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白日陰影

箱詰系、拘束系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

倶楽部の箱詰仕事 4

 箱詰められたままで新規会員の案内を行う。
 箱詰倶楽部の技術班の技技名さんの提案は要するにそういうことだった。
「仕事内容が限定されているというか……箱詰倶楽部以外ではそもそも不可能ではありませんか?」
「いやいや、そんなことはないさ! 箱詰倶楽部が一番いいのはもちろんそうだけどね。なにせ箱詰められているということそのものが売りになるわけだから。……でも、他の業界でも可能だと思うよ!」
 いや、無理でしょう。
 そう断言して斬って捨てたかったけど、それより前に社長がそれに賛同する。
「しずなちゃんしずなちゃん。ほら、携帯電話のお店で案内してくれるロボットがいるじゃない? 知ってる?」
「知ってはいますが……?」
「あれを箱に置き換えればどうかしら?」
「……なるほど」
 社長が言わんとしていることをなんとなく理解する。
 箱詰められていること自体が売りになるわけじゃないけど、箱詰められていることを伏せるのであれば、優秀なロボットのような扱いで案内役を務めることは出来るだろう。
「いずれにせよ、周りのサポートは必須でしょうし、箱詰倶楽部以外で仕事にするには難しそうですね」
「まあそれはおいておいて! しずなちゃんには倶楽部の見学者を、箱詰め状態で案内してもらうことになるわ! 技技名、そのための道具を至急制作してちょうだい!」
 社長のゴーサインが出て、技技名さんがそれに全力で応える。
 私はせめてあまり恥ずかしくない格好で箱詰めて欲しいと思いつつ、その道具の開発を待つことになった。
「できたよ!」
「早すぎませんか技技名さん」
 技技名さんに呼び出され、呆れと共にそう言わざるを得なかったのは、会議でそれをやることが決まった日の翌日のことだった。
「はっはっは! 基本的には既存の技術の応用だしね! 完全自律行動を目指すならともかく、中からある程度の操作を前提とするなら、そう難しいプログラムでもなかったし」
「プログラムまで一日で組んだんですか」
 そういうスキルを持たない私にはよくわからないけど、プログラムというのはそんな短時間で組めるものじゃないはずだ。ほんと、この人はなんで箱詰倶楽部なんかで仕事してるんだろうか。
 そういう意味では社長も謎だ。一日の大半を箱の中で過ごしているはずなのに、いつもいつの間にかものすごいところとの繋がりを引っ張ってきたりする。私にとってはいつも本来の業務を越えた仕事を回してくる迷惑極まりない上司だけど、世間一般的に見たらあり得ないくらい優秀な人だった。
 専属医のひなさんは外科手術から内科の診断まであらゆる医療行為を修めているという話だし、倶楽部の専属緊縛師の牧上さんは、一般の人も見るような芸術祭で緊縛をテーマに賞を取ったという話だし、『オーソドックス箱詰め』コース案内担当の間木和さんは副業でやってる投資の収入が億を超えたとか、言ってたような……。
 うん、この倶楽部の人たちはみんなどこかおかしい。
 ほんとなんで箱詰倶楽部で働いているのやら。
 それはさておき、早速技技名さんの作った特別製の箱に詰められてみることになった。
「透明なパーツは以前にも使ったものですね」
「うん! いまは完全な箱だけど、こうして用意したライトを当てると……」
 それまで傷一つ無い綺麗な壁面をしていた箱が、技技名さんが持ってきたライトを当てると、切り込みが生じてパーツにばらせるようになった。四角い箱をばらしていくと、中にちょうど人が一人収まる程度の隙間があることがわかった。
「前はライトに当てて接合していたように記憶していますが……」
「接合する時もライトを使うよ! 当てる光にちょっとした違いがあってね! 剥離用ライトに当たりに行けば、一人でも解除出来るってわけさ! ……組み立てはひとりじゃできないから、不完全なんだけどねー」
 完全に一人で詰められることも抜け出すことも出来るようにしたかったらしい。
 自動組み立て装置はもうあるけど、箱の材質が特殊だからそれをそのまま用いることは出来なかったんだとか。
 それが本筋じゃないはずなのに、どこまでこだわってるんだろう。やっぱり技技名さんが一番箱詰めに対する拘り含めてヤバい人かもしれない。
「とりあえず入ってみて!」
「はいはい……裸にならなきゃだめですか?」
 案内する関係上、初めての人の前で裸になって出ることになる。それはさすがにちょっと恥ずかしい。
 服を着ていても問題ないはずだったけど、社長は裸で詰められることにこだわった。
「時にはラバースーツとか、慣れてきたら緊縛されて、というのも楽しいけど、箱詰めの基本はやはり全裸だから!」
 というのが社長の主張である。
 倶楽部に初めて来る人を案内する以上、基本であることが大事と言われてしまうと、それ以上反論する気も失せる。
 体勢は体育座りの形になるから、一応股間や胸は隠せる体勢だからまだマシか。
 私は大人しく身に纏っていた全ての服を脱いで、箱の底面の部分に腰を下ろす。
 底面はお尻の形にくぼんでいて、きっちりはまり込んだ。
「あ、そうそう。先にこれ身につけて」
 そう言って技技名さんが渡してきたのは、ヘッドギアのようなものだった。

