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白日陰影

箱詰系、拘束系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

肛門拘束(仮) 4

 前に屈んでも、後ろに反らしても、どちらかの穴が引っ張られる。
 秘部に入れられた方はゴム紐のせいで普通にしていても引っ張られてしまい、ただじっとしていることも許されない。
「よし、準備完了。いくぞ」
 肘の辺りを掴まれ、私は再び商店街を歩かされた。さっきよりもキツい。後ろだけなら平気になっていたのに。
 ふらつきながらも、なんとか耐えて歩く。体幹をまっすぐに保つことを意識して、必死に歩いた。
(うぅ……っ! ダメっ、前の奴が食い込んで来て……っ)
 ゴム紐の伸縮性自体はそんなに強くないはずだった。けれど、歩く度に中を満たしているそれの感触が走って、頭を震わせてくる。
 そしてそのことを意識してしまうと、つい秘部の中を締めてしまい、食い込んでいるそのフックの形をはっきり自覚してしまう。
 そしてそれと連動して、アナルの方にも力が入るので、慣れたはずのそっちの感触もさらに強く感じてしまっていた。
 それが嫌で前屈みになろうとすると後ろが引っぱられ、思わず仰け反るとまた前の方が食い込んでくる。
 前後の穴に与えられる感触に翻弄されつつ、顔や態度に出さないように懸命に歩く。そんな私の様子を、彼は楽しそうに見ていた。
「気持ちいいか?」
 こっそりと耳打ちするように聞いてくる。
「むっ、無理矢理穴を広げられているのよ? 気持ちいいと思う?」
 思わず憎まれ口を叩いた私に対し、彼は。
「そっか、じゃあ気持ちよくしてやるよ」
 そんな不吉なことを言った。
 その手には、ピンク色の、リモコンらしきものが。
「ま、待って……っ」
 それが何のリモコンかわからなくても、私は咄嗟に止めていた。それで彼が止めてくれることなんてないとわかっていたけど、言わずにはいられなかった。
 案の定、彼は応える代わりにそのリモコンのスイッチを入れる。
 それと同時に、衝撃が走った。前に挿し込まれたフック状の道具は、ただの張り子じゃなくて、遠隔操作できるバイブ機能付きだった。
「んくっ、ううっ……!!」
 思わずあがりそうになった声を抑えるようとして、思わず身体を丸めてしまう。
 そうすれば当然、肛門で銜え込んでいたアナルフックが引かれ、肛門が広げられる異様な感覚が走った。
「んぎい……っ」
「ほらほら、歩かないと不審に思われるぜ?」
 真横に立っている彼が、私を急かして促し、歩かせる。覚束ない足取りで、前に進むことを強制される。震動は止めてくれない。あまりに強烈な感覚に、いまにも気を失ってしまいそうだった。
 こんな普通の人たちもいっぱい周りにいる中で、秘部と肛門をフックに抉られながら、両手の自由もなく、震動による快感を与えられている。歩き方も不自然になっているからか、時折私の方を見て怪訝な顔をする人もいた。こそこそ内緒話をしているように感じるのは、自意識過剰だろうか。気づかれているのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
 そんなシチュエーションの異常さに、かえって興奮してしまうのだから、私も彼のことを変態とは言えなかった。

