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白日陰影

箱詰系、拘束系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

着包み詰め&運送プレイ1

 『着ぐるみバイト募集中! 小柄な女性歓迎! 高級保証!』

 家のポストに入っていたアルバイト募集のチラシに、そんな謳い文句が載っていた。
 本来なら勝手にポストに放り込まれるチラシなんて無視すべきものだ。一応眼は通すけど、記憶するまでもなくさっさとゴミ箱に捨ててしまうのがいつものパターンだった。
 けど、その謳い文句から目が離せなくなったのは、その時の私はとある事情でたくさんのお金が必要だったからだ。
 加えて、そのチラシが求めている要素が自分にぴったりだということがある。
「着ぐるみ、かぁ……きついのかなぁ」
 小柄であることに若干のコンプレックスを持っているレベルの小柄な私に、この仕事は適任であるとは思う。
 自分でそれを認めるのは癪だけど、プライドを捨ててでも今回はお金が必要なのだ。
 それは、一週間後に迫ったデートに関連する。
 この日のために、私は踵の高いヒールがどうしても欲しかった。
 というのも、今の彼が背が高くて落ち着いている人手あるため、下手に横に並ぶとよくて兄妹、最悪の場合だと親子に間違われることがあったからだった。
 以前のデート中、たまたま会った知り合いに「娘さんですか? 結婚なさってたんですね」と言われてた彼の表情が忘れられない。
 もちろん、その後落ち着いて否定してくれたけど。
 彼もショックだったろうけど、子供扱いされた私はそれ以上にショックだった。
 だから、今度のデートでは失敗できない。少しでも大人に見えるよう、せめていい靴で決めたい。
 ちなみにこれまではそんな風に気を使う相手がいなかったし、なにより靴にそんなにお金をかける必要がないと思っていたから、そういう靴は持っていなかった。
 元々ヒールの高い靴は危ないという意識あって避けていたということもある。
 ただ、改めて靴を買おうと思い立って、そういう靴を物色してみて、その値段の高さに度肝を抜かれたものだった。
 あまりにも高すぎる。私の資金力で買うと月末呑まず食わずで生きなければならない。
 これはバイトを増やさなければ……と思っていたところに、冒頭のチラシが飛び込んできたというわけだった。
 確かにお給金はいい。はっきりいって相場より遥かに高い。そのため、かなりの重労働であることがはっきりわかる。
 けど、小柄な女性歓迎!とあるからには単純に筋力が必要であるとは思えない。
(詳しい仕事の内容を聞くだけ聞いてみようかな……それから受けるかどうか決めてもいいし)
 そんな風に私は軽く考え、そのチラシの連絡先に電話した。
 いまから思えば、浅はかであったように思う。けれどこのときの私にはとにかく纏まったお金が迅速に必要で、結局結果は変わっていなかったかもしれない。
 こうして、私はまんまとそのチラシに乗せられてしまったのだった。

着包み詰め&運送プレイ2

 チラシの連絡先に電話すると、余程急を要していたのか、とんとん拍子で話は進み、事務所に来てくれと言われてしまった。
 こちらとしても早く話が進むのは助かるため、事務所に赴いた。
 対応してくれたのは、やたらとテンションの高い女の人だった。
「君が連絡くれた子だね! うん、電話で聞いた通り、ちっちゃいね!」
 さくっとコンプレックスを抉られて、私は速攻で帰りたくなった。それを言った人は女の人の割に背が高かったから余計にだ。
 けど、給金のためにもここは堪えなければならない。
「……どうも」
 それでも険を孕むことは避けられなかったのか、その人は私の気分を害したことにすぐ気付いたみたいだった。
「ああ、ごめん! 嫌な思いをさせちゃったかな? 悪気はないんだ!」
 一応こちらのことを慮る程度の常識は持ち合わせているようだ。
 応接室っぽいところに案内され、向かいあって座る。
「正直助かるよ! なにせ今までやってくれてた子が、家庭の事情で来れなくなっちゃってさ! 代役を探してたんだけど、その子並みに小さい子って中々いなくて!」
 さっきコンプレックスを抉られたばかりなのに、また抉られた。
「いまさら着ぐるみの大きさは変えられないし、どうしようって本気で困ってたんだよ! 多少小さい方向なら調整も聞くけど、大きな方向には利かなくてさ!」
「はぁ……」
 良く喋る人だなぁ、と思った。
「で、早速なんだけど仕事の内容を説明するね! 電話でもちょっと話したけど……」
「え? ちょっ、ちょっと待ってください!」
 いきなり話が飛んだので、慌てて止める。
 女の人はなぜ止められたのかわからないという顔をしていた。
「なにかな?」
「私、今日は面接のつもりできたんですけど……」
「ああ、採用だからいいよ」
 あっさりとそんな風に言われてしまう。もちろん、納得出来るわけがない。
「はい!? そんな適当でいいわけないでしょ!?」
 思わず声を荒げてしまったけど、その人は全く怯まない。
「大丈夫! そういうことを気にする段階で真面目ないい子だってことはわかるし!」
「……」
 それで本当に大丈夫なのかと疑惑の目を向けてしまった。
 その私の目を無視して、鼻唄混じりにその人は説明を始める。
「まず仕事の目的を改めて説明するね! 今回君にはゴールデンレトリバーの着包みの中に入って貰って、その状態でアニマルセラピーのようなことをしてもらいます!」
「電話で聞いた時にも思いましたけど……その、質問いいですか?」
「ああ、アニマルセラピーをしてもらうっていっても、別に君自身に何か特別なスキルを求めるつもりはないから安心して! 君は動物の振りをして接して貰えばいいだけだから!」
「あの……」
 聞けよ、人の話を。
 思いっきり毒づきたくなってしまった。

