルミのような銀色だけど、触れてみた感じそのいずれでもなさそうだ。ヒンヤリしているかと思ったけど、思ったより冷たい感じはしなかった。
 箱の前後には『2019年 福箱』の文字がスタイリッシュな文字で刻印されている。こういう単なる装飾にも無駄に凝る感じはあの倶楽部らしい。
 そして上面、賽銭箱で言えばお金を入れる面は四隅がネジ止めされたフタになっていて、かなり厳重に閉じられている。フタも金属のような材質でできているようだから相当重いのではないだろうか。
 さらに、長方形の箱の中でも一番小さい面、左右の面には、なにやら複雑な切り込みのようなものが入っていた。
 向かって左側の側面は中心より少し上あたりに鍵穴が開くような形、反対側、右側の側面は潰れた円のような形に開くようになっているようだ。
 下側はそういった切り込みはなく、のっぺりとしている。ただ、何やら穴が空いていた。なんの目的かはわからないが、親指が入りそうなくらいの太さだ。試しに指を突っ込んでみたが、すぐに指先がフタのようなものに押し返されてしまった。
(さて、と……ここからどうすればいいのかな)
 上部のフタを開けてみようにも、止めてあるネジの頭は変わった形をしていて、普通の工具では開きそうにない。
(……ということは)
 僕は同時に届けられたもう一つの福箱を見る。恐らくはこっちの箱に開けるための工具や、この箱の説明などが入っているのだろう。
 段ボール箱はほどよい重さで、一般的な体格の僕でも持ち上げることが出来る程度だ。
 どっしりと重い感じは中身が詰まっているようで、工具一個、説明書一冊だけということはなさそうではある。
(ほんと、何が入っているんだろ……)
 半ば中身は予想できているのだけど、心臓のドキドキが止まらない。まさかという気持ちと、きっとそうだという気持ちが交錯している。
 心を落ちつかせながら、段ボールの蓋を開く。すると、想像通り箱の中には工具が入っていた。それは予想通りだったのだけど、納め方には意表を突かれた。
 段ボールの中には一回り小さい段ボール箱が入っていて、その蓋の上に工具らしきものだけがテープで貼り付けられていたのだ。
「……これは……なるほどそういうことか」
 もう一回り小さな箱を開ける前に、工具であの巨大な金属の箱を開けてみろという意図だろう。演出が凝っている。
 これはいよいよ、そういう内容物だという期待が高まった。
 僕は急いで、金属の箱の蓋の四隅にあるネジを外していく。くるくると小気味よくネジを外して、蓋に手をかける。この段に至っても、僕はまだ期待半分不安半分だった。もし中身がそうだとしたら、そうだとして。
 それをどう扱うべきなのかは難しい問題になりそうだったからだ。
 結論から言って、扱いに迷うようなことはなかった。
 なぜなら――蓋を開けた先には、もう一枚透明の蓋が待ち構えていたからだ。その蓋はいま外した蓋と違って、外せそうな構造をしていなかった。ただ、物凄く頑丈に出来ているようで、割ったり砕いたりすることはできそうにない。
 けれど透明だから中身は見える。中身を見た僕は、様々な意味で圧倒されてしまった。