つづく

肛門拘束(仮) 3

 二個目のアナルフックなんて使ったら、肛門がとんでもないことになる。
「ちょっと待って! 二個目はいや!」
 抵抗しようとする私の肩に彼が手を置き、宥めるように言う。
「しぃっ! 静かに! 見つかったらやべーだろっ。後ろ用じゃねーよこれは」
 そういう彼は、真剣な目をしていた。確かにいくら同意の上とは言え、見つかったら説明も面倒だし騒ぎになると誤魔化すのも大変だ。私はぐっと口を噤みつつ、彼に視線で問いかける。「どういうこと?」という意思を込めて睨むと、彼は冷静な様子で説明を始めた。
「いいか? こいつは前に使う。こうして……」
 彼が私の首輪の前に紐を結び、服の中を通して下半身の方へと垂らす。
 服の裾から彼が腕を突っ込み、紐はブラジャーの下を通された。その紐はちょうど私のあそこに届くか届かないかくらいの長さになっているようだった。
「そんでもってこの先端にこれをつけて、だ」
 さっき見せられたフック型の道具を紐の先端に繋げると、ちょうど私のあそこにその道具の先端が当たる。ズボンとショーツの中に手を突っ込んで道具の位置を調整していた彼が、不意にニヤリと笑った。
「……一応、ローションも用意しておいたんだが、この濡れようなら必要ないな?」
「……し、知らないっ」
 彼に指摘されるまでもなく、私のあそこが十分濡れているというのは自覚していた。
 その場所に彼がフックの先端を擦れさせ、そこから溢れる液体をそれに塗りつけた。
「尻穴を抉られながら歩いてただけだっつーのに、こんなに濡らすとはなぁ。お前が変態で俺は嬉しいぜ」
「……っ、ばかっ」
 言葉で煽られて顔が真っ赤になるのがわかる。顔を隠そうにも、腕の自由が利かないからどうしようもない。
 そんな風に私を言葉で煽りながら、彼はフック型の道具の先端を、私の中に潜り込ませてくる。道具はそれなりの太さで、私の内壁を抉ってきた。
「……っ、くぅ……っ」
「よし、こんなもんか。離すぞ?」
 そう彼がいうのを、私はてっきり、「離すから道具を落とさないようにしっかりくわえ込めよ」的な意味だと思っていた。結構大きな道具だったし、紐が繋がっていて、ショーツで押さえているとはいえ、そのままにしてると落ちるのではないかと。
 けれど、違った。
「っ……!? んあっ!?」
 彼が手を私のショーツから抜いた瞬間――私の中に潜り込んでいたそれは、私の首輪を引っ張り、私のあそこを上向きに持ち上げた。
 首輪に結ばれた紐が、ただの紐じゃ無くて、ゴム紐であったことに、この段階まで気づかなかった。縮む力が強いのか、まるで彼に指をひっかけて持ち上げられているような、そんな錯覚すら覚える。
「痛っ……っい、ぎぁっ!!」
 思わず前屈みになりかけて、アナルフックのことを忘れていた。前屈みになろうとした分、アナルフックが引き上げられて、思いっきり肛門が歪むのがわかる。
 激痛に目の前に星が瞬いた。

つづく

肛門拘束(仮) 2

 私は家の中で十分だと言ったのに、外を歩こうと提案してきたのは彼だった。
 いくらぱっと見は普通に見えるようにしているとはいえ、首輪は丸見えだし、よく見ればそこから伸びた紐が服の下に潜り込んでいるのは見えているはずだし、肘同士を結んでいるリボンもよく見れば腕の自由を著しく制限しているのもわかるはずだし、変態的なプレイをしていることが、いつ誰かに気づかれるんじゃないかとひやひやものだった。
 そのスリルに興奮してしまっているのだから、私には彼のことを変態という資格はないのかもしれない。