着包み詰め&運送プレイ3

 着ぐるみに入って動物のふりをするだけの簡単なお仕事です。
 説明してくれた女の人の説明を要約するとそんな感じだった。ちなみにその女の人の名前は鹿原さんというらしい。いつまで経っても自己紹介してくれなかったから、名札を見て知った。
「これがその着ぐるみだね! 相当リアルでしょう?」
 控え室っぽいところに案内されて、見せられたのがその着ぐるみだった。目立つのは顔の部分で、そこはやたらとリアルな作りをしていて、それに対応するように体の方もジッパーなどは長毛によって絶妙に隠されていたけど、かなり精密な作りになっているようだった。
 大きさは人間サイズではあったけど、たしかに私が適しているくらいには小さそうだった。
「どうだい? 凄いでしょ! こんなふざけたものに……って思うほど、実は凄い先端技術の固まりなんだよ!」
 そういって鹿原さんは頭部の辺りを指差す。
「ここ、耳の部分、わかる? ここに高感度センサーが取り付けられててね。装着者の感情を読み取って尻尾が動く仕組みになってるんだよ!」
 興奮ぎみに鹿原さんは続ける。
「この読み取り精度をどう増すかが課題でね、それはもう途方もない試行錯誤が行われたわけだよ! まぁ、そのかいあって今じゃ感情の読み取り精度は極めて高いんだ! あ、そもそも脳波を読み取るためには……」
「あ、あの……そのくらいで……」
 なんだか、しまいに小難しいことまで言い出しそうになっているのを感じて、私はそれを遮った。
「そうかい? ここからがいいところなんだけどな……」
 鹿原さんは名残惜しそうにしながらも、とりあえず優先すべきは説明だとわかっているのか説明を再開してくれた。
「とはいっても、実際にこのきぐるみを着てもらうのが一番手っ取り早く説明できると思うんだよね」
「は、はあ……」
 口で説明されるとさっきの二の舞の気がしたから、それはありがたい申し出だった。
 鹿原さんはにこやかな笑顔で私に向かって言う。
「じゃあ、脱いで?」
「はい!?」
 いきなり脱衣を促され、私は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
 それに対し、鹿原さんはあくまで平静だった。
「え、だってその服のまま着ぐるみの中には入れないでしょ?」
「そ、それはそうかも、ですけど……でも……」
 それでも躊躇していると、鹿原さんはああ、と呟いた。
「大丈夫! 何も全裸になれって言ってる訳じゃないから!」
 あけすけにものをいう鹿原さんの言葉に、私は赤面を禁じ得なかった。
「わ、わかってます!」
「ちゃんとインナースーツは用意してあるよ。ちょっと出てるから、さっと着替えてもらっていいかな? サイズは前の子と一緒にしてみるから、もしどうあがいても着れそうになかったら言って?」
 そういって鹿原さんが出してきたのは、一着のインナースーツだった。新品であることを示すように、袋を破ってそれが机の上に広げられる。
 それは全体を見ると、黒一色のツナギのようなものだった。

着包み詰め&運送プレイ4

 それはツナギのようなスーツではあったのだけど、実際に触れてみると布というよりもラバーという表現の方が似合う感じだった。かなり分厚そうで、学校で着るスクール水着のイメージが蘇る。
 もし着たら、たぶん、というか確実にかなり体のラインが出そうな感じだった。
「これ……着るんですか?」
「着た方がいいね。スッゴい汗掻くからさ。普通の服だと、着ぐるみに汗が染み込んじゃうんだ。もちろん洗浄はするけど、臭くなるかもしれないよ。あ、ちなみにこのスーツは汗の吸収が良くって蒸れないからその点も安心してくれていいよ」
 そう言われてしまうと、自分自身のためにも着た方がいいかもしれないと思った。
「わかりました……着ます」
「ちなみに、裸の上から着るタイプだから」
「え?」
「それじゃあ、着替えてる間、ちょっと席外すね。五分かそこらで戻ってくるから、インナースーツは着ておいて!」
 言うや否や、部屋を出ていってしまう。
(……え? いま、裸の上から……っていった?)
 まさか、全裸になってその上からこれを着ろというのだろうか?
(…………ええええ……超、恥ずかしいじゃない……)
 いまからでも断ることは出来ないだろうか。私はそう思ったけど、あの人相手に上手く断れる自信がなかった。
 私は諦めて、ひとまず着替えることにする。
(ほんとにダメそうなら断ろう……)
 下着を含めて全ての服を脱ぎ、全裸で改めてインナースーツを広げてみた。全身スーツの内、背中の辺りが大きく開いている。ここから身体を内側に入れるみたいだ。
 ほとんど繋ぎ目らしいものがないせいで、のっぺりとした外観となっている。これは……そう、スーツというよりは、全身タイツみたいな外見になってしまいそう。
「……いやだなぁ」
 いまからでも断るべきかと真面目に思う。
(まぁ、着ぐるみを着れば見えなくなる、けど……)
 私はそう自分を納得させ、インナースーツに足を通す。よく見ると股間の部分にジッパーが走っていた。
「……なんだろ?」
 何に使うためのものなのかよくわからなかったけど、とりあえず着用を進めてみる。
 スーツの内側は思ったよりも 滑らかで、もっと苦労するかと思ったけど、案外あっさり足を入れることが出来た。
 以前の人とサイズはほとんど変わらなかったらしく、結構ぴちびちだった。
 腰の辺りまでスーツに覆われると、まるでそこから下が自分の体じゃないみたいな色になっていた。
 なんというべきなのだろう。陳腐な戦隊物で出てくる低級のモンスターという感じ……と言えば伝わるだろうか?
 とにかく、なんだか自分の体が全く違うものに見えた。
「……馬鹿馬鹿しい」
 そんな風に感じてしまったこと自体が何だか恥ずかしくて、さっさとこのスーツを身に付けてしまうことにする。
 私はスーツの袖に手を通し、脱皮の逆回しのようにそのスーツを身に付けていく。
 体の小ささをもってしても、そのスーツはギリギリの大きさだった。私よりも小さい人がいたのだという事実に、少し優越感を感じた。
(ん……かなりぴっちりするなぁ……)
 まだ背中のジッパーを上げていないので、完全ではないが、とりあえず着用は出来た。
 真正面からみると、首から下の身体が全て黒一色に塗り潰されているよな感じだ。ぴっちりと身体に張り付いている上に遊びが一切ないので、裸をそのまま晒しているような不安は感じる。

