FC2ブログ

白日陰影

箱詰系、拘束系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 1

 ヒトイヌ公園――本格的なヒトイヌ拘束を気軽に、そして大胆に体験できてしまうその施設。
 密かな愛好家が全国から通い詰め、時にサクラとしての野良のヒトイヌも放たれているこの公園。見学者として入場することもできるが、ヒトイヌを連れて、もしくは自身がヒトイヌとなって入ることで利用料が格安となるため、大抵の利用者はパートナーを連れて来るか、個人でヒトイヌを楽しみにくることがほとんどだ。
 そんな施設で働いている私は、現在とある珍しい利用者の受付をしているのだが、とても困ったことになっていた。
 その利用者は二人組だった。二人組の利用者は大して珍しいことではない。
 珍しいのは。
「前回は私がヒトイヌになったんだから、今回は女島さんがヒトイヌになるべきよ」
「この前のレポート提出を手伝ってあげたんだから今回は美雲っちがなって欲しい」
 その利用者がふたりとも女性で。

 そのどちらもが『相手をヒトイヌにして愛でたい』と思っていることだった。

 女島さん、と呼ばれた女性は栗色のショートカットが特徴的で、そのしなやかな肢体は新体操か何かをやっていたことを思わせる躍動的かつ健康的な身体だった。
 美雲っち、と呼ばれた女性は黒色のふわふわした癖っ毛が特徴的で、小動物チックな小柄な体型で頭のてっぺんが相方の肩までしか届かないほどの差がある。
 客観的に見れば、美雲という女性の方が体格もあって犬っぽい感じはするが、一方で女島という女性の方も中々いいヒトイヌになりそうだという印象がある。
 ちなみに女性二人の組み合わせの利用者は案外少なく目立つため、利用者や従業員の間では結構注目されている二人だったりする。
 こんな施設に二人連れだってやって来る時点で、相当以上に仲の良いふたりではあるのだが、どちらもパートナーをヒトイヌにして愛でたいという願望持ちであるというのが、二人の場合は大変問題のあることだった。
 実際どちらがヒトイヌになった場合でも、それぞれ絵になる姿ではある。
 ただ、この施設の利用回数や頻度から推測するに、そう気楽に来れる場所に住んでいるわけではないようで、その限られた来園回数のうち、どちらがヒトイヌになるかは非常に重要なことのようだった。
 いままでは交互になることで折り合いをつけていたようだが、今回は女島さんの方が譲らなかった。
「あのレポート、かなーり大変だったんだからね」
「うっ……て、手伝ってくれたのは感謝してるけど、それとこれとは別でしょう。最初に代わり番こに楽しむって決めたじゃない」
「……それは、そうだけど」
 じりじりと駆け引きが続いている。喧嘩というほどではないけど、どちらも譲る気はないようだった。
 受付を担当してる私としては、早めにどちらがヒトイヌになるか決めて欲しいものなのだけど。まあ、別に後ろに他の利用者が来ているわけでもないから、いいのだけど。施設的には良くないけど。
 なにぶん特殊な施設だから平日に利用者の受付が被ることは少ない。見学のみの人は別の受付があるし、こちらはあくまでヒトイヌになる人とそのパートナー対応の窓口なのだ。
 しかし、一応は受付であるのだから、その前で言い争い続けられるのも困る。
 その時、私の頭に天恵が降ってきた。
「……でしたら、お客様」
 私は二人に向け、ある提案をすることにした。
「どちらがご主人様となるか――ゲームで決着をつけてはいかがでしょうか?」
 興味を惹かれた様子で、ふたりの目がこちらを向く。
 私はふたりに向け、そのゲームの内容を説明する。