 彼の背に隠れつつ、商店街の散歩を続ける。
 歩く度にわずかな震動がアナルフックを引き上げ、気にしないようにしても意識せざるを得ない。
 それ以上引っ張られないように背筋をまっすぐ伸ばすと、それに伴って突き出された胸が揺れるのが気になる。
 自慢ではないのだけど、私の胸はかなり大きい部類に入る。
 なので、背筋を伸ばして歩くと、ただでさえ大きなそれを強調しているような状態になってしまい、かなり恥ずかしかった。
 隠そうにも両腕は拘束されているから動かせない。
 結果として、私は羞恥に耐えつつ歩き続けなければならなくなっていた。
 彼の方はといえば、私が胸を突き出すような格好で歩くのが嬉しいのか、いつも以上に笑顔だ。このおっぱい好きめ。
 ただ、そのコンプレックス一歩手前にある胸に注目しているのは、確かに彼だけじゃなく、道行く人もそうだった。すれ違う人のうち、大抵の人が私の突き出された胸に視線が一瞬吸い寄せられているのがわかる。老若男女関係ない。
 幼すぎる子供は別として、やっぱり私の大きな胸は目立つのだ。それを突き出して強調しているわけだから、注目されないわけがなかった。
 いつもの私は前屈みになってそれを隠そうとするのだけど、いまはそれをすると肛門が引っ張られてしまう。
 さっきの衝撃を覚えている私としては、気を遣って歩かなければならなかった。
(ん……少し、慣れてきた、かも……)
 歩き方によっては常にアナルフックが引っ張られ、肛門が刺激されてしまっていたけど、だんだんどう歩けばそういった刺激を与えずに済むのかわかってきた。
 胸が強調される歩き方なのは変わりないので、恥ずかしさは変わらなかったけど、これなら十分歩き切れそうだ。
 それを意地悪な彼が許すわけもなかったけど。
「ちょっとこっち」
 彼はそう言って私の肘辺りを掴んで、狭い路地に入り込む。
 急に何をするのかと思っていると、彼は私が商店街側から見えないように自分の身体を盾にしつつ、ポケットからとんでもないものを取り出した。
「だいぶ慣れたみたいだからな。第二段階に進もうじゃないか」
 彼がそう言いながら取り出したのは、もうひとつのフック型の道具だった。

つづく

肛門拘束(仮) 1

 激しく高鳴る鼓動を服の上から抑えつつ、私は商店街を歩いていた。
 道行く人たちはいつもと変わらない。ここは元々人通りの多いところで、すれ違う人がどういう人か気にしている人はいないとわかっていても、私は皆が自分を見ているような錯覚に陥って、くらくらと目眩がした。
 前を歩く彼の背中に、つい密着してしまう。
「おいおい、歩きづらいだろ」
 そんな風に言ってくる彼は、言葉とは裏腹に顔は笑っていて楽しそうだった。
 元々こんなところを『こんな状態』で歩くというのは彼の発案だったので、私は少しむっとしてしまう。
「は、恥ずかしいんだから……盾になってよ……」
「はいはい。……でもやっぱ『そう』してた方が絶対良いって。割と視線集めてるし」
 その彼の言葉にぎょっとして、思わず背中を丸めそうになって――その瞬間、肛門が上向きに引っ張られて激痛が走った。
 それと同時に首も絞まって苦しくなる。
「んぎっ……ッ!」
 あげかけた悲鳴をなんとか飲み込み、ぐっと背中に力を入れて身体を反らす。そうすると肛門にかかる力が和らいで、少し楽になった。
 私のそんな動きを見てか、彼が呆れた顔を浮かべていた。
「おいおい、大丈夫か?」
「う、うるさい……っ」
 そう攻撃的に返してしまいつつ、私はなるべく体幹をまっすぐ保つように意識して歩く。
 いま、私の肛門には、アナルフックという道具が、首輪に接続された状態で挿し込まれていた。
 だから、少しでも背中を丸めると、それによってアナルフックが引っ張られ、激痛が走る状態になっているのだった。


 昔から知らず知らずのうちに猫背になってしまうのが悩みだった。
 猫背は身体にあまりよくないとも言うし、治したかったのだけど、中々治そうと思っても治せるものでもない。
 どうしたら治せるものかと悩んでいた時、付き合っていた彼氏がアナルフックを用いたプレイ兼荒療治を提案してきたのだった。
 ぶっちゃけ、半分以上は彼の趣味だと思うし、それに乗っかっちゃった私もどうかと思うけど。
 しかも彼の趣味で、私は左右のポケットに手を突っ込んだ状態から動かせなくなっていた。彼がワイヤーを使って手首の辺りをズボンに固定してしまったからだ。さらに左右の肘を細いリボンで背中側を通して結ばれているので、手を前に持ってくることもできない。
 転びそうになったら彼が助けてくれるとは思うけど、腕が自由に動かせない状態で歩くというのは中々スリリングな体験だった。
 拘束されている箇所は少ないけど、ろくに自由が利かないという意味では、あまり拘束の度合いに意味はなかった。