着包み詰め&運送プレイ5

 手の指の一つ一つに至るまでスーツによって覆われた状態で体を動かすと、ミチミチと少し不穏な音がする。丈夫そうだから破れたりはしないだろうけど、どうにも不安になる感じだった。
 背中が開いているのがなんとなく不安で、なんとかジッパーを引き上げられないかと手を後ろに回してどうにかしようとしたけど、あげられてもせいぜい腰の上くらいまでだった。
(一番上までは誰かにあげてもらうしかないってことね……)
 少し肌は見られてしまうけど、まあ仕方ないか、と自分を納得させる。
 そのとき、突然ドアが開かれた。
 思わず腕で自分の体を隠す。入ってきたのはさっきの人だった。相変わらずのテンション高さで口を開く。
「着れたかな? おっ、いいじゃんいいじゃん。サイズも結構ぴったりみたいだね。どこか苦しいところはある?」
「い、いえ……いまのところは……」
「あ、背中のジッパーあげられなかったでしょ。あげてあげるよ。いやー、前の子にもよくしてあげたんだよねえ」
 私が何かを言う前に、その人は私の背後に回って、素速くそのジッパーを上に引き上げる。軽く引っ張られながらだったから、私は一瞬息が詰まった。
 ジッパーは首筋……うなじの辺りまであって、私は首から下を完全にスーツで覆われている状態になってしまった。ジッパーがしまったことで、よりスーツが密着し、呼吸するだけでも全身をそれに包まれているのだということがわかるようになってしまう。
「……っ……あ、……っ」
 変な気分になって、思わず熱い息が出てしまった。慌てて口を抑える。幸い鹿原さんは気づいていないのか、私の首筋で何かやっていた。あげきったジッパーに何かしているのだと察することは出来た。
「あの……?」
「ああ、ごめんごめん。はずれたよ」
「へ?」
 思わず私がそう聞くのと、鹿原さんが外れたジッパーの部品を見せてくれるのは同時だった。
 私の顔から血の気が消える。
「えっ、ちょ、何やってるんですか!?」
「ああ、大丈夫大丈夫。単に外れるようになっているものを外しただけだから」
「外れるように……なってる?」
「うん、そうだよ。なにせ結構着ぐるみって密着するからさっ。これくらいの部品でも動き方によっては結構痛く感じることもあるから、いまのうちに外しておくんだよ」
「な、なるほど……?」
 私は納得するべきかどうかちょっと悩んだ。
 よくよく考えればそれはその部品がなければ自力では決してこのスーツが脱げなくなったということであり……私はどんどん追いつめられて言っていることに……いや、閉じこめられつつあることに、気づけなかった。
「それじゃあ、きぐるみを装着してみようか」
 そう言って、鹿原さんは改めてきぐるみを手に取って、私に向かって笑いかけた。