 最初、それは黒い塊にしか見えなかった。

 箱の中に窮屈に押しこめられたそれは、明らかに人の姿をしていた。ただ、綺麗に四角に納められているので、一見しただけでは人に見えなかった。
 よくよく見れば、人間が箱の中に窮屈に押しこめられているのだということがわかる。
 体勢は正座を基本として、足首がお尻の横に来るように少し崩した状態だ。お尻を床に着ける、俗に女の子座りと呼ばれる姿勢。その状態で、その人は上半身をべったりと前に倒していた。頭頂部が箱の底面に突くほど身体を折り畳んでいるので、人間の身体とは思えないほど平べったくなっていた。
 身体が硬い男性には取りづらい体勢だし、あの倶楽部の客層から考えても、たぶん、女性だろう。
 女性だと断言できなかったのは、箱に詰められた人の身体が、ほぼ全てラバーに覆われていたためだ。
 全身を包むラバースーツ、頭部を覆う全頭マスク、手や足の先までしっかり覆われていて、性別を判断できる要素がおおよそ全て隠されていた。胸が膨らんでいるかどうかは、彼女の体勢が問題でわからない。
 お尻や肩の丸みからすると女性っぽいけど、最近の男性の中にはどう見ても女性にしか見えない人もいるし、それだけでは断言が出来なかった。
 とりあえず推定彼女としておく。
 その体格にぴったり合わせたのだろう箱は、それだけで彼女の自由をほぼ完全に奪っていたけど、彼女に施された拘束はそれだけではなかった。
 まず、足首。分厚い金属製の枷のようなものがかけられていて、その枷は金属製の箱と一体化している。ねじ穴も見当たらず、そこから一ミリも動かせそうにない。
 自由になりうる両手は、アームバインダーというものによって一本の棒のように身体の背面で固定されている。その先端は丸くなっていて手先の動きは完全に封じられていた。アームバインダーの先端には金属の輪っかがあって、お尻側の箱の壁面に繋がっていた。
 また、ハッキリとは見えないが、なにやら口には口枷みたいなもの、首には無骨な首輪らしきもの、腰には金属で出来たパンツのようなものが装着されているようだった。