つづく

倶楽部の専属緊縛師

「『縄の日限定スペシャル企画・箱詰め縛りプレイ』……?」
 すっかり常連となってしまった箱詰倶楽部にやって来た私は、いつも通りのプレイコースを選択しようとしたが、カウンター上に置かれたそのチラシに目が吸い寄せられた。
 そんな私に対し、倶楽部の受付嬢が説明してくれる。
「本日限定でご提供させていただいているプランです。当倶楽部専属の緊縛師による、一風変わった箱詰めプレイが体験できますよ」
 箱詰倶楽部なのに専属緊縛師がいるのか。
 少し興味を引かれる。けど、お昼も回った時間なのに、希望者がでなかったんだろうか?
 その疑問が顔に出ていたのかもしれない。受付嬢は少し困った笑顔で説明してくれた。
「留意事項といたしまして……緊縛師の牧上は男性なのです」
 なるほど。それで得心がいった。
 この倶楽部の常連は、独り身の女性であることが多い。かくいう私もそのひとりだし。
 だからこそ、職員のほとんどが女性で構成されているこの箱詰倶楽部で、箱詰めプレイを楽しんでいるのだから、男性が相手なのは嫌という人も多いだろう。箱詰めプレイは全裸でやってこそ、と私も思うし、男性に見られたくない者が多く、この企画は人気が無いということか。
「普段牧上のプレイを受けておられる会員様たちは、本日はご都合が合わなかったようですね」
 なお、その人たちに関しては、後日都合の良い日に特別に企画と同じプレイを受けられるという話だった。
 限定企画の意味がない気がするけど、普段からプレイを楽しんでいる人たちが日程の都合で特別なプレイを受けられないのも可哀想だから、その辺は臨機応変に、ということなのだと思う。
 有情であると思うし、ニッチな性癖を扱う倶楽部である以上、ユーザーに寄り添う対応をしてくれるのはとてもありがたかった。
 それはさておき、だ。
「……つまり、まだ受けられるってことよね」
「はい。いかがなさいますか?」
 受付嬢への返答は、もちろん決まっていた。