着包み詰め&運送プレイ6

 説明を受けたときにも思ったけど、その着ぐるみは妙にリアルで、まるで本物の犬の皮でも使っているかのようだった。何の説明もなくそれを見せられたら、十人中九人はそれが本物の犬の皮だと思うだろう。
 それを鹿原さんは床に広げる。
「それじゃあ、早速だけど着て見てくれるかな? サイズが致命的に合わなかったら調整しないといけないし!」
 何がそんなに楽しいのか、鹿原さんはにこにこと笑顔でそう求めてくる。
「……わかりました」
 わたしは何かをいう気もなくなって、素直にそれを身につけてみることにする。
 それにしても奇妙な構造だった。前足は長く作られているのに、後ろ足は短い。
「手足の長さって犬と人間じゃ違うからさー。それっぽく見えるように色々苦労したんだよっ。前足は相手に触られることもあるから、極力不自然さを消す感じでねー。後ろ足はどうしたって不自然になるから、その不自然さは毛でごまかす感じでね? ホントは毛がない方がいいんだけど、体のラインとかをごまかすためにはこれくらいの長毛種じゃないとねー」
 ずらずらと、わたしが理解していようといまいと関係なく話を進める鹿原さん。
 ほっとくといつまででも喋っていそうだったから、わたしはそれを遮った。
「すみません、どうやって着たらいいですか?」
 自分の話が遮られたことに不満そうな顔はしつつ、お仕事のことは忘れていなかったのか、鹿原さんが話を止めて装着の仕方を教えてくれた。
「まずは後ろ足から身につけていく方がいいと思うよ。まずはこうして着ぐるみを広げて……っと」
 着ぐるみの内側は思っていた以上に滑らかだった。いま着ているインナースーツの性質のおかげかもしれないけど、抵抗少なくするりと中に足が入る。サイズの合わないブーツを履くときの苦労とかを考えると、その滑らかさはちょっと驚きだった。
(いったいどんなテクノロジーなんだろう?)
 そんな風に不思議に思っている間に、わたしの体はすでに腰までぬいぐるみに入っていた。フォルムこそ違うけど、端から見ると犬の足に見間違えるかもしれない。ふさふさとした尻尾が揺れる。
 着ぐるみのジッパーはお腹側についていた。おへそのあたりから引き上げていく感じだ。
「ジッパーをあげる前に腕を通さないと着づらいと思うよ?」
「あ、はい」
 わたしは鹿原さんに言われ、先に腕の方を着ぐるみに通すことにした。
「腕を通す時は先に手をグーの形にして入れてね。先端に到達するまではちょっときついかも知れないけど……」
 足と同じように滑らかに入っていくのに感動しながら、腕を先端まで通していく。確かに腕の太さが拳よりも細いから押し込んで行くのは苦労したけど、先端部まで到達すれば、綺麗に拳がそこに収まった。
「あれ?」
 そこまで着て私は、手が拳を握った状態のまま動かせないことに気付く。これではジッパーを引き上げることも出来ない。そもそも、これはどうやって脱げばいいんだろう。
「もう片方の手を通すのは手伝うね」
 私が何かを考える前に、鹿原さんが私の腕を取って、器用に腕を押し込んでいく。もう片方の腕も、綺麗に先端に収まってしまった。ほとんど着ぐるみに押し込められてしまい、私は自力でそれを脱げなくなっていることを悟る。
「え……あ、あの……」
「うん、サイズはばっちしみたいだね! ここまで綺麗に揃っているなんてすごいよねぇ。さ、仕上げといこうか!」
 鹿原さんの動きは素速かった。水泳の時かぶるようなキャップを取り出したかと思うと、私の髪の毛を綺麗にまとめてその中に押し込めてしまう。
 そしてその上から、とてもリアルな犬の頭のかぶり物をかぶせる。
「えっ、うそ、ちょっと待っむぐっ!」
 その被り物は綺麗に私の頭全体を覆い、一瞬視界を奪う。鹿原さんが微調整をすると、私はかすかに外の景色が見えるようになった。犬の目の位置に合わせている穴だからか、非常に見えにくく、鹿原さんがどこにいるのかも見失う。
「ジッパーをあげるよー」
 聞こえづらかったけど、鹿原さんの声が聞こえて、着ぐるみのジッパーが引き上げられていくのがわかる。インナースーツ越しでも辛うじて感じていた開いている感じが閉じていくのがわかった。
 そしてその感覚が喉元までやってきた時、私は着ぐるみの中に完全に閉じこめられてしまった。

着包み詰め&運送プレイ7

「はい! これで完成! どんな感じかな?」
 鹿原さんがそう問いかけてくるけど、私はそれに応えることが出来なかった。
 そもそも犬の頭部の被り物をしている現状、喋ろうと思っても喋れない。
「いやー、君は小顔だから凄く犬っぽいよ! ここまでの逸材はそうそういないね!」
 テンション高く、鹿原さんが言う。私は何か言おうと、無理やり口を開こうとして。
 カポン、と軽い音と共に口内に何かが入り込んで来たのがわかった。
「むぐっ!?」
 口の中に突然入り込んで来たそれは、ゴムの塊のように感じる。どうやら被り物の内側に、口内に広がる形状に突き出していたものがあったようだ。それが口の中に突き出してきて、舌を抑えている。
「うっ……ウゥ……っ」
 唸り声が、まるで本物の犬のようだった。それを聞いた鹿原さんが、私の現状をようやく把握してくれたようだ。
「ああ、ごめんごめん。説明し忘れてたけど、その被り物の内側には水分補給用の管が飛び出しててさ、ちょっと無理して口を開けるとそれが口内に入り込むようになってるんだ。一度口の中に入っちゃうと、もう被り物を脱ぐまで口の外に押し出すことは出来ないから……喋れないのは辛いかもしれないし、ずっとそれを咥えたままっていうのも辛いかもしれないけど、慣れてもらえると助かるかな。あ、ちなみにちゃんと消毒とかはしてあるから心配しないでね」
 さらにちなみに、と鹿原さんは私の顔を、正確には犬の被りものの口先を掴んだ。その上あごと下あごを片手ずつ掴んでパカパカ開閉させる。それに従うように、私の顎も無理矢理動かされた。
「口の開閉は君の顎の動きとリンクさせてあってね? まあ、犬として自然な演出が出来るおうにしてるってわけ。舌は自動的に出たり入ったりするから、下を向いて口を開ければ勝手に舌が出るよ」
「……ウゥゥ……」
「自分がどんな姿をしているかみたいでしょ? こっちに鏡があるから、見てみて!」
 肩を抱かれるように、私は半ば無理矢理鏡の前に引き摺られた。
 足元から頭のつま先まで見える、幅の大きな鏡が準備されていた。
 その前に立った私は、制限された視界の中に、一匹の犬を見つける。
 それは確かに私のはずなのに、私の眼から見ても、それが人間とは思えなかった。
 リアルな犬の顔に、若干の差異はあるけど、動物の身体。二足歩行をしているから変に見えるけど、これがもしも四つん這いになっていたら。
 遠目には犬にしか見えないに違いない。
「うん! オーケーだね! じゃあ、ちょっと四つん這いになってもらおうかな!」
 肩を下に向かって押されて、茫然としていた私はその場に膝を突き、自然と両手を地面に突いた。
 そうしてしまえば、もはや、私はただの犬だった。
 犬の着包みの中に閉じ込められた私は、傍から見て、ただの犬になっていた。