 拘束されて箱詰めにされた人間が、目の前にいた。

 そうじゃないかと期待はしていたのだけど、実際こうしてそれが現実になると改めて圧倒されてしまう。
 さすがは箱詰倶楽部。福箱に全力だった。
 僕はあの倶楽部の会員であるが、箱詰めになりたいのではなく、箱詰めされた人を見るのが好きだった。
 そういうものに理解のある彼女がいたら、やってみてもらっていただろうけど、あいにく僕にそういういい人はいない。
 だからこれまで、箱詰倶楽部の活動を見学したり、販売される動画を購入して過ごしてきた。倶楽部で福箱が販売されるというアナウンスがあったときは、きっと基本的にはそういう動画とか写真の詰め合わせになると思っていた。
 でも、もしかしたらその福箱の中に、箱詰めされた会員が含まれているんじゃないかと、そう期待していた。
 僕のその予想は見事に的中したことになる。福箱を購入した人全員がこんな福箱を受け取っているわけはないし、僕はめちゃくちゃ運が良かったのだろう。
 興奮が隠せない。
(でも……このあとどうしたらいいんだろ……普段の見学とか動画と違って、思う存分見れるのはいいけど……)
 福袋はそれなりの値段で購入したけれど、当然人身売買に値するような値段ではないし、箱詰めにされている彼女も会員のはずだから、そんなことはできないだろう。
 時間的な期限があるはずだった。
 そもそも、そんなに長期間箱詰めにしっぱなしにしたら彼女の体が保たないだろう。
 人形なのだとしたらその辺りの問題は解決するけど、さすがにここまで大掛かりなことをしておいてそれもないはず。よくよく彼女を見ていると、呼吸によってか微かに体が上下しているようだし。
 生きている人間なら、メンテナンスは必要だ。
 僕は段ボール箱の中に詰められていた、もう一つの段ボール箱を開いて、中を見てみた。
 その中には、様々な道具と共に、一番上に僕の求めるものがあった。
「マル秘取扱説明書……マル秘って」
 わざとらしくデカデカと赤文字で書かれたそれを見て、思わず笑ってしまった。ちょっと男心がくすぐられてしまう。
 中を開くと、まず前文として箱詰倶楽部の社長の挨拶が載っていた。
『いつも箱詰倶楽部を御利用ありがとうございます。特別版福箱のご当選、おめでとうございます! すでに本体はご覧になられましたでしょうか? もしかすると人形なのではないかと誤解していらっしゃるかもしれませんが――』
 なにげに考えていたことを言い当てられて思わずびくりとする。
『無論、人形などではございません! 倶楽部会員のひとりでございます。参考として普段の様子を撮影した写真を同封しております』
 そこまで読み進めた時、説明書の中に挟んであった写真に気づいた。手から伝わってくる感覚で、何か栞みたいなものが挟まっていると思ってたけど、どうやらこれがその写真のようだ。それを取り出してみる。
「……マジかよ」
 思わず、その写真に映っている人と、箱の中に入っている黒い塊のようなものを見比べてしまった。
 写真には、すごく健康的で溌剌とした様子の女性が映っていた。
 それも、かなり若い。下手したら大学生だ。まさか高校生ということはないと思うけど。
 テニスをしているところを撮ったもので、汗を流して真剣にラケットを振るっている。
 顔立ちもかなり整っていて、とてもこんな変態的なプレイをするようなタイプには見えない。男性から引く手あまただろうに。
 こんな冴えない男のところに、箱詰めにされて送られてきているなんて。
 箱を覗き込んで見ると、そこには黒いラバースーツに全身を包まれ、徹底的に拘束されて身動ぎひとつにも苦労しそうなほど、箱詰めされた肉体があった。
 この写真のスポーティな女性が、この黒い塊になっている。
 写真に映っている人物が本当に箱の中に入っているのかという保証はなかったけど、想像するとギャップでますます興奮する材料になる。ズボンの中で痛いほどあれが反応しているのを感じていた。
 さらに社長の挨拶文を読んでいく。
『本当は差し上げたいところですが、さすがに弊倶楽部でも人身売買を行うわけには参りませんので、一時的な貸し出しということになります。当人の承諾は得ておりますので、ご安心ください。期限は一週間となります』
「一週間……! ずいぶん長いなぁ」
 そんなに長時間閉じ込め続けて、大丈夫なんだろうか。
『なお、メンテナンスの方法や、取り扱い方、スキンシップの取り方などは、すべてこの本に書いてあります。大事に扱ってくださいますよう、よろしくお願いいたします。それでは今年も箱詰倶楽部をよろしくお願いいたします』
 前文はそれで全部だった。説明書をぺらぺらと捲って見たところ、あの箱には色々と機能があり、それを使うことで彼女の健康を維持できるようだ。
 とりあえず一通り読もうと思ったけど、そのうちの一つの説明が目に入った。
 僕は彼女の入った箱に近づき、前面側の板に触れる。少し確かめて見ると、説明書通り、その板がパカリと外れた。天板と同じで、板の先にはもう一つ透明な壁があり、彼女本体に触れることはできなかったけど、箱詰めされた彼女の姿が横からも見れるようになった。
 上からは見えなかった部分が、はっきり見える。
 目立つのは俯いていた顔だろう。上からだと全頭マスクを被っていることしかわからなかったけど、横から見るとどうなっているのかはっきりわかる。
 まず、目はアイマスクのようなもので塞がれていた。分厚いクッションのようなものが目を覆っているので、ほとんど光も感じられないんじゃないだろうか。
 さらに口は口枷で塞がれているのは、上から見てもわかっていたけど、横から見るとその口枷がどんな形状なのかはっきりわかった。
 いわゆる開口具というものだ。顎から鼻先までしっかりラバーマスクで覆われているのだけど、口をギリギリまで開いた時の大きさの穴が中央に開いている。その穴は湯船の底にあるような、ゴムの栓で塞がれていた。本来なら、その栓を抜いたあと、男のものを突っ込んで強制的に奉仕させるための仕組みだろう。
 箱詰めにするだけならそんな機能は要らないはずだから、おそらくまだ秘密があるはずだ。
 その機能の追求はあとにして、まずは彼女の横姿をじっくり堪能する。
 折り畳まれた彼女の体。その見事な流線型を保った彼女の、ラバーに包まれた胸もまた、はっきりとは見えないが窮屈に押しつぶされているのがわかって、それだけでも興奮した。
 普段の写真を見たときから感じていたけど、結構な大きさだ。この大きさだと結構胸が圧迫されてかなり苦しいのではないだろうか。実際のところがどうかはわからない。
 ともかく、そんな箱詰めの彼女を眺めつつ、説明書を読み始めた。