 その部屋はこれまで私が入ったことのある、箱詰倶楽部の部屋のいずれとも雰囲気が違った。なんというか、厳かな雰囲気が感じられる。
 構造的には他の部屋と同じ、一般的なビルの一室、という感じなのだけど、部屋の調度品や壁にかけられた絵などから「落ち着いた和室」のような空気を感じさせる。
 その部屋の中心、作業台らしい机を脇に携え、その人は待っていた。作業台に並んだ縄だけじゃなく、この空間の雰囲気そのものを従えているような――部屋の主だと言われなくてもわかった。
「いらっしゃい、お嬢さん。私が今回縄かけを担当する牧上です。どうぞよろしく」
 牧上、という緊縛師は初老の男性だった。服装は和風だったけど、その人を表す言葉としては老紳士というのがしっくりくる。とても穏やかで、縁側でお茶を飲んでいるのが似合いそうだ。
 確か緊縛には吊りという趣向もあって、かなりの重労働らしいのだけど、このお爺さんはそういう肉体労働にこなれている感じはしない。
 けれど、不安を感じさせないだけの威厳が牧上さんからは感じられた。
「よ、よろしくお願いします」
 私が頭を下げると、牧上さんは深く頷いた。そしてなにやらバインダーに挟まれた紙の束らしきものを、眼鏡をかけながら目を通す。
「早速ですが、プレイ内容の確認を行いましょう」
「は、はい」
「本日は『箱詰め縛りプレイ』のご要望で間違いないですね?」
 私はこくりと頷く。内容の詳細は受付嬢に聞いているのだけど、俄には信じられない内容だった。
「着衣はなしでよいとのことですが、間違いありませんか?」
「その方が気持ちよいと聞いたので……大丈夫です」
 男の人に裸を晒すのは正直恥ずかしかったし、水着着用でも構わないという話は聞いていた。けど、この倶楽部には深い信用を寄せていたし、何より高い会員費を支払ってまでプレイをしに来ているのだから、どうせなら一番気持ちよくなる方向で箱詰めプレイを行う、というのが私が決めている方針である。
 こういう捉え方は職員さんに失礼かもしれないが、倶楽部の人たちは箱詰めプレイのための道具と思うことにしている。そうすれば余計な羞恥心に惑わされずに済むからだ。
 もちろんこういう考え方は外聞がよくないので、誰にも言わないけど。
 牧上さんは再度深く頷き、そして資料を置いた。
「わかりました。それではまずは身体検査を行います」
「身体検査、ですか?」
 どういうことだろう。私は首を捻った。怪我や持病の有無は倶楽部に提出した資料に書いておいたはずだけど。そう思った私に、牧上さんは丁寧に説明してくれる。
「緊縛において、重要なのは身体の柔軟性です。腕はどこまで捻って大丈夫なのか、関節の柔らかさはどの程度か、それらは人それぞれで全く違います。ゆえに、初めて縄かけを行う際には、まずその体質を調べさせてもらっているのですよ」
 要は、簡単な柔軟体操のようなものらしい。
 私は牧上さんの指示に従い、腕を後ろに回して捻って見たり、脚を振り上げたりして、身体の柔軟性を確認してもらった。プレイではなく検査だというのがはっきりしていて、牧上さんは必要以上に私の身体に触れなかった。ものすごく真剣な目で、私がどの程度肩を捻れるか、脚の筋肉の張りがどの程度かをつぶさに確認している。
 たまに断りを入れてから身体に触れてくることがあったけど、それも筋肉がどの程度張っているかを確認しているようで、全然性的な感じはしなかった。
 そんな真面目な検査が一通り終わり、私はひとつ息を吐く。
「お疲れ様です。それでは、着衣を脱いでください」
 どくん、と鼓動が一段階速くなる。
 検査の間のやりとりで、牧上さんに対する警戒心は拭い去られていた。その所作といい、声のかけ方といい、信頼して任せるに相応しい度量を持っていることが自然と伝わって来たからだ。己の仕事に絶対の責任と自信を持っているのがわかった。自分の身体を安心して任せられる。
 きっと、そこまで理解してやっているのだろう。色々おかしなレベルのプロフェッショナルが集まっている箱詰倶楽部で、専属緊縛師をやっているだけのことはある。
 私は着ていた服を脱ぎ、脱衣籠に入れて全裸になる。あまりスタイルに自信はないのであまり見られたくはなかったのだけど、牧上さんは淡々と準備を進めてくれていた。
「では、始めましょうか――『箱詰め縛り』を」
 亀甲縛りや高手小手縛りとかなら聞いたことがあるけど、『箱詰め縛り』は聞いたことがない。恐らくこの倶楽部に合わせて牧上さんが編み出したオリジナルの縛り方なのだろう。