着包み詰め&運送プレイ8

(……うぅ……なにこれ……)
 着包みは基本的に四つん這いになることを前提に作られているらしく、一度四つん這いになってしまうと、もう一度立ち上がるのは難しかった。
 まるで本当の犬にされてしまたかのような感覚に、頭がぼんやりしている。現実感がなくて、非現実のような気がしてしまっているのだ。
 鹿原さんは暫し私の周囲を回って問題がないかチェックしていた。そして、問題がなかったのか、満足そうに頷く。
「うん! 問題はなさそうだね! これなら皆綺麗に騙されてくれるよ!」
「ウゥ、ゥッ!」
 それなら早いところ解放して欲しい。そういう想いを込めて唸ると、鹿原さんは察してくれたようだった。
「ごめんごめん。そうだね。いきなり長時間の着用はしんどいよね。徐々に慣れて行ってもらうから」
 そう言って鹿原さんが私の前に膝を突いて、喉元にあるチャックに向けて手を伸ばす。
 その時、部屋の扉が開いて男の人が顔を覗かせた。
 思わず私は身体を隠すように、縮こまってしまう。
「鹿原! すまんが大至急来てくれ! トラブルだ!」
 それなりに重大な出来事なのか、鹿原さんの目が細くなる。
「わかった! すぐいくよ!」
(えっ!? ちょ、ちょっと!)
 そう私が思った時には、鹿原さんは立ち上がって部屋の入口へと向かっていた。
 扉を潜る寸前、私の方を見て、にっこりとウインクをする。
「ごめん、すぐ戻るから! ちょっとだけ待ってて!」
(ちょっ、待っ……!)
「ウ、ゥゥウウウウウ!!」
 私の声は唸り声にしかならず、無情にも私の見つめる前でドアは閉められた。
 私は犬の着包みに閉じ込められたまま、放置されてしまったのだ。

着包み詰め&運送プレイ9

 部屋に一人放置されてしまった私は、何とかこの着包みが脱げないかどうかチャレンジした。
 けれど、当然、獣のような前足にされてしまっている以上、チャックを降ろすことさえ出来ない。爪のようなものはあったけど、それも安全を考慮してから鋭いものではなく、金具に引っ掛けて降ろすことは出来ない。
(……っ、くっ……なら……!)
 私は不自由な視界を駆使して、何か尖った角がないかどうかを探した。
 もしそんな角がどこかにあれば、それに引っ掛けてファスナーを降ろすことが出来ると思ったからだ。
 けれど、私がいまいるこの部屋には、雑然と物が置いてあるようでいて、ひっかけられるような角はどこにもなかった。
 安全対策なのか、机の角も綺麗に丸められている。
(……ウゥ……動き……辛い)
 私は四つん這いで部屋の中を動きながら、全身を覆うギシギシ感に悶える。
 全身を覆うインナースーツに加え、身体に密着する着包みを被せられているのだ。キツくないわけがない。
 私は全身を覆うインナースーツの所為で籠る熱に、大量の汗を流していた。
(うぅ…………暑い……これ、脱水症状になっちゃうんじゃ……)
 私の呼吸は被り物越しにするしかなく、口を開いて呼吸を続けていた。
 それが自分自身の耳にさえ、犬の呼吸音のように聞こえて、本当に一匹の犬にされてしまったかのような感覚になる。
「……ウゥ、ぅ」
 大声をあげて誰かに助けを求めようかとも思ったけど、部屋の外にまで響くほどの大きな声を上げられる気がしなかった。
 何とかすることも出来ないまま、時間だけが過ぎて行く。
 その時、ふと、私は妙なことに気付いた。
(……あれ……? あれだけ汗をかいたのに……?)
 普通、全身タイツみたいなものを着たまま汗をかけば、汗で張り付くタイツが気持ち悪くて仕方なくなるだろう。
 けれど、このインナースーツは、汗を瞬時に逃がしてしまっているのか、さらさらとした感触がすぐ戻って来ていた。
 むしろ、汗を掻く前よりも快適で、インナースーツを身につけていないかのようだ。
(これって、ほんと何の素材なんだろう……?)
 そんなことを考えていたから、何気なく動かした手の肘辺りが段ボールに触れる。
 その感触に驚いた。
(え……? ええ……っ!? なにこれ……!?)
 私は思わず肘で何度もその段ボールを小突いてしまった。
 その感触は恐ろしく鋭敏で、着包みとインナースーツを介しているとは思えないほどのものになっていた。
 まるで着包みが自分の身体の一部になってしまったような、そんな感覚だった。

着包み詰め&運送プレイ10

 自分の身体が、まるで着包みになってしまったようだった。
 強いて表現するなら、インナースーツが自分自身の皮膚と着包みを仲立ちして、完全に張り付いてしまったかのよう。
 頭の被り物の部分はさすがにそこまでの一体感はなかったけど、それ以外の箇所は全てがそんな感覚だった。
 ほとんど肌と着包みの感覚が一体化したせいで、裸で放り出されているような、そんな感覚になっていた。あまりにフィットしているせいで、丸見えになっている身体のラインを意識してしまい、かっと顔が赤くなるのがわかる。
(こ、こんなの……恥ずかしすぎる……!)
 こんな着包みを来て活動しなければならないなんて、恥ずかしすぎる。とてもじゃないが耐えられそうにない。
 鹿原さんが戻ってきたら、何がなんでも絶対辞めさせてもらおうと心に決める。
 部屋の扉の前で、私はその扉が開くのをじっと待った。
 ただそうして四つん這いで待っているだけでも、体力を消耗しているのがわかる。
 やがて、私の前でそのドアノブが動いた。
(ああ、やっと……やっと解放される)
 私はそう感じて、希望を見た。
 けれど。
「おおっ? びっくりした!」
 ドアを開けた人は、鹿原さんではなく。女性でもなく。