つづく

倶楽部の箱詰仕事 3

 それは例えるならカタツムリに近い形状をしていた。
 小さな車輪のついた台の上に、スーツケースのような細長い長方形の四角柱が接続されている。台車は一般的に使われているような原始的なものではなく、前後左右自由自在に動けるようで、その動きの滑らかさも相当なものだった。少し空中に浮いて滑って移動していると言われても信じてしまいそうなほどだ。
 そもそも誰かが押しているわけでもないのに、その台車は自動的に動いている。機械が仕込まれているのだろうけど、誰かが遠くで見ていて動かしているのだろうか。
 そんなハイテクな台車によって、ほとんど震動なく運ばれているスーツケースのようなもの。それに女の人が詰められているのがなんでわかったのかといえば、それは単純な話で、見ればわかったからだ。
 四角柱はなんと透明な素材で出来ていて、中に詰められている女性の姿が丸見えだったのである。思わずごくりとつばを飲み込んだ。それはいままで私がずっと夢見た光景を何重にも上回る光景だった。
 女の人が何を考えているのか、表情からはわからない。その顔はヘッドギアみたいなごつい機械に覆われていたからだ。体育座りで身体を縮め、できる限り小さくまとまっている。ヘッドギア以外には服を着ておらず、透き通るような白い肌が光を反射して目に眩しい。
 自分が裸であるわけでもないのに、思わず赤面してしまう。かすかに見える女の人の頬も赤かったから、恥ずかしくないわけではないようだけど。
 私が食い入るように見つめる中、透明な箱の中に閉じ込められた……箱詰められた女の人の口元が動いた。
『お待たせしました。今日の案内役を務めます、真藤馬と申します』
 台車にスピーカーでもついているのか、案内役の人――真藤馬さんの方から声がした。それはさっき電話で聴いた声と同じで、どこかくぐもった声だった理由がわかった。
「よ、よろしくお願いします……」
 とりあえず頭を下げて挨拶する。
『驚かせて申しわけありません。現在、特別箱詰案内キャンペーン中でして……このような格好でご案内いたします』
 そういえばメールでそんな説明を受けたような。
『それでは、これより箱詰倶楽部の見学ルートをご案内いたします。私の後に付いてきてください』
 案内人がそう言うと、台車がくるりと反転してエレベーターの中へと戻っていく。そういえばエレベーターのボタンを押しているわけでもないのに、自動的に扉が開いたのは、やっぱり遠隔操作で誰かが動かしているんんだろうか。
 それとも、そういう機能が台車にあるのか。あとで聴いてみようかなと思いつつ、私は奇妙な案内人の後についてエレベーターに乗り込んだ。

つづく

倶楽部の箱詰仕事 2


 箱詰倶楽部という倶楽部があることを知ったのは、そういうものに興味を抱いて検索をかけたことがきっかけだった。
 最初は悪戯かジョークか何かだと思っていたのだけど、その倶楽部は真面目な運営をされている会社のようで、しっかりと国の承認も得ている会社のようだった。
 そうなると実際に行ってみたくなるのが、そういう趣向を持つ者としては必然の流れで、幾度かメールのやりとりを交わしているうちに、見学に行くことになってしまった。
 フェチの集いのようなところには行ったことがあっても、こういうSMバーみたいなところには訪れた経験がない。
 意を決してやって来たその倶楽部のビルは、外見はごく普通のオフィスビルのようだった。看板を掲げる必要がないからか、探せば見つけられるけど偶然には見そうにない、わかりづらいところに、ずいぶん小さな文字で「箱詰倶楽部」と表示があった。
「ここね……」
 ごくりと生唾を飲み込み、緊張を感じつつ、私はその倶楽部の入り口をくぐった。
 ホテルのエントランスロビーのように広い空間がまず私を出迎えてくれた。エントランスの一角には、意味がよくわからないけど透明な箱を積み上げたオブジェのようなものがあった。箱詰倶楽部の象徴みたいなものだろうか。それにしてはなんだか四角い箱を積み上げただけで芸術性があるようには感じられない。そのオブジェの説明が書かれている看板らしきものがあったけど、とりあえずそっちには行かずに受付へと向かう。
 受付は無人だった。呼び鈴か何かがあるのかと思って探してみたら、企業の受付とかでよくある電話機が置いてあった。『初めて来社された方は1番へおかけください』というメモに従って、内線電話をかける。
 すぐに電話を取る気配が受話器越しに聞こえてきた。
『……いらっしゃい、ませ。ようこそ、箱詰倶楽部へ』
 落ち着いた女の人の声だった。けど、少し声がくぐもっているような感じがする。聞き逃さないように受話器に耳を強く当てながら言った。
「今日、見学の予約をしていた者ですが……」
『お待ちしておりました。すぐ参りますので、エントランスでお待ちください』
 その言葉を最後に通話が途切れる。私は受話器を置いて、少し待つ間にさっきのオブジェの説明を見に行くことにした。
 近付いて写真付きの説明を読んで、驚愕する。
 なんとただのオブジェだと思っていたその透明な箱は全て箱詰めプレイのための道具であるらしい。箱詰めにした状態が外から見れるようになっているとか。
 実際のプレイ風景が写真になっていたのだけど、そこには様々な体勢で透明な箱に閉じ込められた女性達が映っていた。
 箱詰めされているにも関わらず、空中に浮いているかのような彼女たちの姿に、私は思わず息を呑む。それは異常な光景ではあったけど、同時にとても美しいと感じてしまったからだ。こんなプレイが当たり前に行われているというこの倶楽部の特異性に改めて感心する。
(これなら……すごく楽しめそうね)
 そう思っていると、エレベーターの表示が上から降りてくるのに気づいた。どうやら案内人さんが降りてくるようだ。
 今日は倶楽部の色んな場所を見せて貰うことになっている。果たしてどんなプレイが行われているのか、興味は尽きない。
 エレベーターが一階に到着し、ドアが開く。
 そのエレベーターに乗っていた人の姿を見て、私はひどく驚いた。