 まず、牧上さんは恐ろしく長いらしいロープの、ちょうど中間の地点を私のうなじに合わせ、その長いロープを器用に使って私の胴体を縛っていった。
 速い。
 気づけば、私の上半身は亀甲縛りのような形で縛り上げられていた。縄の端がわからないくらい長い縄だというのに、あっというまに縛り上げてみせた。緊縛師としての技量を感じさせる。
(……ッ、すごい……ちょっと身体を捻るだけで……縄が身体に食い込んで……けど、痛くない)
 絶妙な力加減で縛られているみたいだ。
 亀甲縛りのような形、と思ったけど、よく見ると少し形が違うような気もする。詳しくないのでどこがどう違うかはわからない。
「さて、失礼しますよ」
 縄のことに注意が言っていて、牧上さんがそう呟くのが何のことか気づくのが遅れた。
 一瞬の内に牧上さんの手が私の股間を過ぎ去り、それに反応する前に、その場所に縄が食い込んだ。
「ひゃあっ!!」
 思わず悲鳴が口から零れる。股縄が通されていた。結んだコブが私のそこを刺激する。コブはご丁寧にクリトリス、秘部、肛門それぞれに接するように作られているようで、三点の刺激に思わずつま先立ちになって腰が浮いてしまう。けれど、背中側の縄に接続されたらしい股縄からそれで逃れられるわけもなく、無意味に背伸びをしただけに終わった。
 まだ両手両足は自由だというのに、私はすでに牧上さんによる緊縛に囚われていた。身体を揺するだけで、腰砕けになりそうなほどの気持ち良さが生じる。
「脚を揃えて、跪いてください」
 牧上さんに言われるまま、私は両足を揃え、その場に跪いて膝立ちになる。
 そこに牧上さんが手早く縄をかけていった。膝が合わせられて両足は微塵も開けなくなって、折り曲げた状態で固定される。三角座りの姿勢にされたかと思うと、胸が潰れるくらい密着した状態に固定され、私の身体で自由なのは両腕と頭だけになった。
 そして、ついに腕も拘束されるときが来た。
「両腕を交叉させて、自分の脚を抱くようにしてください」
 その交叉させたところに縄が十字にかけられ、私の腕は動かせなくなる。
 けれど手首から先は自由に動く。さすがに縄で指先の拘束までは難しいのだろう。
 完全拘束というには少し余裕があるかな、とその時は思っていた。
 牧上さんは腕を拘束した縄尻を用いて、私の脚の甲と親指同士を縛る。腕は割と自由な分、それ以外はもうほとんど動かせない。
 それにしても、だ。いまのところ牧上さんが他の縄を足した様子はない。
 つまり一本の縄でここまでの緊縛を施しているということで、それがどれほど高度な技術なのか、そもそも可能なことなのか、緊縛の手順がわからない私でも相当異常なのはわかった。
 しかも、だ。
「それでは、ここからが『箱詰め縛り』の本番です」
 そう。ここまではまだ前座なのだ――事前に聞いていた私でも信じられないことに。
 瞬きもせずに見つめているはずの私の目が追いつかないほどに、牧上さんの手は早かった。
 私の足先を縛った縄、そこからさらに超絶技巧が続く。
 民芸品などで藁で編んだ箱を見たことがあるだろうか。田舎の工芸品として有名なものがあるあれだ。
 牧上さんはそれを縄で作り始めた。私の足下から箱の底面が作られていく。そして私の身体を覆うように、四方の壁が編み上げられていった。
 有り得ないことに、牧上さんは私を閉じ込める箱すら、その縄で作ろうと言うのだ。
 縄師の技術ってこういうものだっけ、とか思ってはいけないのだろう。
 箱を編み上げつつ、時折そこを外れた縄が私の身体を縛る縄に接続される。もはや複雑怪奇とかいうレベルじゃなく、ずっと見ている私にすら何がどうなっているのかわからない。
 さらにその縄は私の指先にも絡んで来た。私は両方の手をパーの形で広げたまま、微塵も動かせなくなってしまった。正確には縄だから力を込めれば多少は軋むものの、とても「動かせている」状態ではない。
 縄で出来た箱の壁が私の目線の高さに編み上がるころには、私の身体で自由なのは頭だけになっていた。
 正直、まさか縄でここまで完全に拘束されるとは思っていなかったので、驚く……というか戦慄していた。そしてそれがまた全身に絶妙なテンションがかかって、気持ちいいというのだからとんでもない。
 縄に抱かれるとか、縄酔いとかいう言葉があるのは知っていたけど、私がいま感じている感覚はまさにそれだと思う。
 そして当然、ここまで徹底的に拘束されているのに頭が拘束されないわけもなく。
「口を大きく開けてください」