 なんとも最高の正月になったものだ。


箱詰倶楽部の福箱詰 おわり

箱詰倶楽部の聖夜詰

 その一年に一度の特別な日、私がいつも通っている箱詰倶楽部もまた、特別な装いになっていた。
 いつものように建物のロビーに入ると、広いホールになっている場所に、大きなツリーが設置されていた。きらびやかに飾り付けられ、四方八方からライトアップされたツリーの下には、クリスマスプレゼントの大きな箱が置かれている。
 一見どこにでもありそうな装飾だけど、この倶楽部のことだから、きっと何かあるのだろう。そう思って少し眼をこらしてみると、華やかなラッピングに包まれていると思われていた箱の表面が、妙につるつるしているのに気付いた。十字にかけられたリボンは本物みたいだけど、ラッピングに見えたものは、箱の表面に映し出された映像のようだ。
 私は受付に行く前に、少しその展示物に近づいてみる。近づくと余計に違和感が際だってきた。
(これ……箱の表面に映像が映し出されてるわけじゃ無いわね……)
 プレゼントボックスのすぐ傍まで近づいた私は、その箱に向けて手を伸ばす。
 すると、ライトの光が遮られ、箱に向けて影を落とした。

 その影が落ちた部分から、箱の中が見えるようになる。

 驚いて手を引くと、再び箱は何の変哲もないプレゼント包装をされた箱になった。速くなった鼓動を感じつつ、どういう原理か理解した。
(な、なるほど……周囲から照らしてるのは、ライトであると同時にプロジェクターでもあるわけね……それを使って、箱にラッピングをしているように見せかけている、と。つまり――)
 私は再び手を伸ばして箱に触れる。やはり、ライトを遮った部分の包装が消え、中が見えるようになった。いかにもクリスマスプレゼントのような包装をしているような箱は、リボンを除いて、透明な箱だったのだ。
 そして、その透明な箱の中には、想像通りの物が詰められている。

 窮屈そうに身体を折り畳み、リボンのような拘束具によって縛られた女性がいた。

 一言でいうと、すごい体勢だった。
 全体的には、椅子に浅く腰掛けて背もたれに身体を預けているような体勢だ。
 ただ、床につけているお尻から腰にかけての部分が斜めになっているのか、特に不安定な様子はなく、安定しているように見える。彼女の身体の形に添うように箱の底が作られているのかもしれない。
 両手は後ろに回した上で交差しているようで、箱の隅に沿って手のひらが伸びているのが見える。縛られているかは正面から見てもわからないけど、縛られていなかったとしても、自分の身体と箱との間に挟まっていて、自由に動かせそうにはなかった。
 それだけならまだしも、私がすごい体勢と言ったのは、足の納められ方にあった。
 彼女は、自分の顎の下で両足の足首ふくらはぎを交差するような体勢で――私が同じ体勢を取れと言われても無理だろう――酷く身体の柔らかさを必要とするような体勢になっていた。
 彼女の両足は白いファーのついた薄くて赤いハイソックスに覆われている。その赤はとてもクリスマスらしかった。膝下までが赤く、そこから上は普通の肌色なので、赤い部分が×印描いていた。もしかするとクリスマスの「X」をイメージしているのかもしれない。
 それがクリスマスをイメージした体勢だとすると、彼女はとても可哀想だった。なぜなら、その体勢を取るためには、当然両足の形は決まってしまうからだ。
 彼女は無防備に股間をこちらに向けるような体勢になってしまっている。それはとても恥ずかしい体勢で、実際彼女はとても恥ずかしがっている様子だった。
 顎の下で足を交差させられている彼女は、自らの足が邪魔になって俯くことが出来ず、真っ赤になった顔をまっすぐ前に向け続けなければならなかった。
 一応この場所が会社のロビーだからなのか、ハイソックス以外の服を身につけていないわけではない。だけど、果たしてその服を、服のうちに入れていいのかは疑問だった。
 まず、まともな服ではないことは確かだ。彼女の晒された股間には、前張りのように四角い金属製の板のようなものが宛がわれていた。
 内側がどうなっているかはわからないけど、この倶楽部のことだ。前とお尻とそれから尿道を埋める突起が内側にあったとしても驚かない。
 むしろ箱詰めの間のお楽しみのために凶悪な形のものが入っていると考えた方が自然だろう。その前張りは全体が金色で、表面に「Merry Christmas」とメッセージが彫られていて、見た目はクリスマスらしい華やかなものだったけど、内側はさぞ凶悪な構造になっているに違いなかった。
 彼女が下半身に身に付けているのは、その金属の前張りと、ハイソックスのみ。箱詰めになっていなければ寒くて仕方のなさそうな格好だ。両足を交差した状態で固定しているのは、リボンのように見えるベルトの拘束具で、彼女自身がクリスマスプレゼントであることを示しているようだった。
 交差した両足が彼女の上半身を隠しているけど、上半身もそれなりの格好にされているみたいだった。
 まず、普通の服は一切身につけていない。乳房もほとんどが露わになっていて、股間と同じ金属の板のようなものが、乳房の丸みに合わせて張り付いている。
 まさかとは思うけど、その薄い板のような物に乳首を虐めるための仕組みがあったとしても驚かない。バイブくらいは仕込めそうだし。
 さらに、一番拘束が凄いのは彼女の首から上だった。
 まず、口を大きく開いた状態で固定する、緑色の開口具がある。開口具の奥でちらちら動いているのは舌だろうか。喉が渇きそうな状態だけど、箱の中に詰められているから言うほどではないのかもしれない。
 そして、その開口具のちょうど中心に垂れ下がるように、鼻輪に通された金色のベルがあった。少し揺れているのは、彼女が口で呼吸する際に空気がそこを通るからだ。耳を澄ませると、ちりんという涼やかなベルの音がほんの少しだけする。
 緑色の開口具は珍しいと思ったけど、その鈴があるおかげで意図は明白だった。クリスマスリースを模しているのだ。その下で交差する赤いハイソックスの「X」も合わさり、クリスマススペシャルと言ったところか。
 目隠しはされていなかったから、ばっちりと眼があってしまった。ゆでだこのように真っ赤になるのを見て、私は慌てて少し離れる。
 するとライトの光が箱を照らし、彼女の姿を隠してしまった。遠目から見れば、ただのクリスマスプレゼントの箱を模した飾りにしかみえない。
(……あれだけ透明度が高かったのに……投射できるのね)
 ただのプロジェクターでは、ガラスのように透明な物に映像を映し出すことは出来ない。つまり、なんらかの特殊な技術が使われているということだ。
 本当に相変わらず、この倶楽部は力を入れるところがどこか間違っている気がする。
(まあ、それを満喫しに来てる私がいえることじゃないか……)
 ツリーの下には他にもクリスマスプレゼントの箱がおいてあったけど、私は寄り道はそれくらいにして、受付の方へと向かった。