 題して、『ヒトイヌ拘束脱出ゲーム』。

つづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 2

 この公園ではたびたび大規模な催し物を行っている。
 公園にはフリーのヒトイヌやご主人様希望の利用者が集まるが、常に大盛況というわけではないため、公園側で集まる機会を設けないとすれ違って会えない場合が多いからだ。
 イベントとして公園側が日時を区切ることによって、触れあいを求める利用者が集まりやすくなり、逆に触れあいを希望しない利用者はその日を避けることで気楽に楽しむことができる。実際、このイベントを通してパートナーを得たパターンは多い。
 今回私が女島さんと美雲さんに提案するゲームは、このイベントで実際に行われたもののひとつだ。ふたりはすでにパートナーがいる身だし、お互い以外に触れあう気がなかったようだから参加していなかったみたいだけど。
 私はふたりを支度室に連れて行き、準備を進めてもらいながら説明を始める。
「それではゲームの内容についてご説明させていただきます。簡単に申し上げますと、これからおふたりにはヒトイヌ拘束状態になっていただきます。その拘束からの脱出を、お相手より速く目指すのです」
 内容はいまだ明確でなくとも、勝負事だということであることは確かなためか、ふたりは真剣な表情で私の説明に耳を傾けている。
 服を脱ぎながら。
「拘束具はすべて鍵を用いて固定いたしますので、おふたりにやっていただくことはこの公園内からその鍵を見つけ出して拘束具を外す、ということになりますね」
 女島さんはその健康的な張りのある肌に、タンクトップ型の日焼けが残っているのを惜しげもなく晒す。運動するにはさぞ邪魔であろう大きさの双丘が揺れている。着やせするタイプ、というか、着ていたのがスポーツブラであったのが大きい。それから解放された女島さんの乳房は、重力に逆らって綺麗な形を維持していた。
「鍵は公園内のどこかに隠させていただきます。ヒトイヌ拘束の状態で取れないような場所には設置しませんのでご安心ください。拘束具の鍵はこのように……」
 私は一番わかりやすい首輪を取り出した。それを自分の首に巻き付けると、自動的に鍵が閉まる。この状態だと外せないことを軽く示してから、鍵を手に取る。それは一般的にいう鍵の形をしていたけど、それは首輪に触れさせるだけで首輪の鍵が外れて落ちた。空中で首輪をキャッチする。
「と、触れさせるだけで拘束具を外すことができます。落ちた拘束具は後ほど従業員が回収いたしますので、そのまま放置していただいて大丈夫です」
 美雲さんは小柄な体格に相応しくというべきか、なだらかな曲線を描く輪郭をしていた。女性らしくないというわけではなく、むしろ女性らしいのだが。こちらはまったく日焼けしておらず、人形のように白い肌が特徴的だった。日焼けしていないのも相成って華奢に見えるが、室内トレーニングはしっかり積んでいるのか、脆弱な様子はない。パートナーとの触れあいには体力がいるから、そのためかもしれない。
 つくづく、本気でお互いを愛し合いたいふたりなんだと実感した。
「ゲーム中、お二人にはこの犬耳を装着していただきますが、この犬耳には状況をお知らせするためのスピーカーが取り付けられています。そこから流れますアナウンスを参考に鍵を探してみてください」
「……なるほど、面白いじゃない」
「……絶対負けない」
「それと、敷地内には様々な形でお助けポイントがあります。そこで課される条件をクリアすればゲームに有利になりますので、挑戦してみてください」
 ただし、と私は釘を刺す。
「くれぐれもご無理はなさいませんように。人によっては嫌悪されるような条件もございます。仮にその場所での条件をクリアできなかったとしても、それが理由で即座にゲームに敗北するような致命的なことは起こりません。あくまでお助けですので、得られれば幸運程度にお考えください」
 こう言っておかないとパートナーとの対抗心のあまり、生理的に嫌悪するような条件にも挑んでしまいかねない。そのあたりは自己責任ではあるのだが、それでこの公園自体の印象が悪くなるようなことがあってはならない。
 一応この二人が対象ということで、生身の男性相手のお助けポイントは予め排除してあるが、念には念を押しておいた方が良い。
 ふたりが頷くのを確認してから、私は次の段階に移ることにした。
「それではこれからお二人にヒトイヌ拘束を施させていただきます。区別のため色は違いますが、全く同じ拘束ですので、有利不利はありません。ご安心ください」
 裸のふたりの前に、大量の拘束具が運び込まれてきた。

つづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 3

 ふたりの前に用意された拘束具は、基本的なヒトイヌ拘束に必要な道具ばかりだった。
「まずはこちらのラバースーツを来ていただきます」
 首から下の全身を覆うラバースーツ。
 女島さんが青色、美雲さんが赤色のラバースーツを身につけていく。ふたりのサイズにぴったり合うように作られているため、背中にあるジッパーをしっかりうなじまで引き上げると、彼女たちそれぞれ特徴のある身体のラインをはっきりと浮かび上がらせる。股間には最初から穴が開いていて、一番大事な部分を隠せていないのだが、ここはあとで別の器具で塞ぐので問題なかった。
 このスーツは手の先端が丸く作られていて、拳を作った状態から動かせない。そのため、これ以降彼女たちは手先を使った作業ができなくなる。私はもうひとりの手伝いの女性職員と一緒に、ふたりの着付けを同時に手伝っていく。
 まずは両手・両足の拘束だ。
 普段はベルトなどを使って固定するけど、今回に関してはよりハイテクなものを用いることになる。
 手首と腕の付け根、足首と足の付け根に金属製の枷を取り付ける。四つん這いになってもらい、それぞれの枷が接するまで腕と足を曲げてもらった。するとそれらの枷はそれぞれ左右で吸い付き、女性の力ではとても外せない力で動かせなくなる。
 肘と膝にはその枷に繋がるような形でクッションを取り付け、手かせ足かせが外れれば自動的に外れる仕組みだ。これで枷が外れるまで、二人は強制的に四つん這いで動かざるを得なくなる。
 続いて取り付けるのは、顔の下半分を覆う開口具だった。マウスピースのように上下で分かれるようになっていて、物を多少は咥えることはできるけど、舌を抑えてしまうのでまともに喋ることはできない。犬の顎の形に近付くように多少出っ張っているため、多少がんばればゴムボールくらいなら咥えて運ぶことができるはずだ。
 続いて、髪の毛が邪魔にならないように、軽くまとめてヘアバンドで固定する。さらに容易なことでは外れないヘッドホンを耳に被せる。このヘッドホンには例の犬耳がつけられるようになっていて、ここから流れる実況音声が二人の行動の指針となる。本来の耳がヘッドホンで隠されたことにより、より二人の姿は犬に近付いた。
 だいぶ犬の姿に近付いてきた二人。二人は互いをヒトイヌにして愛でたいという趣味の持ち主だが、自分たちがヒトイヌになることに忌避感があるわけじゃない。
 そのため、徐々にヒトイヌに近付いていくにつれ、その呼吸が荒くなり、頬が赤くなっているのは明らかだった。本当は二人を同時に管理できるご主人様がいればいいのではないかとも思うが、二人がそれを求めていない以上、公園側からはプレイ環境を提供することだけに徹するべきだった。
 さて、ここまででも十分にきつい拘束だけど、いよいよ重要な部分の拘束に取りかかる。
 と、その前に。
「お二方、排便の方は済ませておいででしょうか?」
 そう問いかける。普通ペットプレイを行う場合、ヒトイヌになる方は予めそういったことを済ませてからくることが多い。二人も普段はそうしているはずだった。
 けれど、今回はお互い相手をヒトイヌにしようと考えていたはずで、その準備をしていない可能性がある。
 無論、事前に準備していなくても公園ではそういう処理もできるため、来てからやる人がいないわけではないのだけど。
 果たして今日の二人はというと、それぞれ気まずそうに首を横に振ったのだった。
「いかがいたしますか? 処理なしでも可能ではありますが……排泄していない場合、相応のリスクがございます」
 便が溜まっているところにヒトイヌ用の尻尾を挿入した場合、腹痛を起こしたり、催したりという弊害が起きることが考えられた。そのことはふたりには説明済みなため、どんなリスクかはふたりもよくわかっているはずだ。
「無論常時モニタリングはしておりますので、体調の悪化で危険と判断した場合はゲームを中止いたします。その場合は中止になった原因を作った方の負けということで……」
 二人はぶんぶんと首を横に振った。
「私どもの手で処理させていただいてもよろしいでしょうか?」
 その提案に、二人は少し躊躇いつつ、目と目を合わせてから揃って頷いた。目と目で会話できる辺り、張り合いはしても本当にこの二人は仲がよいのだと思う。
 ともあれ、承諾は得た。
「それではこれより浣腸を施させていただきます」
 そう言って私はふたりを連れてトイレへと移動する。
 実際のところ。
 私たちの手で処理をする必要は無く、拘束を始める前にトイレに行っておいてもらえばいいだけのことだった。それをあえて拘束してからの順序にしたのは、ふたりに第三者からの干渉に慣れてもらう、という密かな公園側の目論見があったりする。
 二人は利用者であり、二人の要望は最大限叶えるべきだ。けれど同時に、利用者自身もまた一種の客寄せ要素の一つである以上、できれば色々な人と交流してくれる方が公園側としてはありがたい。
 どうしてもダメそうなタイプもいるが、ふたりは慣れれば第三者との交流も可能になるのではないかと期待されている人材だった。
 そのため、決して強制的な誘導はしないが、徐々にそちらの方向になりうる誘導を行うことが公園側の方針として決まっているのだ。
 排泄処理を従業員を介して行うのも、その一環である。迂遠ではあるとは思うが、そういう細やかな企業方針でやっていけているようなものなので、従業員のひとりである私もそれに従って行動する。
 処理自体はあくまで事務的に、淡々とこなし、二人に必要以上の羞恥心を与えないようにしつつ、第三者の存在に慣れさせる。
 再び部屋に戻ってきて、お腹の中がすっきりした二人に用意したのは、巨大なギミック付きアナルバイブだった。

つづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 4

 このヒトイヌ公園におけるアナルバイブの存在は大きい。
 ヒトイヌに扮するためには尻尾の存在が何より不可欠であるし、それはヒトイヌとなる者の意思によってある程度動かせるのが望ましいとされている。
 加えて、ヒトイヌ拘束によって不自由な状態でも、自由に動かせ、かつ快感を得ることできるその部分の存在は、とても重要なのだ。
 そのため、この公園独自に作られたアナルバイブには、様々な機能が搭載されている。
「今回お二人に着けていただくアナル尻尾バイブは、このゲームのために作られた特注品です。基本的な機能の他に、様々な補助機能が搭載されています」
 基本的な機能とは、挿入後容易に抜けなくするためのバルーン機能。
 本人が括約筋を締めたり緩めたりすることで、外側に取り付けられているふかふかな尻尾が左右に揺れたり、まっすぐ立ったり丸まったりする感情を表現する機能。
 そして、体内に潜り込んだ部分が伸縮したり、震動したりして快感を与える愛撫機能などだ。
 それらの基本機能以外にも、このアナル尻尾には機能が搭載されている。
「一つは、遠隔でバイブの愛撫パターンを変更できる機能です。これは後ほど膣内に挿入させていただくものにも搭載されています。……これがゲームにどう活かされるかは説明せずともおわかりでしょう」
 遠隔で操作できるということは、一緒に行動していない相手に対して影響を与えることができるということ。つまり、ゲームの中には相手の身につけているバイブを操作するものもあるのだ。それを用いて相手を快楽に浸してしまえば、勝利に大きく近付くことになる。
 逆にそれを防ぐための手段も用意されているが、それに関しての説明はゲームが開始されてからだった。
「もうひとつは……いえ、これは実際に用いられる時のお楽しみとしておきましょうか。少なくとも健康には配慮された作りになっておりますので、ご安心ください」
 もうひとつの機能の説明はこの場ではしないことにした。彼女たちがその機能を使うかどうかはわからない。ふたりの傾向からすると使わない可能性も高かったし。
 私はふたりのお尻にアナル尻尾を装着する。ふたりは敏感になっているそこに異物を挿入される感覚に、声を殺して身悶えていた。バルーン機能を使って身体の内側で膨らませると、もう尻尾は抜けなくなる。
 思わず強く締め付けたのか、二人の尻尾がまっすぐ立ちあがった。すでにヒトイヌの状態はほとんど完成していたけど、こうして尻尾をつけるといよいよ犬に見えてくるのだから、やはり尻尾は象徴的で重要だ。
 続いて手に取ったのは、金属製のブラジャーのような形をしたものだ。それをラバースーツの上から二人の胸に被せるように装着する。
「こちらのブラジャーの内側にはマッサージ用の震動パッドが仕込まれています。アナルバイブと同様、遠隔操作出来るようになっております」
 つまりゲームにおけるお邪魔用アイテムというわけだった。本当は素肌に直接着けた方が効果が高いのだけど、ゲームの性質上、ルート次第で外せるようになっていなければならない。
 上から着けるという形にすることで、『ラバースーツから解放されるためにはそれも外さなければならない』という形になることが重要でもあることだし。
 ふたりがこれまでこの公園でやって来たプレイで、ここまで厳重に拘束され、責め具を取り付けられたことはない。ふたりの顔に不安が滲み出すのを、私は見逃さなかった。
「それでは最後の器具を装着させていただきます」
 最後、と強調することでそれさえ我慢すればいいという気持ちにふたりを誘導する。もとより対抗心を燃やすあまりこうなっているようなものなので、こういえばふたりは相手よりも先に根をあげるわけにはいかないと奮起してくれる。
 最後の器具、つまりは膣に入れるバイブを取り出してきてふたりに示す。
「こちらのバイブにもこのゲーム特有の機能がございます。このように……」
 私はふたりに装着する予定のバイブの、彼女たちに挿入する側とは反対側の端同士をくっつける。すると、二つのバイブは繋がって双頭バイブのような形になった。片方の挿入部は太くなり、もう片方の挿入部は一定の太さを保つ。
「どちらが太くなるかは、ゲームの結果次第となります」
 これによって、ヒトイヌ状態のままでもどちらかが相手を犯す――否、責めることが可能になるのだ。
 ゲームの展開次第ではなかなか重要な意味を持ってくる機能である。
 挿入するためにふたりの膣の様子を探ってみると、これまでの拘束による影響か、ふたりともすっかり濡れていた。それぞれ相手を責めたいという意識はあるとはいえ、本質的にはマゾ寄りなのでは無いかと思う。
 それを潤滑油とするべく、バイブをそこに擦りつけるようにして刺激すると、さらに奥から愛液が零れてくる。呻いて喘ぐふたりの……いや、二匹の痴態を眺めつつ、程よく馴染んだところでバイブを挿入する。
 二匹のヒトイヌはすでにかなり出来上がっているようで、がんばって快楽を堪えている様子だった。
「お疲れ様でした。準備完了です。それでは改めましてゲームのルールを説明させていただきます」
 言いながら場所を移動するため、二匹の首にいつもの首輪をつけ、そこにリードを繋いだ。場所を移動しながら説明を続ける。

つづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 準備編 おわり

 公園に出ることの出来る扉までの、建物内の廊下は広く作られている。
 ヒトイヌ状態のふたりが並んで進める程度には、その廊下の幅は広かった。
 このふたり、美雲さんと女島さんはヒトイヌになるのが初めてではないため、肘と膝を使った四つん這いでの移動もスムーズに行っている。ただ、今日は普段より身に纏っている拘束具が多いため、少し動きにくそうではあった。
 私は二人の首輪に繋いだリードを持ってはいるものの、テンションをかけないように注意していた。そういう立場でない人間がテンションをかけて引くと、それは虐待と変わらない。
 リードを装着したのはあくまで雰囲気作りの一環なので、それを用いて苦しみなどを与えてはいけないのだ。このようにヒトイヌ公園の従業員には接客規定がある。それに違反した場合は「一定期間ヒトイヌとして従事する」のような罰則もあるので気をつけなければならない。
 慎重に二匹を誘導しつつ、私は説明を行う。
「まずゲームの最長時間は五時間を設定しています。その時間が過ぎても決着がつかなかった場合、引き分けということで、残りの時間はお二人ともヒトイヌ状態で過ごすことを提案させていただきます。ゲーム終了段階でヒアリングを行いますので、その時の状態によってご判断ください」
 正直な話、公園側としては二人には時間いっぱい二匹のヒトイヌとして動き回ってもらい、引き分けでそのまま二匹ともヒトイヌのままで過ごしてもらうのが都合が良いのだが。
「ゲームの勝利条件は拘束具をすべて外すことです。手枷、足枷、前後のバイブ、胸部サポーター、開口具、そして首輪。全部で7つですね。それを相手よりも先に外すことで勝利となります」
 ただし、と私は付け加える。
「ゲーム終了までは移動は四つん這いのままするようにしてください。でないと足枷を外した段階で有利不利が出過ぎてしまいますから」
 ヒトイヌの二足歩行の禁止はヒトイヌ公園の基本でもある。
「高いところにあるものを取る時に関しては、後ろ足で立ち上がることは可能です。いずれにせよ常時モニタリングはしておりますので、禁止事項に触れそうになった場合は警告させていただきます。その場合は速やかに指示に従うようにしてください。度重なる不正行為は失格となり、ゲームに敗北することとなります」
 二匹のヒトイヌは真剣に話を聴いている。普段は仲のいい二人だけど、互いへの対抗心は強い。これは良いゲームが行えそうだ。
「敷地内は自由に移動していただいて構いません。鍵の隠し場所は敷地内のどこか、ヒトイヌの状態でも取れる場所にあります。鍵をひとつ見つけるごとに他の鍵の在処に関するヒントをお伝えしますので、まずは一つ目の鍵を探しやすいところから探すのをおすすめします」
 そこまで説明して、私はゲーム上、最も重要なルールを二人に伝えた。
「なお、拘束具の解放タイミングは任意で選択することができます。鍵を見つけた際、『その場で外す』か、『次の鍵を見つけるまで保留するか』です」
 ふたりは不思議そうに首を傾げる。次の鍵を見つけるまで保留する意味がわからなかったのだろう。当然、そのふたつには違いがある。
「『その場で外す』を選択した場合は次の鍵の在処のヒントは通常のもので、たとえば『ヒトイヌが走って遊ぶところ』のような抽象的なものになります。ですが、『次の鍵を見つけるまで解除を保留する』を選ぶと大ヒントとして、鍵のある場所を『運動場の北の端』のようにほぼそのまま知ることができるのです」
 これは、簡単に拘束具を解かれないための処置であった。
 拘束から解放されるためのゲームなのだから、拘束を解いていくのは仕方ない。しかし同時にこの公園はヒトイヌ公園であり、参加者にはなるべくヒトイヌの姿のままでいて欲しいのも事実。単なるラバースーツを着た人間の四つん這いを見たい客が集まっているわけではないのだから。
 この辺りの議論は首脳部でも散々交わされたらしく、ゲーム性を高めつつなるべくヒトイヌ姿を維持する方法として考案されたのが、この解放タイミング選択式だった。
 特にこのふたりの場合は、相手との一騎打ちだ。鍵を探すタイムロスはなるべく避けたいはず。拘束を外して機動力を増すよりヒントを得る方を優先するだろう。
「なお、保留した拘束具の解放は次の鍵を見つけるまで行えないことにご注意ください。また、次の鍵でも拘束具の解放を保留した場合は、その前の拘束具の解放も一緒に保留されます。任意の拘束具の解放のみ行う、ということはできません」
 そこまで説明したところで、扉についてしまった。そこで立ち止まる。
「最後に、ゲームの『お邪魔要素』に関してご説明させていただきます。現在、この公園内にはお二方と同じようにヒトイヌとなって遊んでおられる方が十数名いらっしゃいます。その方々に取り付けている首輪に近付くと、お二方に取り付けた責め具が稼働するようになっております。その強さは周りにいるヒトイヌの数によって変わります」
 つまり、ヒトイヌが集まるような場所に行けばそれだけ責められる頻度は高まる。
 それを踏まえて二人は行動を定めなくてはならない。我慢して行くか、それともなるべく他のヒトイヌと合わないルートを選ぶか。ふたりがどんなルートを選ぶのか、非常に楽しみだ。
「それ以外にも装置が起動する条件はございますが、それらは実際に探索していただいた方が早いでしょう」
 私は言いながら扉を大きく開いた、野外の風が吹き込んでくる。ふたりの首輪からリードを取り外し、手にまとめた。
「それではこれより、ヒトイヌ拘束脱出ゲームを始めます。3、2、1……」
 ふたりの、いや、二匹のヒトイヌが解き放たれる。
「ゲーム・スタート!」
 私の合図と共に、二匹は競い合うようにして公園内へと飛び出していった。