 牧上さんの指示で口を大きく開けると、少し変わった形の縄のコブが押し込まれた。そのコブから左右に伸びた縄が私の口を割り開き、猿ぐつわの代わりになる。
「ぐぅ……ム、ウ、ゥッ!?」
 思わず声をあげようとして、まったく言葉にならないことに気づく。どうやら押し込まれたコブが奇妙な形をしていたのは、完全に舌を抑えてしまうのが目的だったようだ。
 頭の後ろで縄が結ばれ、その縄がまた箱を編み込み始める。その位置が微妙に頭の高さより下だったので、私は自然と頭を下げざるを得ない。可能な限り小さくまとまっているような姿勢――要はいつも箱詰めのときになっている体勢に、自然と落とし込まれていた。
(っていうか、一本の縄で全身拘束から箱を編むってところまでやってるのがおかしいんだけど、どんな技術してんのこの人……!?)
 世の中には変態的な天才がいるものだ。
 やがて完全にひとつの箱が編み上がったのか、牧上さんの手が止まる。
「出来ました。……といっても見えてはいませんよね。映像に残してありますので、あとでぜひご確認ください」
 確かに普段はそこまで気にならないけど、どんな完成形になったのか純粋に興味はある。
 いまの私の視界には、何がどうなっているのかわからないほど複雑に絡め取られた自分の腕と足先くらいしか見えていない。
 軽く身体を揺すってみる。途端、全身の縄が軋み、絞り出されるような感じがした。
(うわっ、なにこれ……ちょっと、動かすだけで……全身を触られてるみたい……!)
 腕を動かそうとしても、脚を動かそうとしても、そこから全身の縄に刺激が走る。
 これはちょっと言い表しがたい感覚だった。
 そしてそれは股間に通された股縄にも刺激が走るということでもあり、じんわりとした刺激がとても気持ちいい。
 最初、バイブなどの道具は入れないのかと思ったことを恥ずかしく思う。
 縄だけで十分だ。
 十分な快感を得ることが出来ている。このまま揺りかごに揺られるように、眠れたら最高かもしれない。
 そう思っていた私は、正直、まだ牧上さんを侮っていた。
 なぜなら――牧上さんの『箱詰め縛り』は、まだ終わってなかったからだ。
「それでは、始めさせていただきます」
 私が「え?」と思う間もなく、不意に私の世界が傾いた。
 背中側が床の方向になり、重力の方向が変化する。
 箱がゆっくり倒されたのだと、理解した。普段箱詰めされている箱は、結構重めの物が多かったけど、縄で出来た箱ならそうやって上になる面を変えることも可能ということなのだろう。まさかこんな仕掛けがあるとは。
 上になる面が変わると同時に、私の全身を縛る縄の感覚も変化した。幾十、ひょっとしたら幾百にも施されたテンションによって、私の身体にかかる負担は変わらない。
 けれど、力の加わる方向が変化したことによって、私が覚える感触も大きく変化する。
「ムーッ!!」
 思わず身体を動かそうとすると、それによって強い刺激が生じ、私は私自身に責められる。
 とんでもなく気持ちいいけど、とんでもなく気持ちよすぎる。
 しばらく身体を震えさせ、全身から滝のような汗が流れたあとで、ようやく少し落ち着いてきた。これ以上何かされたら、おかしくなってしまいそう、そう思った。
 そんな私をあざ笑うかのように、世界が再び回転する。
 頭が下に、股間が上になるように。
 私の身体はひっくり返されていた。
 当然、またも力のかかる方向が変わって、ようやく慣れてきたと思った刺激が新たなものに変わって悶絶する。
「ンギィイイイイ!?」
「数分ごとに回転させます。その都度、変化する感覚をお楽しみください」
 恐ろしいことをさらりと言われた。
 つまりこの調子で私は数分ごとに変わる縄の感覚に翻弄され続けなければならないということだ。それは果たして、どれほどの快感になるのだろう。
 私の身体は自然と絶頂へと導かれ、そして大量の愛液を溢れさせた。
 逆さになっているため、じんわりと愛液の熱がおなかに広がっていく。

 箱詰倶楽部専属緊縛師・牧上さんの『箱詰め縛り』。
 その魅力に絡め取られ、次から緊縛箱詰めプレイを頼むようになるのは、また別のお話。


~倶楽部の専属緊縛師 おわり~
 
 
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Author:夜空さくら

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