 私は箱詰めにされた者を見に来たのではなく、箱詰めにされにきたのだから。

 受付には、いつもの人が立っていた。ロビーをうろついていた私に声をかけることもなく、私の気が済むまで待ってくれていたのだ。
 彼女はいつもは、非常に真面目で有能そうな受付嬢なのだけど、今日は少し雰囲気が違った。
 というのも、イベントに合わせてか、いつもの制服ではなく、サンタ服を身に付けていたからだ。
 かなりきわどいミニスカと、明らかに布の面積が少ない上半身の服。にも関わらず両手と両足は丈の長い手袋とニーソックスに覆われている。そして、極めつけが白いふさふさのファーと、丸いボンボンが着いて、可愛さが強調されたサンタ帽を被っていた。
 なんともエロティックで、可愛らしい格好だった。彼女らしからぬ、とは思うけど、美人さんなので似合ってしまっているのがなんとも言いがたい。
 平静を心がけているようだったけど、酷く恥ずかしがっているのが真っ赤になった頬の様子から明らかだった。会社の方針には従わざるを得なかったのだろう。倶楽部の社長さんはひどくマイペースな方だと記憶しているので、押し切られたのかもしれない。
 受付嬢はカウンターの近くまで来た私に、いつもの丁寧なお辞儀をする。
「Merry Christmas.箱詰倶楽部へようこそ。本日はクリスマス限定イベントとして、愛しの方への『クリスマスプレゼント包装』および『輸送』を承っております」
 私はその言葉を聴いて、心臓がどくんと強く跳ねるのを感じた。