準備編・おわり
探索編につづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 序盤編 1

 利用者がヒトイヌとなって遊ぶヒトイヌ公園――その一角に存在するモニタールームで、その様子は監視されていた。
「女島号と美雲号、公園内に解放開始しました」
 公園内でのヒトイヌの呼び方は色々だ。
 本名に「号」を付けて呼ぶこともあるし、本人の希望でヒトイヌ用の名前を持つこともある。
 今回は競技性を意識し、それぞれの名前に「号」を付けて呼ぶことになっていた。
「モニター1番を女島号に、モニター2番は美雲号に合わせろ。モニター3番は公園の全体マップ。他のヒトイヌの場所は赤点で表示」
 モニタールームの大きな画面の内、1番から3番が指示通りの映像を映し出す。
『さあいよいよゲームスタートです! 二頭のヒトイヌが一気に飛び出していく-!』
 実況担当の職員がノリノリで解説を交えながら実況をしていた。
 それを聞くとはなしに聞き流しつつ、裏方の仕事が主な男性職員は、のんびりと呟いた。
「……さて、どちらが勝つかな」
「女島号の方が有利だとは思いますね。普段の傾向からすると、運動量が違います」
 ヒトイヌ公園は広い。どうしてこんな広い敷地を確保できたのかと思うほどの広さがある。普通に人間として歩くだけでも、公園内を移動するのは一苦労だ。
 ましてや、四つん這い状態でしか動けないヒトイヌなら、なおさらである。
 下手をすれば移動するだけでタイムアップという可能性もあった。
「実際、事前予想では女島号有利ですね」
 ふたりのゲームの様子は、会員専用チャンネルで予想ゲームとして公開されていた。
 現金はかかっておらず、公園内での施設の利用に関する無料チケットなどがもらえる体だ。女島と美雲のデータは本人が特定できないように提示されており、それを見て観客は勝者の予想をしている。
「どれどれ……ふむ。突発企画にしては十分な観客数だな」
 企画自体は元からあるもので、準備などはさほど多くない。
 多数のヒトイヌが参加するならともかく、二頭のヒトイヌだけなため、突発でもギリギリ放送する準備が間に合ったという状態だ。
「たぶんこれからもっと増えますよ。いまはたまたま時間の空いていた人が見ているだけでしょうから。会員向けのメルマガで開催告知は回しましたし」
「女島号と美雲号にも、終わったら映像を見せて差し上げないとな」
 基本的にヒトイヌ公園内は撮影しているものとして、最初に許可を取ってある。
 今回のように特別に企画として放映するのは珍しいが、基本的には撮られているのは承知の上で、利用しているのだ。それは公園側の都合だけではなく、利用者同士のトラブル防止のための処置でもある。
「盛り上がりますかね?」
「わからんが、そこは二頭に頑張ってもらおうじゃないか」
 突発で始まっただけに仕込みはほぼない。意図的な盛り上がりを作ったり、サクラを仕込んだりもしていないわけで、もしかすると地味な試合展開のまま終わる可能性もあった。
 とはいえ、大体の利用者はヒトイヌが健気に動き回っている映像だけでも楽しんでみてくれるだろうから、無理に盛り上げる必要はない。
 それでもできるならハラハラドキドキ、楽しんでみられる試合展開を見せて欲しいというのが、運営者側の偽らざる本音だった。
『おおっと? これはすごい――!』
 実況者が興奮気味に声をあげたのを聴き、モニターの監視に戻る。
 モニターの中では、身体能力に定評のある女島号が、さっそく勝負をしかけていた。

つづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 序盤編 2

 ヒトイヌになった美雲っちを愛でるつもりが、なんで二人ともヒトイヌになっているんだろう。
 私はいまさらながら妙な状況になってしまっていることに気づいたけど、いまさらやっぱりやめるなんてことが出来るわけもない。
 ゲーム、といえども勝負ごと。つまりは試合。
 小・中・高と体育会系の部活で過ごしてきた私は、例え練習試合だろうとミニゲームだろうと決して手を抜かないことを信条にしてきた。
 だから、この珍妙な『ヒトイヌ拘束脱出ゲーム』に対しても――常に全力だ。
(美雲っちはインドア派……普段の運動量から言っても、私が圧倒的有利だけど、それは手を抜く理由にはならない!)
 私は短くなった手足を動かして、転ばないように注意しつつ、一気に美雲っちを引き離す。
 ヒトイヌ拘束で動き回るのは初めてじゃない。本物の犬のような速度はでなくとも、普通の人がは綾歩きする程度のスピードは出ていた。
 一歩脚を先に進めるたびに、全身のラバーがギチギチと軋む。
 自慢じゃないけど大きなおっぱいが、ブラに抑えられているとはいえ、揺れているのがはっきりわかって少し恥ずかしい。足を前後に大きく動かす度に、股間に埋め込まれているものの存在をはっきり意識してしまい、つい足を開き気味にしてしまう。
 不自由な体を激しく動かしていると、すぐに息があがってしまう。鼻呼吸は穴が空いているとはいえマスクに遮られて、熱い吐息が一部戻ってきてしまって苦しい。だから口で呼吸する方が楽なのだけど、そうすると体勢的に涎が垂れて来て、舗装された遊歩道に涎の跡が残ってしまう。
「ハッ、ハッ、ハッ……」
 呼吸音だけ聞けば、犬のそれと全く変わりがない。自分がヒトイヌという存在になっているのだという自覚を強制されてしまう。
 私はトリップしてしまいそうになる自分を戒めつつ、ひたすら両手両足を動かした。体中に汗が滲んで、ラバースーツと擦れる音がさらに大きくなる。汗をかいてスーツ内が蒸れる。熱が籠るのである程度進んだら適度に休まなければならないだろう。
 しばらく無心で遊歩道を走っていると、突然、胸と股間の器具が小さく振動し始めた。
 はっとして遊歩道の先を見やると、一頭のヒトイヌが飼い主さんらしき男性にリードを牽かれて歩いているのが見えた。
(そういえば他のヒトイヌに近づくとバイブが振動するって言ってたっけ……!)
 私は慌てて遊歩道を外れて、大回りしてそのヒトイヌをやり過ごす。
 真横を通る際、私に気づいた飼い主さんが、私に向けて手を振ってくれた。
「がんばれー、負けるなよー」
 当たり前だけど、他の利用者さんには私たちのことが通知されているみたいだった。私は恥ずかしくなって赤くなった顔を俯けつつ、素早くその場を離れる。
「うおっ、はやっ……ミチルもあれくらい動けるようにならないとな」
 遠ざかりながらも、私の動きを見て感心したのか、そんなことを男の人が話しているのが聞こえてきた。褒められて悪い気はしない。
 運動しなれている私を基準にするのは可哀想な気もするけど……それは彼と彼女の決めることだ。
 無事やりすごすと、胸と股間のバイブが止まった。距離があったからささやかな振動だったけど、危うく快感に流されるところだった。
 勝負はまだ始まったばかりだ。
 私は疼き始めた心地よい感覚を体の奥に押し込め、目的の場所を目指して再び動き出す。

つづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 序盤編 3

 ヒトイヌになった女島さんを可愛がるつもりが、なんで私までヒトイヌになってるんだろう。
 職員さんに乗せられてしまった感が強いけど、いまさらやめるということもできない。女島さんほどではなくとも、私も結構負けず嫌いではあったからだ。
 それに、普通の競技なら私が女島さんに勝てる要素はないけど、このゲームであれば勝てる可能性があるというのも、つい乗せられてしまった理由だった。
(とはいえ……やっぱり女島さんはすごい)
 私はすでに遠くに行ってしまった女島さんを見た。本当に体力馬鹿なんだから。
 ヒトイヌ拘束を施された状態であんなに速く走れるなんて、女島さんくらいじゃないかしら。飼い主である私にとっては自慢できることだったけど、勝負の相手としては非常に分が悪い。
 普通のかけっことかだと絶対に勝てなかっただろうから、この形式の勝負で良かったと思う。上手くすれば女島さんを出し抜くことも可能なはずだ。
(……でも、女島さん大丈夫かな。あんなに走って……いくら運動しなれてるとは言っても)
 ラバースーツの中は結構蒸れる。あんなに走ったら中はすごいことになっているはずだ。
 そんなに全力で走っていない私でさえ、すでに汗ばみ始めているくらいだし。
(でもまあ、危なくなったら公園からストップがかかるはずだよね)
 以前、私が女島さんをヒトイヌ状態にして公園で遊んでいた時、互いに盛り上がり過ぎてかなりの負担を女島さんにかけてしまったことがあった。
 その時、首輪に取り付けられた装置によってバイタルをチェックしていた職員さんから、体調に注意するようにと放送が入ったものだ。あの時は女島さんもかなりフラフラになっていて、危ないところだった。
 安全にヒトイヌプレイを楽しめるこの施設には本当に感謝しかない。
 ともかく、女島さんの心配はいまはしなくても大丈夫だろう。ほんとうに危なければ止めてくれるという施設に対する信頼はある。
 私は短くなった手足を懸命に動かして、道の脇にあるヒトイヌ用の通路に降りて行った。女島さんは普通に走っていったけど、施設内の設備を使っちゃいけないというルールはない。
 ヒトイヌ移動用のトロッコも当然、禁止されてはいないはずだった。私たちは普段どっちかが飼い主という立場で公園を利用しているから、このトロッコは初めて利用する。
 女島さんは忘れてたみたいだけど。覚えておいて良かった。
(というか、これが使えなかったら女島さんに勝てないし)
 禁止されている可能性もあったけど、入口前まで来ても何のアナウンスもないから、やっぱり禁止はされていなかったみたいだ。
 私は不自由な体で、床にあるボタンに首輪を触れさせてトロッコを呼び出す。その際、胸が地面に擦れてピリピリとした快感を生み出した。
 トロッコが禁止されていない理由として、素のままじゃ女島さんには勝てないと言う理由もあるのだけど、もうひとつ理由がある。トロッコ利用には、相応のデメリットがあるからだ。
 それも運次第だと思っていたのだけど、トロッコが近づいてくると同時に、さすがにそれは虫がよすぎるということを知った。
 なぜなら――私の膣に埋め込まれたバイブと、金属のブラに着けられた電動パッドが、小さく振動し始めたからだ。

つづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 序盤編 4

 ヒトイヌ移動用のトロッコが近づくにつれ、ささやかな振動だったそれらの器具は明確に私に快感を与えようという動きに変っていた。
(ああ、やっぱり……そう甘くはいかないか)
 私はトロッコの到着を待ちながらそう思う。私たちが取り付けられたブラのパッドや、膣のバイブは他のヒトイヌに近づけば強く振動するようになっている。
 そして、トロッコは一両編成ではなく、複数両が連なって運行されていた。
 それはつまり、他のヒトイヌが利用していた場合、私は離れることも出来ず、ひたすら強い振動に耐えなければならないということだった。
「くぅ……んっ」
 私も女島さんも、相手をヒトイヌにして愛でたい気持ちはあるものの、ヒトイヌになること自体に興奮することも事実。
 ここまでヒトイヌ状態で移動してきたことで、だいぶ出来上がっていたいまの私に、その振動はかなり凶悪だった。
(どうしよう……このトロッコはスルーして次のトロッコを待つ……?)
 そういう選択もありだと思った。けれど、よく考えてみると必ずしもヒトイヌが乗っているわけじゃないかもしれない。
 なぜなら、ヒトイヌ公園の利用者が都合よく常にトロッコに乗っているとは限らないからだ。もしかすると、運営側がトロッコに近づいたことでパッドやバイブのスイッチを操作している可能性もあった。
 公園の利用者はそう多いわけじゃないはずで、そうしないとトロッコ利用がデメリットにならない可能性が高い。
(まあ……確かめる方法もないからわからないけど)
 もしかすると本当にタイミング悪く他のヒトイヌが乗っているだけかもしれない。
 仮にこれを見送ったとして、次に来るトロッコにまたヒトイヌが乗っていないとは限らない。
 女島さんの運動能力を考えると、時間の浪費は敗北に繋がる。悩んでいる暇はない。
 私は意を決して、トロッコに乗り込むことにした。
 到着したトロッコからタラップが伸びて来たので、それを伝ってトロッコの中に入る。その位置は三両編成のちょうどど真ん中で、前後のどちらかの車両に他のヒトイヌが乗っているみたいだった。
 その距離は壁を隔てているとはいえ、30センチもないだろう。それだけ近づいてしまったものだから、パッドもバイブもほぼ最大の振動率になっているはずだった。
 体の中を抉られるような、そんな震えが全身に伝播する。
「ウゥ……ッ!」
 この音は相手にも聞こえているのだと考えると、とても恥ずかしかった。わざわざパッドやバイブを最大にしてヒトイヌに興じている淫乱だと思われているだろうか。
 これはゲームの設定であって、私の意思じゃない――そう言いたいけど、人間の言葉は封じられている。
 私はトロッコが目的地まで移動するまでの間、身体を震えさせる振動に耐え続けた。

つづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 序盤編 5

 ヒトイヌ公園で支給されるヒトイヌスーツは、驚くほどの快適性を実現している。
 多少なら汗を掻いても、ちゃんと吸収してスーツ内の環境を快適に保ってくれるのだ。
 けれど、さすがに今回の私ほどの全力疾走は想定されていなかったのか、スーツ内で流れた汗がものすごいことになっている感触があった。肘や膝のあたりが特に湿っているような感覚がある。
 さすがにちょっと気持ちが悪い。
 でも、それにしてもこれだけ汗を掻いたなら、逃げ場のない汗がもっと溜まって気持ち悪く感じるものじゃないだろうか。
(全身ラバースーツに覆われてる以上……漏れ出たりはしないはずだけど……)
 そんなことがふと気になって、後ろを振り向いてみた。
 すると、そこには想像もしていなかった光景があった。
(……!? これ、もしかして……私の足跡!?)
 私が歩いてきた道に、明らかにおかしな足跡が残っていたのだ。
 肘と膝の四点で体を支えている私の足跡とは思えない、本物の犬の足跡のような形に地面が濡れて残っていた。プールからあがった時の足跡が、乾いたプールサイドにつくような感じ。
 恐らく肘と膝のところに当てられたクッションに、そういう風に足跡がつくような仕組みがあるのだと思う。試しに足下で何度か足踏みをしてみると、その場所に犬の足跡みたいな湿った跡が残った。
(えっと……確かにたくさん汗は掻いたけど……ここまでになる?)
 道を見返してみれば、結構な距離に跡が続いている。これだけの跡を残せるほどの汗を掻いていたら、これはもう脱水症状とかいうレベルじゃないのでは。
 恐ろしく感じていると、突然、耳元で声が響いた。
『その足跡についてはご安心ください。汗など、ある程度の量の水分を吸収すると、そのような隠し機能が動くようになっています』
 びっくりしたけど、そういえば犬耳に実況用のスピーカーが内蔵されているんだった。
 いまのタイミングできちんと放送があったということは、当然だけど私たちの動向は常にチェックされているということ。見られているというのはちょっと恥ずかしいけど、それはそれで安心する材料ではあった。
『なお、その足跡がつくというのは、非常に水分を消費している状態であり、大変危険です。運営からの要請として、水分補給を行ってくださいますよう、お願いいたします』
(なるほど、そういう指針にもなっている、と……)
『指示に従っていただけない場合、女島様の敗北となりますのでご留意ください』
 つまり、まずは水分補給をしてからゲームに復帰しろということね。
 せっかく頑張って走った甲斐がないけど、体調優先なのは当たり前だ。私は出来る限り急いで水分補給をしようと、休憩所を探して辺りを見渡す。
 確か休憩所ではヒトイヌ状態でも水分補給できる設備があったはず。
 そう思って周囲を見渡したのだけど、運の悪いことに近くに休憩所らしきものは見当たらなかった。ちょうど間の悪い時に気づいてしまったようだ。
(これは……どっちに進めばいいの……?)
 水分補給をする気がないと思われるのは困るけど、ここから通り過ぎた休憩所まで戻るには随分時間をロスしてしまう。
 困っていると、再び放送が鳴った。
『そのまま前方に進んでください。茂みを抜けた先に給水所をご用意しております』
 私たち二人のためだけに至れりつくせりにもほどがあると思ったけど、都合は良かったのでその指示に甘えることにする。
 遊歩道に足跡を残しつつ、私は給水所へと急いだ。