 ひとりの女性が、箱詰めされた状態で移動してきたからだ。

つづく

倶楽部の箱詰仕事 1

「箱詰め状態で仕事がしたい」
 ある日の箱詰倶楽部の会議中、社長が唐突にそんなことを言い出した。
 会議場が静かな空気に包まれる。
「他に意見やアイデアのある方はいらっしゃいませんか?」
 会議の司会進行を務める私は、そうその場に集まっている従業員に向けて聴く。
 この場に集まっている従業員は皆重要な役職についているレベルの従業員であり、それゆえに社長の突拍子もない言動には慣れている人ばかりだ。
 現に社長の発言に対し、誰も反応しておらず、真面目に企画やイベントのアイデアを考えてくれている。
 すると社長が不満そうに机を叩いた。
「ちょっと、しずなちゃん! 無視しないでよ~!」
 子供か、と思いつつ溜息を吐く。
 一応、会議は会議でも、今後のイベント企画などの、新しい意見を募っていたタイミングではあったけど、社長の発言が唐突なことに代わりは無かった。
「……社長、発言は挙手してからお願いします」
「むー。お堅いんだから……そこがいいんだけど!」
 社長は手を高く挙げて発言の許可を求める。
 私は仕方なく社長に意見を言ってもらうことにした。
「箱詰め状態でも仕事が出来るようになれば、もっと長く箱詰めを楽しめる人もいると思うのよ」
「お言葉ですが、すでにそれは可能ではありませんか? 箱詰め状態と言っても完全に手を塞ぐ必要はありませんし、ヘッドギアの画面を見つつ、コントローラーのようなもので操作すれば……」
 メールチェックや簡単な返信くらいならできそうではある。
 妥当な意見だと思うのだけど、社長はそれでは不満そうだった。
「うーん。それはそうなんだけど……もっとこう、箱詰められてるっていうのがそのまま仕事に繋がる感じが欲しいの!」
 むちゃくちゃなことを言う。
 私は呆れて言葉もなかったのだけど、技技名さんにとってはそうではなかったようだ。
「仕事内容は限定されるけど、ひとつアイデアがあるよ! 要は、箱詰められている状態がそのまま仕事になればいいんだよね?」
 嫌な予感しかしない。
 そう思いながら技技名さんが出すアイデアの内容を聞き、やっぱりその予感は的中した。
 社長が実に楽しげな表情で、意味ありげに頷く。
「……そうなると、現状、うちの倶楽部でその仕事ができそうなのは、ひとりしかいないね!」
 キラキラという擬音が相応しいほどに輝く目と、視線が合った。
 やっぱりこうなるのか。
「お願い、しずなちゃん!」
「お断りします」
 いつものやりとりを交わしつつ、私は結局逃れられないのだろうなと溜息を吐いた。

つづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 準備編 おわり

 公園に出ることの出来る扉までの、建物内の廊下は広く作られている。
 ヒトイヌ状態のふたりが並んで進める程度には、その廊下の幅は広かった。
 このふたり、美雲さんと女島さんはヒトイヌになるのが初めてではないため、肘と膝を使った四つん這いでの移動もスムーズに行っている。ただ、今日は普段より身に纏っている拘束具が多いため、少し動きにくそうではあった。
 私は二人の首輪に繋いだリードを持ってはいるものの、テンションをかけないように注意していた。そういう立場でない人間がテンションをかけて引くと、それは虐待と変わらない。
 リードを装着したのはあくまで雰囲気作りの一環なので、それを用いて苦しみなどを与えてはいけないのだ。このようにヒトイヌ公園の従業員には接客規定がある。それに違反した場合は「一定期間ヒトイヌとして従事する」のような罰則もあるので気をつけなければならない。
 慎重に二匹を誘導しつつ、私は説明を行う。
「まずゲームの最長時間は五時間を設定しています。その時間が過ぎても決着がつかなかった場合、引き分けということで、残りの時間はお二人ともヒトイヌ状態で過ごすことを提案させていただきます。ゲーム終了段階でヒアリングを行いますので、その時の状態によってご判断ください」
 正直な話、公園側としては二人には時間いっぱい二匹のヒトイヌとして動き回ってもらい、引き分けでそのまま二匹ともヒトイヌのままで過ごしてもらうのが都合が良いのだが。
「ゲームの勝利条件は拘束具をすべて外すことです。手枷、足枷、前後のバイブ、胸部サポーター、開口具、そして首輪。全部で7つですね。それを相手よりも先に外すことで勝利となります」
 ただし、と私は付け加える。
「ゲーム終了までは移動は四つん這いのままするようにしてください。でないと足枷を外した段階で有利不利が出過ぎてしまいますから」
 ヒトイヌの二足歩行の禁止はヒトイヌ公園の基本でもある。
「高いところにあるものを取る時に関しては、後ろ足で立ち上がることは可能です。いずれにせよ常時モニタリングはしておりますので、禁止事項に触れそうになった場合は警告させていただきます。その場合は速やかに指示に従うようにしてください。度重なる不正行為は失格となり、ゲームに敗北することとなります」
 二匹のヒトイヌは真剣に話を聴いている。普段は仲のいい二人だけど、互いへの対抗心は強い。これは良いゲームが行えそうだ。
「敷地内は自由に移動していただいて構いません。鍵の隠し場所は敷地内のどこか、ヒトイヌの状態でも取れる場所にあります。鍵をひとつ見つけるごとに他の鍵の在処に関するヒントをお伝えしますので、まずは一つ目の鍵を探しやすいところから探すのをおすすめします」
 そこまで説明して、私はゲーム上、最も重要なルールを二人に伝えた。
「なお、拘束具の解放タイミングは任意で選択することができます。鍵を見つけた際、『その場で外す』か、『次の鍵を見つけるまで保留するか』です」
 ふたりは不思議そうに首を傾げる。次の鍵を見つけるまで保留する意味がわからなかったのだろう。当然、そのふたつには違いがある。
「『その場で外す』を選択した場合は次の鍵の在処のヒントは通常のもので、たとえば『ヒトイヌが走って遊ぶところ』のような抽象的なものになります。ですが、『次の鍵を見つけるまで解除を保留する』を選ぶと大ヒントとして、鍵のある場所を『運動場の北の端』のようにほぼそのまま知ることができるのです」
 これは、簡単に拘束具を解かれないための処置であった。
 拘束から解放されるためのゲームなのだから、拘束を解いていくのは仕方ない。しかし同時にこの公園はヒトイヌ公園であり、参加者にはなるべくヒトイヌの姿のままでいて欲しいのも事実。単なるラバースーツを着た人間の四つん這いを見たい客が集まっているわけではないのだから。
 この辺りの議論は首脳部でも散々交わされたらしく、ゲーム性を高めつつなるべくヒトイヌ姿を維持する方法として考案されたのが、この解放タイミング選択式だった。
 特にこのふたりの場合は、相手との一騎打ちだ。鍵を探すタイムロスはなるべく避けたいはず。拘束を外して機動力を増すよりヒントを得る方を優先するだろう。
「なお、保留した拘束具の解放は次の鍵を見つけるまで行えないことにご注意ください。また、次の鍵でも拘束具の解放を保留した場合は、その前の拘束具の解放も一緒に保留されます。任意の拘束具の解放のみ行う、ということはできません」
 そこまで説明したところで、扉についてしまった。そこで立ち止まる。
「最後に、ゲームの『お邪魔要素』に関してご説明させていただきます。現在、この公園内にはお二方と同じようにヒトイヌとなって遊んでおられる方が十数名いらっしゃいます。その方々に取り付けている首輪に近付くと、お二方に取り付けた責め具が稼働するようになっております。その強さは周りにいるヒトイヌの数によって変わります」
 つまり、ヒトイヌが集まるような場所に行けばそれだけ責められる頻度は高まる。
 それを踏まえて二人は行動を定めなくてはならない。我慢して行くか、それともなるべく他のヒトイヌと合わないルートを選ぶか。ふたりがどんなルートを選ぶのか、非常に楽しみだ。
「それ以外にも装置が起動する条件はございますが、それらは実際に探索していただいた方が早いでしょう」
 私は言いながら扉を大きく開いた、野外の風が吹き込んでくる。ふたりの首輪からリードを取り外し、手にまとめた。
「それではこれより、ヒトイヌ拘束脱出ゲームを始めます。3、2、1……」
 ふたりの、いや、二匹のヒトイヌが解き放たれる。
「ゲーム・スタート!」
 私の合図と共に、二匹は競い合うようにして公園内へと飛び出していった。