 今日はその『クリスマスプレゼント包装』をしてもらうために来たのだ。




 受付で必要な手続きを終え、私はいつものように箱詰プレイをしてもらう部屋に通されていた。
 慣れている私は、さっそく着ていた服を全て脱ぎ、ピアスや指輪といった装飾具も全てひとつの小さな箱の中に納めた。
「いつも当倶楽部をご利用ありがとうございます。コースは『クリスマス特別コース』、輸送先はご自宅ではなく、パートナー会員様のお宅でよろしいですね?」
 箱詰めにしてくれる従業員さんの確認に、私は頷いて応じる。激しく高鳴る心臓のせいで、上手く声が出なかったからだ。
 この倶楽部に私が嵌まるきっかけを作った彼とは、二人きりのクリスマスパーティを彼の家でする話はつけてある。驚かせるために箱詰倶楽部にお願いすることまでは言っていないけど、お互いの嗜好はよくわかっていることだし、半ば予想されてはいるだろう。
 けれど、それも含めてのクリスマスパーティだから、きっと彼も楽しんでくれるはず。
 体調やこれから行う箱詰めプレイの内容の最終確認を手早く済ませ、ついにその時がやってきた。
「まずは『中身』のデコレーションから行います」
 もちろんプレゼントの中身は、私自身だ。
 手渡されたのは、ロビーで晒されていた彼女も身に付けていた、ハイソックスだった。片足ずつ、それを履いていく。全裸にハイソックスだけ身に付けるというのは、なんともおかしな状態で、なんだかとても恥ずかしかった。全裸の方が恥ずかしくないというのも変な話だけど。足先が覆われている分、余計にむき出しになっている股間や上半身の頼りなさが浮き彫りになってしまうのだ。
 続けて着るように促されたのは、肘の上くらいまで覆うグローブだ。これも白いファーがついている赤いものだった。ただし、材質が少し違う。
「これ……ラバー……?」
「はい。薄いものですが、ちょっと爪でひっかいたりした程度では破れません」
 私が感心しつつもグローブに腕を通していくと、その先端の形状が変わっていることに気付いた。普通のグローブなら指の形に分かれているが、これはわかれていない。手の先は少し膨らんでいて、押し込むようにすると手首のあたりがちょうど窄まっており、ぴったりと密着してくる。
 手の先は手刀の形に固定され、細かな作業は出来なくなってしまった。両手を使えば、マグカップに注いだコーヒーくらいは飲めるかもしれないけど。
 もう片方のグローブは自分では身に付けられないので、従業員さんに手伝ってもらって身に付ける。手の先が両方封じられてしまった。
「次は、こちらです」
 そういって彼女が出してきたのは、あの金属の板のようなものだった。流線型の形はどこにフィットするのか、はっきりとわかる。
 そして、あのロビーではわからなかった、身体に触れる部分の構造は、おおむね私の想像通りだった。想像通りでないとすれば。
「お、大きくないですか……?」
 身体の内部に差し込むと思われる突起物が、明らかに外国人のそれに等しいサイズの大きさと太さをしていたことだろうか。
 私は拡張プレイをしているわけではないので、そんな太く大きなものが入るのか非常に疑問だった。
「ご安心ください。こちら少々特殊な素材で出来ておりまして……」
 彼女は外に面する側の、板の流線型の部分を軽く指先で弾く。すると、どういう仕組みなのか、太く大きなものだった突起物がみるみるうちに小さく細くなり、私でも楽々入るであろう小さく細いものに変わった。
「このように小さくして挿入することが出来るのです。挿入後は、そこにある何らかの液体を吸収し、大きくなっていきます。一定の圧力がかかればそれ以上膨らまなくなりますので、ご安心ください」
 ただのゴム製の張り子かと思えば、とんでもないハイテク道具らしい。突起物の数からなんとなく理解していたけど、どうやら吸収する液体はなんでもいいみたいだ。腸内に関しては、先に浣腸までしてすっきりさせているから問題ない。
「失礼します」
 従業員さんは私の前に跪き、その突起物のある金属の板を私の股間に添える。慎重に突起物と穴の位置を合わせ、ゆっくりと挿入していってくれた。あらかじめローションか何かを馴染ませていたのか、あるいは私の方の準備が万全だったからか、あっさりと突起物が私の中へと入ってくる。
「ふぁ……っ、んっ」
 柔らかくも確かな存在感を持つものが私の中に差し込まれる。従業員さんは手を離しているのに、私の締め付ける力を利用して突起物は自然と私の中に入り込んできた。