 そこで何が待ち構えているかも知らずに。

つづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 序盤編 6

 狭いトロッコの中でじっとしながら、体内に埋め込まれたバイブと外から刺激を与えてくるブラパッドの震動に耐え続けるというのは、正直かなり辛いものがあった。
「フゥ……ウゥ……ッ」
 自由にならない身体を捩らせ、ラバースーツの軋む音を響かせながら、私は口から流れ落ちる涎を止める事も出来ずに見つめる。
 トロッコが目的地に着くまでの辛抱とはいえ、逃げ場のない場所で延々と刺激を与え続けられるのは辛かった。
 元々、震動する強さ以外はさほど特徴の無い震え方をするバイブとパッドであるため、いうほど気持ちよくはない。……訂正。気持ちはいいけど、絶頂に至れるほどか、というとそうじゃない。
 だから私は延々震動によって昂ぶらせられているにも関わらず、すんでのところでそれが解消されないという状況にある。それはかなりの責め苦だった。あともう一押し、刺激を与えられればイけるのに、それが成されない。
 もしこれが女島さんによって管理されているときであれば、ほどほどのところでイかせてくれるのに。
(意地を張るんじゃ無かったかな……)
 早くも、私はこのゲームに乗ってしまったことを後悔しかけていた。
 バイブやパッドによって与えられる無機質な快感は味気ない。
 愛するご主人様の手で、絶頂に導いて欲しい。
 そんなヒトイヌとしての――いや、雌犬としての本能が頭の片隅で囁き始めていた。
(いっそ、リタイアしてしまおうかな……)
 弱気になってそう思いかけた私の思考を遮るように、トロッコが減速する感覚がして、止まった。
 どうやら目的地に着いたようだ。私は弱りかけていた気持ちを持ち直す。
 トロッコから出て、他のヒトイヌから離れてしまえばこの厄介な震動も収まるはず。
 改めて気を入れ直した私は、開いたトロッコの扉から外にでた。
 幸い、同じトロッコに乗っていた別のヒトイヌの目的地は違ったようで、私だけを降ろしてトロッコは再び出発していった。
 トロッコが遠ざかるにつれ、私の心を弱らせていた震動は収まっていき、私は人心地つくことが出来た。
(危ない危ない……もうちょっとで負けを認めるところだった。ヒトイヌになってる時はいつもより快感に弱いから……注意しないと)
 冷静になって考えれば、もしこんな序盤でリタイアしようものなら、スポーツマン気質の女島さんは間違いなく怒る。負けず嫌いではあるけど、それと同じくらい勝ちを譲られるのが嫌いな人だった。
 対戦ゲームであまりにも女島さんが弱かったから、わざと負けてあげた時のことを想い出す。あのときは拗ねに拗ねて大変だった。可愛くはあったけど。
 もしいまの段階でリタイアして彼女主体の責めになっていたら、そのお仕置きとして女島さんの手で焦らしプレイを施されていたかもしれない。
(そんなのはごめんだわ……負けるにしたって、健闘を称えて優しくしてくれる程度には競わなきゃ……!)
 私は改めてそう決意を固め、勝つ気でゲームに戻った。
 トロッコが到着したのは、ヒトイヌ状態で利用できる娯楽室だ。私の読みでは、この施設に鍵が一個は必ずあるはずだった。
 野外にも施設はいくつかあるけど、野外だけあって探す場所が広い。その点、娯楽室なら見るべきところは限られているし、なんとなく察しも付く。
 ただ、誤算がひとつ。
(なんで……なんでこんなにヒトイヌがいるの……!?)
 施設内に入って見て私は驚いた。入口から見えるだけでも、数頭のヒトイヌが娯楽室で思い思いに寛いでいたのだ。
 普段、私たちが利用する時にはそんなに利用者が少なかったから油断していた。いても一頭か二頭だと思っていたから、これは完全に想定外だ。
(こ、こんな場所を……探さないといけないの……?)
 娯楽室内のヒトイヌに反応してか、バイブとパッドが震え始める。
 せっかく立て直した心が、再び不安に揺らぎ始めていた。

序盤編・おわり
探索編につづく
カウンター
プロフィール

夜空さくら

Author:夜空さくら

はじめに
当ブログは箱詰・拘束系の18禁小説ブログです。関連の同人誌・版権物のレビュー、個人的な語りなども書きます。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。

『このブログについて』
・当ブログについてです。

『twitter』
・管理人のツイッターです。取りとめのないことを呟いています。

管理人運営の姉妹ブログ一覧
『黎明媚態』(露出・羞恥系)
『黄昏睡蓮』(猟奇・グロ系)
『白日陰影』(箱詰・拘束系)
『夕刻限界』(時間制御系)
『極夜天蓋』(催眠・改変系)
『東雲水域』(性転換交換系)
『星霜雪形』(状態変化系)
『異種祭祀』(異種姦系)

『pixiv』
・イラストは全て3Dカスタム少女を使用し作成して投稿しています。基本は小説の投稿です。

『ノクターンノベルズ』
・一部の小説をこちらでも掲載しております。