 見ず知らずの、大柄な男の人だった。

着包み詰め&運送プレイ11

 いきなり目の前に男の人が現れて、私は思わずパニックに陥った。
(うそ、うそうそっ、やだっ、見ないで!)
 恥ずかしかったり、嫌だったり、色んない気持ちが巻き起こって、私は自分の状況をしっかり把握出来なくなった。
 だから、満足に動けなかった自分が自分を守るために取った行動は、その場で身体を丸め、蹲ることしかなかった。
 伏せた私に、男の人の顔は見えない。けれど、その人は興味深そうにこちらを見ていることが何となくわかった。
「……おい? 大丈夫か?」
 急に動かなくなってしまった私が気になるのか、男の人が私に向けてそう声をかけてくる。私は何度も応えることが出来ず、ただその場で蹲ることしか出来なかった。
 男の人は暫くして、私が動かないことを悟ったのか、恐る恐る近づいてくる。
 伏せた私の視界に、男の人の靴が入り込んだ。
「……ああ、そうか」
 私がじっとしている間も、男の人は私の身体をじっと見つめていた。
「君が新しい人だね? 大丈夫、話は聞いているから」
 そう彼が言ったかと思うと、頭にポン、と手が置かれた。そしてそのまま撫でられる。まるで本当の犬を落ちつけようとしているかのような優しい手つきで、私は思わず恥ずかしくなった。
 着包みを隔てているというのに、その撫でられている感触は異様に強い。
 私はその奇妙な感覚に戸惑いながらも、結局動けずにそのままでいるしかなかった。

着包み詰め&運送プレイ12

 しばらく私の頭を撫でていた男の人は、やがてその手を離して私の後ろへと歩いて行く。
 私はその場から動けなかったのだけど、急に後ろから肩に手を掛けられて、身体を無理矢理起こされた。
「わふっ!?」
 男の人の強い力で身体を起こされ、なすすべもなく私は四つん這いの状態から犬の『お座り』の姿勢に直された。
「ほら、待機する時の基本姿勢はこうだよ」
(えっ、ちょっと、待って……止めてください!)
 そう心の中で叫ぶ私に構わず、男の人は無理矢理体勢を整えさせて行く。
 何とか抗おうとしたけど、不自由な着包みを着せられている私の抵抗なんて、男の人にとってはないも同然だった。
 本能的に身体を丸めようとして、少し強めに背中を叩かれる。
「ほら、背筋を伸ばして!」
 別に痛いわけではなかったけど、私は思わず背筋を伸ばしていた。大人の男の人にこんな風に強く言われるのはほとんど初めての経験だったからだ。
 どうにか男の人が満足出来る姿勢が取れたのか、男の人がまた私の頭を撫でる。
「よーし。オッケー。そのまま動くなよー」
 私は無理矢理犬のポーズを取らされているみたいで、恥ずかしさのあまり死ねそうだった。
 けれど、こんなことはほんの序の口だったことをすぐに痛感する。
 男の人が何かやったのかどうかもわからない。けれど、気付いた時。
(……あ、あれ……? からだ、が……)
 腕を動かそうとしても、足を動かそうとしても、身体を丸めようとしても。首や口すらも。
 私の身体はまるで石のように動かなくなっていた。どれだけ力を入れても、びくともしない。まるで着包みが固まってしまったかのようだ。
 私は犬の着包みの形をした檻に捕らわれてしまった。
 男の人が私の前に膝を突いて、目線を合わせてくる。
 そして、理解出来ないことを言う。
「あんまり時間がないからな。急いで梱包作業を始めるぞ」

着包み詰め&運送プレイ13

 その人の言葉の意味が私はよく理解出来なかった。
(梱包……? どういう、こと……?)
 身体を固定されたことで、私はこの仕事がおかしなものであることにようやく気付く。
 そもそもこんな着包みを着てする仕事事態、どんなものなのか。考えてみれば変なことだ。
 けれど、いまさら気付いたところで遅すぎた。
 男の人が、私の口を無理矢理開かせる。その口に合わせるように、一本のボトルを入れて来た。
 私は口の中に細いストローのような物が出て来たことを舌で感じる。
「これは水分補給用のボトルだ。栄養たっぷり詰まった特製のものだから、一日二日食わずとも平気になる」
(……え?)
 その男の人の言葉が意味することは。
 私は恐怖に心を震わせた。
(ま、待って……っ、違うの、私、まだこの仕事やると決めたわけじゃないのに!)
「んぅ、ん、ぁ……っ」
 そのことを伝えようと声を振り絞ったけど、いまの私が男の人に通じるほど声を出せるわけもなく。
 男の人が着包みの口を閉めて、私の声は誰にも届かなくなった。