準備編・おわり
探索編につづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 4

 このヒトイヌ公園におけるアナルバイブの存在は大きい。
 ヒトイヌに扮するためには尻尾の存在が何より不可欠であるし、それはヒトイヌとなる者の意思によってある程度動かせるのが望ましいとされている。
 加えて、ヒトイヌ拘束によって不自由な状態でも、自由に動かせ、かつ快感を得ることできるその部分の存在は、とても重要なのだ。
 そのため、この公園独自に作られたアナルバイブには、様々な機能が搭載されている。
「今回お二人に着けていただくアナル尻尾バイブは、このゲームのために作られた特注品です。基本的な機能の他に、様々な補助機能が搭載されています」
 基本的な機能とは、挿入後容易に抜けなくするためのバルーン機能。
 本人が括約筋を締めたり緩めたりすることで、外側に取り付けられているふかふかな尻尾が左右に揺れたり、まっすぐ立ったり丸まったりする感情を表現する機能。
 そして、体内に潜り込んだ部分が伸縮したり、震動したりして快感を与える愛撫機能などだ。
 それらの基本機能以外にも、このアナル尻尾には機能が搭載されている。
「一つは、遠隔でバイブの愛撫パターンを変更できる機能です。これは後ほど膣内に挿入させていただくものにも搭載されています。……これがゲームにどう活かされるかは説明せずともおわかりでしょう」
 遠隔で操作できるということは、一緒に行動していない相手に対して影響を与えることができるということ。つまり、ゲームの中には相手の身につけているバイブを操作するものもあるのだ。それを用いて相手を快楽に浸してしまえば、勝利に大きく近付くことになる。
 逆にそれを防ぐための手段も用意されているが、それに関しての説明はゲームが開始されてからだった。
「もうひとつは……いえ、これは実際に用いられる時のお楽しみとしておきましょうか。少なくとも健康には配慮された作りになっておりますので、ご安心ください」
 もうひとつの機能の説明はこの場ではしないことにした。彼女たちがその機能を使うかどうかはわからない。ふたりの傾向からすると使わない可能性も高かったし。
 私はふたりのお尻にアナル尻尾を装着する。ふたりは敏感になっているそこに異物を挿入される感覚に、声を殺して身悶えていた。バルーン機能を使って身体の内側で膨らませると、もう尻尾は抜けなくなる。
 思わず強く締め付けたのか、二人の尻尾がまっすぐ立ちあがった。すでにヒトイヌの状態はほとんど完成していたけど、こうして尻尾をつけるといよいよ犬に見えてくるのだから、やはり尻尾は象徴的で重要だ。
 続いて手に取ったのは、金属製のブラジャーのような形をしたものだ。それをラバースーツの上から二人の胸に被せるように装着する。
「こちらのブラジャーの内側にはマッサージ用の震動パッドが仕込まれています。アナルバイブと同様、遠隔操作出来るようになっております」
 つまりゲームにおけるお邪魔用アイテムというわけだった。本当は素肌に直接着けた方が効果が高いのだけど、ゲームの性質上、ルート次第で外せるようになっていなければならない。
 上から着けるという形にすることで、『ラバースーツから解放されるためにはそれも外さなければならない』という形になることが重要でもあることだし。
 ふたりがこれまでこの公園でやって来たプレイで、ここまで厳重に拘束され、責め具を取り付けられたことはない。ふたりの顔に不安が滲み出すのを、私は見逃さなかった。
「それでは最後の器具を装着させていただきます」
 最後、と強調することでそれさえ我慢すればいいという気持ちにふたりを誘導する。もとより対抗心を燃やすあまりこうなっているようなものなので、こういえばふたりは相手よりも先に根をあげるわけにはいかないと奮起してくれる。
 最後の器具、つまりは膣に入れるバイブを取り出してきてふたりに示す。
「こちらのバイブにもこのゲーム特有の機能がございます。このように……」
 私はふたりに装着する予定のバイブの、彼女たちに挿入する側とは反対側の端同士をくっつける。すると、二つのバイブは繋がって双頭バイブのような形になった。片方の挿入部は太くなり、もう片方の挿入部は一定の太さを保つ。
「どちらが太くなるかは、ゲームの結果次第となります」
 これによって、ヒトイヌ状態のままでもどちらかが相手を犯す――否、責めることが可能になるのだ。
 ゲームの展開次第ではなかなか重要な意味を持ってくる機能である。
 挿入するためにふたりの膣の様子を探ってみると、これまでの拘束による影響か、ふたりともすっかり濡れていた。それぞれ相手を責めたいという意識はあるとはいえ、本質的にはマゾ寄りなのでは無いかと思う。
 それを潤滑油とするべく、バイブをそこに擦りつけるようにして刺激すると、さらに奥から愛液が零れてくる。呻いて喘ぐふたりの……いや、二匹の痴態を眺めつつ、程よく馴染んだところでバイブを挿入する。
 二匹のヒトイヌはすでにかなり出来上がっているようで、がんばって快楽を堪えている様子だった。
「お疲れ様でした。準備完了です。それでは改めましてゲームのルールを説明させていただきます」
 言いながら場所を移動するため、二匹の首にいつもの首輪をつけ、そこにリードを繋いだ。場所を移動しながら説明を続ける。

つづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 3

 ふたりの前に用意された拘束具は、基本的なヒトイヌ拘束に必要な道具ばかりだった。
「まずはこちらのラバースーツを来ていただきます」
 首から下の全身を覆うラバースーツ。
 女島さんが青色、美雲さんが赤色のラバースーツを身につけていく。ふたりのサイズにぴったり合うように作られているため、背中にあるジッパーをしっかりうなじまで引き上げると、彼女たちそれぞれ特徴のある身体のラインをはっきりと浮かび上がらせる。股間には最初から穴が開いていて、一番大事な部分を隠せていないのだが、ここはあとで別の器具で塞ぐので問題なかった。
 このスーツは手の先端が丸く作られていて、拳を作った状態から動かせない。そのため、これ以降彼女たちは手先を使った作業ができなくなる。私はもうひとりの手伝いの女性職員と一緒に、ふたりの着付けを同時に手伝っていく。
 まずは両手・両足の拘束だ。
 普段はベルトなどを使って固定するけど、今回に関してはよりハイテクなものを用いることになる。
 手首と腕の付け根、足首と足の付け根に金属製の枷を取り付ける。四つん這いになってもらい、それぞれの枷が接するまで腕と足を曲げてもらった。するとそれらの枷はそれぞれ左右で吸い付き、女性の力ではとても外せない力で動かせなくなる。
 肘と膝にはその枷に繋がるような形でクッションを取り付け、手かせ足かせが外れれば自動的に外れる仕組みだ。これで枷が外れるまで、二人は強制的に四つん這いで動かざるを得なくなる。
 続いて取り付けるのは、顔の下半分を覆う開口具だった。マウスピースのように上下で分かれるようになっていて、物を多少は咥えることはできるけど、舌を抑えてしまうのでまともに喋ることはできない。犬の顎の形に近付くように多少出っ張っているため、多少がんばればゴムボールくらいなら咥えて運ぶことができるはずだ。
 続いて、髪の毛が邪魔にならないように、軽くまとめてヘアバンドで固定する。さらに容易なことでは外れないヘッドホンを耳に被せる。このヘッドホンには例の犬耳がつけられるようになっていて、ここから流れる実況音声が二人の行動の指針となる。本来の耳がヘッドホンで隠されたことにより、より二人の姿は犬に近付いた。
 だいぶ犬の姿に近付いてきた二人。二人は互いをヒトイヌにして愛でたいという趣味の持ち主だが、自分たちがヒトイヌになることに忌避感があるわけじゃない。
 そのため、徐々にヒトイヌに近付いていくにつれ、その呼吸が荒くなり、頬が赤くなっているのは明らかだった。本当は二人を同時に管理できるご主人様がいればいいのではないかとも思うが、二人がそれを求めていない以上、公園側からはプレイ環境を提供することだけに徹するべきだった。
 さて、ここまででも十分にきつい拘束だけど、いよいよ重要な部分の拘束に取りかかる。
 と、その前に。
「お二方、排便の方は済ませておいででしょうか?」
 そう問いかける。普通ペットプレイを行う場合、ヒトイヌになる方は予めそういったことを済ませてからくることが多い。二人も普段はそうしているはずだった。
 けれど、今回はお互い相手をヒトイヌにしようと考えていたはずで、その準備をしていない可能性がある。
 無論、事前に準備していなくても公園ではそういう処理もできるため、来てからやる人がいないわけではないのだけど。
 果たして今日の二人はというと、それぞれ気まずそうに首を横に振ったのだった。
「いかがいたしますか? 処理なしでも可能ではありますが……排泄していない場合、相応のリスクがございます」
 便が溜まっているところにヒトイヌ用の尻尾を挿入した場合、腹痛を起こしたり、催したりという弊害が起きることが考えられた。そのことはふたりには説明済みなため、どんなリスクかはふたりもよくわかっているはずだ。
「無論常時モニタリングはしておりますので、体調の悪化で危険と判断した場合はゲームを中止いたします。その場合は中止になった原因を作った方の負けということで……」
 二人はぶんぶんと首を横に振った。
「私どもの手で処理させていただいてもよろしいでしょうか?」
 その提案に、二人は少し躊躇いつつ、目と目を合わせてから揃って頷いた。目と目で会話できる辺り、張り合いはしても本当にこの二人は仲がよいのだと思う。
 ともあれ、承諾は得た。
「それではこれより浣腸を施させていただきます」
 そう言って私はふたりを連れてトイレへと移動する。
 実際のところ。
 私たちの手で処理をする必要は無く、拘束を始める前にトイレに行っておいてもらえばいいだけのことだった。それをあえて拘束してからの順序にしたのは、ふたりに第三者からの干渉に慣れてもらう、という密かな公園側の目論見があったりする。
 二人は利用者であり、二人の要望は最大限叶えるべきだ。けれど同時に、利用者自身もまた一種の客寄せ要素の一つである以上、できれば色々な人と交流してくれる方が公園側としてはありがたい。
 どうしてもダメそうなタイプもいるが、ふたりは慣れれば第三者との交流も可能になるのではないかと期待されている人材だった。
 そのため、決して強制的な誘導はしないが、徐々にそちらの方向になりうる誘導を行うことが公園側の方針として決まっているのだ。
 排泄処理を従業員を介して行うのも、その一環である。迂遠ではあるとは思うが、そういう細やかな企業方針でやっていけているようなものなので、従業員のひとりである私もそれに従って行動する。
 処理自体はあくまで事務的に、淡々とこなし、二人に必要以上の羞恥心を与えないようにしつつ、第三者の存在に慣れさせる。
 再び部屋に戻ってきて、お腹の中がすっきりした二人に用意したのは、巨大なギミック付きアナルバイブだった。

つづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 2

 この公園ではたびたび大規模な催し物を行っている。
 公園にはフリーのヒトイヌやご主人様希望の利用者が集まるが、常に大盛況というわけではないため、公園側で集まる機会を設けないとすれ違って会えない場合が多いからだ。
 イベントとして公園側が日時を区切ることによって、触れあいを求める利用者が集まりやすくなり、逆に触れあいを希望しない利用者はその日を避けることで気楽に楽しむことができる。実際、このイベントを通してパートナーを得たパターンは多い。
 今回私が女島さんと美雲さんに提案するゲームは、このイベントで実際に行われたもののひとつだ。ふたりはすでにパートナーがいる身だし、お互い以外に触れあう気がなかったようだから参加していなかったみたいだけど。
 私はふたりを支度室に連れて行き、準備を進めてもらいながら説明を始める。
「それではゲームの内容についてご説明させていただきます。簡単に申し上げますと、これからおふたりにはヒトイヌ拘束状態になっていただきます。その拘束からの脱出を、お相手より速く目指すのです」
 内容はいまだ明確でなくとも、勝負事だということであることは確かなためか、ふたりは真剣な表情で私の説明に耳を傾けている。
 服を脱ぎながら。
「拘束具はすべて鍵を用いて固定いたしますので、おふたりにやっていただくことはこの公園内からその鍵を見つけ出して拘束具を外す、ということになりますね」
 女島さんはその健康的な張りのある肌に、タンクトップ型の日焼けが残っているのを惜しげもなく晒す。運動するにはさぞ邪魔であろう大きさの双丘が揺れている。着やせするタイプ、というか、着ていたのがスポーツブラであったのが大きい。それから解放された女島さんの乳房は、重力に逆らって綺麗な形を維持していた。
「鍵は公園内のどこかに隠させていただきます。ヒトイヌ拘束の状態で取れないような場所には設置しませんのでご安心ください。拘束具の鍵はこのように……」
 私は一番わかりやすい首輪を取り出した。それを自分の首に巻き付けると、自動的に鍵が閉まる。この状態だと外せないことを軽く示してから、鍵を手に取る。それは一般的にいう鍵の形をしていたけど、それは首輪に触れさせるだけで首輪の鍵が外れて落ちた。空中で首輪をキャッチする。
「と、触れさせるだけで拘束具を外すことができます。落ちた拘束具は後ほど従業員が回収いたしますので、そのまま放置していただいて大丈夫です」
 美雲さんは小柄な体格に相応しくというべきか、なだらかな曲線を描く輪郭をしていた。女性らしくないというわけではなく、むしろ女性らしいのだが。こちらはまったく日焼けしておらず、人形のように白い肌が特徴的だった。日焼けしていないのも相成って華奢に見えるが、室内トレーニングはしっかり積んでいるのか、脆弱な様子はない。パートナーとの触れあいには体力がいるから、そのためかもしれない。
 つくづく、本気でお互いを愛し合いたいふたりなんだと実感した。
「ゲーム中、お二人にはこの犬耳を装着していただきますが、この犬耳には状況をお知らせするためのスピーカーが取り付けられています。そこから流れますアナウンスを参考に鍵を探してみてください」
「……なるほど、面白いじゃない」
「……絶対負けない」
「それと、敷地内には様々な形でお助けポイントがあります。そこで課される条件をクリアすればゲームに有利になりますので、挑戦してみてください」
 ただし、と私は釘を刺す。
「くれぐれもご無理はなさいませんように。人によっては嫌悪されるような条件もございます。仮にその場所での条件をクリアできなかったとしても、それが理由で即座にゲームに敗北するような致命的なことは起こりません。あくまでお助けですので、得られれば幸運程度にお考えください」
 こう言っておかないとパートナーとの対抗心のあまり、生理的に嫌悪するような条件にも挑んでしまいかねない。そのあたりは自己責任ではあるのだが、それでこの公園自体の印象が悪くなるようなことがあってはならない。
 一応この二人が対象ということで、生身の男性相手のお助けポイントは予め排除してあるが、念には念を押しておいた方が良い。
 ふたりが頷くのを確認してから、私は次の段階に移ることにした。
「それではこれからお二人にヒトイヌ拘束を施させていただきます。区別のため色は違いますが、全く同じ拘束ですので、有利不利はありません。ご安心ください」
 裸のふたりの前に、大量の拘束具が運び込まれてきた。