「うひゃぁっ!」
 思わず飛び上がったけど、その勢いでさらに奥まで突起物が入り込んで来た。あまりの刺激の強さに伸びきった足が震える。
 気付けば、金属製の板が私の股間を覆っていた。傍から見ると金属の前張りをされているだけのように見えるけど、私自身の身体はみっちりと入り込まれている感覚があって、正直、気持ち良かった。
「ふぅ、ふぅ……っ」
「落ちつかれましたら、こちらを着けさせていただきます」
 そう言って従業員さんが示したのは、丸い金属の輪っかだった。金色の小さなベルがついていて、ふたつでワンセットだ。私が頼んだオプションである。
「おね、がいします……」
 私は恥ずかしい思いを堪えつつ、両腕を後ろに回し、胸を反らして彼女に身体を晒した。その輪っかを取りつける場所については、簡単に予想が付くだろう。
 それは、乳首に取りつけるものだった。
 乳輪を含め、ピンク色の綺麗さに密かな自信を持っている私の乳首は、ここまでの作業ですでにしっかりと硬くなっていた。
 従業員さんがそんな私の乳首を挟むように、金属の輪っかを装着する。
「ひぅっ……っ!」
 鋭い快感が脳天まで貫いた。悲鳴をあげそうになるのを、喉元で抑え込んだ。私のぷっくり膨らんだ乳首を、金属の輪っかが挟み込んでいた。絶妙な力加減で保持されていて、穴をあけているわけでもないのに、そう簡単には取れそうにない。
 少なくとも箱詰め状態の私が暴れた程度の動きでは取れそうになかった。
 もう片方の乳首も輪っかで挟んでもらい、装飾は完了。身もだえする度にチリンチリンとベルが鳴る。
(クリスマスっぽいから……と思ってお願いしたけど……これ、かなり恥ずかしい……!)
 股間のそれのように乳首を彩る案もあったんだけど、なんとなく股間とは別の方式で彩りたいなんて思ったのが良くなかったかも知れない。
 彼以外に見せる気はないけど、あのロビーで箱詰めになっていた人みたいに、他人に見られたら恥ずかしくて仕方ないだろう。
 乳首への刺激が落ちついたところで、次は首輪だった。赤い皮で出来たそれは、犬の首輪というよりは、チョーカーの方が近いかも知れない。クリスマスを意識したデザインなのは間違いないのだけど。しっかりと首にフィットして、彩りを加える。
 さらに拘束具はあって、鼻下から顎までをしっかり覆うタイプの口枷が嵌められる。口は開いた状態で、噛みしめて固定するタイプのものだ。中央は丸い円筒形に穴が空くようになっていて、栓を抜けばいわゆるフェラチオも出来るようになっている。
 今回の場合はその栓にメッセージカードが丸めて納めてあって、到着後彼に引き出してもらって私からのメッセージを読んでもらうつもりだった。
 あと、輸送中不意に声をあげられないようにするための処置でもある。
「最後に、こちらを被っていただきまして……うん。とても素敵なクリスマスプレゼントになりましたよ」
 可愛らしいサンタ帽を被せてもらって、『中身』の下ごしらえは完了。
 いよいよ、箱に詰められる時だ。
 私は身体が特別柔らかいわけではないので、ロビーにいた人のような体勢は取れない。
 だから、あまり無理のないような体勢をお願いしていた。
 まず、用意された箱の中に入り、底にあぐらを搔いて座る。箱の大きさはかなりギリギリで、少し膝が浮いてしまうくらいだった。両手は胸の前で交差するようにして、自分の肩を抱くような形にする。
 そして、背中を丸め、膝と膝の間に身体を納めるように縮こまる。
「蓋を閉めますね」
 背中からうなじのあたりを圧迫されるように抑え付けられ、少し息が苦しいというくらいで固定された。ぎゅっと、身体を縮ませてじっとしていると、自分の鼓動しか聞こえない、いつもの箱詰めの空間が完成した。
 私は息を浅く速く繰り返しつつ、しばし箱詰めの快感を堪能する。あそこが濡れ、それを吸収した突起が身体の中で少し大きくなったことを感じる。
 喜んでくれるであろう彼の顔を想像しながら、彼が箱を開けたときには笑顔で顔をあげようと心に決めつつ、幸せな気持ちで瞼を閉じた。

 その後、『クリスマスプレゼント』を受け取った彼がどれほど喜び、そして二人がどれほど愛し合ったかは――語るまでもないだろう。


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