着包み詰め&運送プレイ14

 私を動けなくしてしまった男の人はさらに勝手な準備を進める。
 首を回すことすら出来ないkから、男の人が何をしているかはわからなかったけど、男の人がわざわざ私の前に来てくれたため、何をしようとしているのか理解することが出来た。
「ほれ、見えるか?」
 男の人が持っていたのは、透明なケースのようなものだった。単純な四角い箱ではなく、若干複雑そうな構造が透けて見える。
「わかるか? このケースは特別なものでな。中の空洞の形が見えるか? これは綺麗にいまの君の姿勢のまま、箱に詰めることが出来るんだ」
 男の人が箱の両端を持って力を込めると、そのケースは二つにぱっかりと分かれた。透明なせいで良く見えなかったけど、確かに何かの形に箱の中の空洞は作られてるようだ。
 男の人は、その箱の片方を地面に置き、そして私の身体を持ち上げた。お尻と背中に男の人の掌の感触を感じる。
「よ……っと!」
 私は地面に寝かされた箱の、空洞にぴったり嵌り込むように寝かせられる。
 そして、それに合わせるようにもう片方の箱が載せられた。二つの箱が再び一つになり、私はその箱の中に綺麗に収まってしまう。
 それは、人によってはフィギアか何かの箱の形式を思い浮かべるかもしれない。立体的なものを綺麗に箱に収める技術。それがこの箱にも使用されていた。
 いままでははっきり聞こえていた男の人の声が、少し遠く聞こえる。
「起こすぞー」
 声がかけられると同時に、私は再び箱ごと起こされた。若干浮いているような、奇妙な感覚がある。
 私は全身スーツ、着包みだけでなく、どんどん完璧に拘束され、脱出は益々困難になっていっていた。

着包み詰め&運送プレイ15

 さらに梱包作業は続く。男の人が次に取り出してきたのは、薄い板で出来た箱だった。その箱の一部は開かれていて、その中に入れられたものが見えるようになっている。
 それは私にはわからない認識だったけど、まさにフィギアを入れておくための箱の形式に近いものだった。
 私がいま入れられている透明な箱の上からかぶせることで、中に入っている私の姿が箱の外からでも見えるようになっているわけだ。まるで鑑賞するために用意された箱のようで、いまさらながら私は自分がなんの仕事をさせられようとしているのか疑問に思った。
 アニマルセラピーがどうのと言っていたけど、どう考えてもおかしい。これは明らかにそんなものじゃない。仮に動物の振りをして誰かに接すること仕事だったとしても、こんな方法で運ぶ理由がない。
 何かがおかしい。狂ってる。
 私がそう思っている間に、男の人は私をその薄い箱の中に入れた。
 梱包ベルトで箱を縛り、持ち上げられるように整える。
「よーし、こんなもんか。台車に乗せて……と」
 一瞬の浮遊感の後、私は大きな台車に乗せられて、休憩室から連れ出された。
 エレベーターに乗って、一階まで移動し、さらに先へと進んでいく。
 そこでは、トラックが待っていた。
「おー、遅かったな」
 そこには別の男の人が待っていた。おそらく私をこうして箱に入れた人の仲間だろう。吸っていたたばこを携帯灰皿に押し込む。
「新人なんでな。ちょっと準備に手間取った」
「あー、中身が変わったのか。そりゃ仕方ねえな」
 男の人たちにとって、それは当たり前のことなのか、こんな梱包を施した着包みの中に誰かがいることも驚くには値しないことのようだ。
 訳が分からない。
 男の人たちは私の入った箱を二人掛かりで持ち上げて、トラックの荷台に積み込む。
「さ、いくぞ」
 そういって、二人はトラックの扉を閉め、運転席の方に向かってしまった。
 私は暗闇の中、そのまま運送されていく。
 そして、それは長い長い道程の、ほんの始まりにすぎなかった。

着包み詰め&運送プレイ16

 何も見えないまま、微かな震動だけが私に伝わってくる。
 私は犬のお座りポーズのまま、長い時間をそこで過ごしていた。
 トラックの荷台というところは寒かったり暑かったりするものだとは思うけど、幸いいまの私には全く何も感じなかった。少し息苦しくはあったけど、暑さ寒さは感じない。
 普通これだけ包まれていたら暑く感じそうなものだけど、全身スーツがよっぽど性能のいいものなのか、全然暑くは感じなかった。
 全身ぴっちり覆われているのに、全然そんな感じがしない。強いて言うなら、周りの箱の方がよっぽど圧迫感を感じさせる。
(……私、これからどうなるんだろう……?)
 こうして運ばれてしまって、連れて行かれた先で何をされてしまうのか。
 もうこの状況がろくなものじゃないってことはよくわかっていた。
 鹿原さんは偶然を装っていたけど、まさかそんなわけがない。というか、それは別の意味で大変なことだ。もしもこれがあの人達の意図した状況だとすれば、少なくとも命の心配はないということなのだから、それだけは安心出来る。安心、出来ていいのかどうかは微妙なところだけど。
 ただ、このままの状態でずっと行くと、大変な事態が訪れることは明らかだった。

着包み詰め&運送プレイ17

 指先一つ動かせない私に、時間の経過がわかるわけがなく、もう何時間こうして車に揺られているかもわからなくなっていた。
 それでも、お腹の減り具合などから察するに、五時間くらい経っていると思う。
 これくらいの時間、こうしていると、じっとしていても喉は乾く。
 幸い、あの男の人が言っていたように、口のところに水分補給用の管があって、それを吸えば一応水分補給は出来た。
(……うぅ……あんまり呑みたくないけど……)
 幸い、水分補給に合わせて、その水分栄養も補給されているらしく、物凄くお腹が減ると言うことはなかった。
 問題はそれ以外のことだ。
 私は時々水分補給をしていく内に、その恐れていた事態が来たことを知る。
(うぅ……おトイレ……行きたい……)
 時間が経てばそうなることはわかっていた。それまでに解放されるんじゃないかと、甘い期待も抱いていた。
 けれど、やっぱりそれは甘い考えだったみたいだ。
「ウゥ……ッ」
 なんとか脱出出来れば、と考えたけど、とても自力で脱出出来るような状態ではなく、また、トイレのために解放してくれるような甘い考えも持てなかった。
 少しずつではあったけれど、私は確かに限界へと近づいていっていた。

着包み詰め&運送プレイ18

 もしこのままここで漏らしてしまった場合、どうなるのだろうか。
 いくらこのスーツや着包みが高性能でも、大量の尿を吸収、処分出来るとは思えない。本来なら、ちゃんとおむつとかそういうのを身につけてから着るべきだったんじゃないだろうか?
(でも……鹿原さんは何も言ってなかった……よね……)
 漏らすことを前提としているような気もする。
 いずれにしても、そんな簡単に漏らしたりは出来ない。子供ならともかく、もうそんな歳はとうに過ぎ去っているのだから。
 とはいえ、いくら私が我慢しようと、尊厳を確保しようとしても、ずっといけなければそれは限界に達するのが生理現象なわけで。
「ンゥ……ッ! ウゥっ……」
 私の呻き声が、私自身の耳に響く。
 身体を動かそうとして、ギシギシとスーツや着包みの音が鳴った。
 浮かんだ涙は、すぐに着包みに染み込んで消えた。
 それでも我慢を続けていたけど、不意に何かに乗り上げたのか、車事態ががくんと揺れた。
 それまでほとんど刺激らしい刺激を受けていなかった私の身体に、その刺激は想像以上に大きく響いた。
(あっ……だ、め……ぇ……っ!)
 私は普通ならば絶対にあり得ない状況で。
 絶対に取ったりしない体勢で。
 誰にも知られることなく。
 漏らしてしまった。
 じわりと暖かいものが広がって行く。
 ほんの微かに、アンモニアの匂いがした。
 惨めな気持ちで泣く私の声は、誰にも届かない。
 暫く私はさめざめと泣いていた。
 一度失禁を経験した私は、もう何を考える気力もなく、ただこの時間が過ぎ去るのを待っていた。
 漏らしたから痒くなったり気持ち悪く感じたり、色々あると思っていたけど、思っていたほどの変化はなかった。
 すでにもう漏らす前とほとんど変わらない状態ですらある。
(どういう素材なんだろ……)
 都合のいいことではあったけど、気になることではある。
 そして、こんなものを用意できることは、かなり凄い組織なのかもしれない。
 そんなところに誘い込まれてしまった自分のうかつさを呪っても呪いきれない。
 この技術を医療とか介護とかそういう分野に応用すれば凄いことになりそうなのに。そう考えると少し残念だった。
 そんな風に下らないことを考えていた。
 やがて疲れ果てて眠くなってきた私は、ゆっくりと意識を闇に溶かした。

着包み詰め&運送プレイ19

 トラックの運転席から降りた男は、さっそくその口に煙草を咥え、火を点けた。
 深く煙を吸い込み、美味しそうに吐く。
「ふぅー、やれやれ。予定よりだいぶ遅れちまったな」
「事故渋滞は仕方ねえよ。巻き込まれなくてよかったと思おうぜ」
 そこは小さな倉庫の駐車場だった。トラックの到着を受け、事務所の中から、一人の女性が顔を出す。
「お疲れさまー。大変だったね」
 煙草を吸いながら男は笑う。
「全くだぜ。鹿原さん、荷物はどこに置けばいい?」
 鹿原と呼ばれた女性は、穏やかな笑顔で応える。
「倉庫の中に入れてくれておいてくれれば、あとはこっちで片づけるよ。まあ、暫く休憩してからでいいよ」
 言いながらも、外に出て来た鹿原は、トラックの荷台へと回り込んだ。
「それより早く見て見たいから、開けてもいい?」
「いいぞ。いまの状態はわかってるのか?」
「うん。ずっとモニタリングしてたからね。いまは疲れて寝ちゃってるみたいだけど」
「そりゃそうだろ。普通ならあと五時間は早く着いてたはずだし。不足の事態が起きていたらと思うとぞっとするけどな」
「まあ、これでとりあえずこの程度の長時間輸送にも耐えられることがわかったからいいんじゃないかな!」
 嬉々とした調子の鹿原は言いながらトラックの扉の鍵を外し、扉を開放する。
 薄暗い荷台の中に、その箱はあった。

着包み詰め&運送プレイ20

 箱は外から見ると、本当にただの人形が入っているケースのように見えた。
 透明なカバーの上から宣伝文句のか書かれた薄い箱が覆っている。その中には、「おすわり」の姿勢で収められた犬の人形の姿があった。
 鹿原はそれに近づき、楽しげに箱を手の平で叩く。
「いやー、やっぱりいいね! この中でいまもひっそり生きている子がいると思うと興奮するよ!」
 子供のようにはしゃぐ鹿原に対し、ドライバーの男たちは苦笑いを浮かべる。
「あけすけにも程があるぞお前……まあ、いいけど」
「もう販売先は決まってるのか?」
 その質問に、鹿原は渋い顔をする。
「それが、まだなんだよねー。やっぱり人型の方が良かったのかな?」
「まあ、ただでさえ少数嗜好だろうしなー」
「実際に動いているところを見たら、違うんじゃないか?」
「そうだよね! じゃないと困るし……でもその前に、まずは教育から入らないとね!」
 鹿原は箱の窓の前に座り、にっこりと中に向けて笑いかける。
「この子もすぐに自分からこうやってきぐるみに入れられて、箱に詰めてくださいって言ってくれるようになると思うよ」
 その時が楽しみだね、と鹿原は微笑んだ。

終わり
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