つづく

ヒトイヌ拘束脱出ゲーム 1

 ヒトイヌ公園――本格的なヒトイヌ拘束を気軽に、そして大胆に体験できてしまうその施設。
 密かな愛好家が全国から通い詰め、時にサクラとしての野良のヒトイヌも放たれているこの公園。見学者として入場することもできるが、ヒトイヌを連れて、もしくは自身がヒトイヌとなって入ることで利用料が格安となるため、大抵の利用者はパートナーを連れて来るか、個人でヒトイヌを楽しみにくることがほとんどだ。
 そんな施設で働いている私は、現在とある珍しい利用者の受付をしているのだが、とても困ったことになっていた。
 その利用者は二人組だった。二人組の利用者は大して珍しいことではない。
 珍しいのは。
「前回は私がヒトイヌになったんだから、今回は女島さんがヒトイヌになるべきよ」
「この前のレポート提出を手伝ってあげたんだから今回は美雲っちがなって欲しい」
 その利用者がふたりとも女性で。

 そのどちらもが『相手をヒトイヌにして愛でたい』と思っていることだった。

 女島さん、と呼ばれた女性は栗色のショートカットが特徴的で、そのしなやかな肢体は新体操か何かをやっていたことを思わせる躍動的かつ健康的な身体だった。
 美雲っち、と呼ばれた女性は黒色のふわふわした癖っ毛が特徴的で、小動物チックな小柄な体型で頭のてっぺんが相方の肩までしか届かないほどの差がある。
 客観的に見れば、美雲という女性の方が体格もあって犬っぽい感じはするが、一方で女島という女性の方も中々いいヒトイヌになりそうだという印象がある。
 ちなみに女性二人の組み合わせの利用者は案外少なく目立つため、利用者や従業員の間では結構注目されている二人だったりする。
 こんな施設に二人連れだってやって来る時点で、相当以上に仲の良いふたりではあるのだが、どちらもパートナーをヒトイヌにして愛でたいという願望持ちであるというのが、二人の場合は大変問題のあることだった。
 実際どちらがヒトイヌになった場合でも、それぞれ絵になる姿ではある。
 ただ、この施設の利用回数や頻度から推測するに、そう気楽に来れる場所に住んでいるわけではないようで、その限られた来園回数のうち、どちらがヒトイヌになるかは非常に重要なことのようだった。
 いままでは交互になることで折り合いをつけていたようだが、今回は女島さんの方が譲らなかった。
「あのレポート、かなーり大変だったんだからね」
「うっ……て、手伝ってくれたのは感謝してるけど、それとこれとは別でしょう。最初に代わり番こに楽しむって決めたじゃない」
「……それは、そうだけど」
 じりじりと駆け引きが続いている。喧嘩というほどではないけど、どちらも譲る気はないようだった。
 受付を担当してる私としては、早めにどちらがヒトイヌになるか決めて欲しいものなのだけど。まあ、別に後ろに他の利用者が来ているわけでもないから、いいのだけど。施設的には良くないけど。
 なにぶん特殊な施設だから平日に利用者の受付が被ることは少ない。見学のみの人は別の受付があるし、こちらはあくまでヒトイヌになる人とそのパートナー対応の窓口なのだ。
 しかし、一応は受付であるのだから、その前で言い争い続けられるのも困る。
 その時、私の頭に天恵が降ってきた。
「……でしたら、お客様」
 私は二人に向け、ある提案をすることにした。
「どちらがご主人様となるか――ゲームで決着をつけてはいかがでしょうか?」
 興味を惹かれた様子で、ふたりの目がこちらを向く。
 私はふたりに向け、そのゲームの内容を説明する。

 題して、『ヒトイヌ拘束脱出ゲーム』。

つづく

チアガール連縛もの【ワンドロ企画】

 私とミサはチアガール部に所属している。
 いつも明るくて元気いっぱいのミサは、私の幼馴染みで、昔からよく一緒に遊んでいた。同じ高校に入学することになって、部活をしようと思った時、彼女は部活紹介のときにパフォーマンスを見せてくれたチアガール部の演技の虜になってしまい、私もそれに誘われた形だ。
 正直、ミサの方はものすごく可愛くて男の子にも人気があって、チアガール向きの性格をしていると思うのだけど、私はそこまでチアガールに向いているとは思わなかった。別にデブでもブスでもなかったけど、悪くいえば無個性だったからだ。
 けれどミサに言われるまでもなく私もチアガール部の人たちの実演には魅了されていて、憧れていたところもあって、ミサに引き込まれる形で私もチアガール部に入部することになった。
 チアガール部の活動はとても厳しかった。それは良くある体育会系の部活の理不尽な厳しさではなく、純粋に体力作りや振り付けを覚えるのがすごく大変だったという話だからまだマシなのかもしれない。
 他のスポーツで、すぐレギュラーメンバーになれるわけではないのと同じで、一年の頃はひたすら体力作りと基本の振り付けの反復練習に費やした。実演の時に魅せられたキラキラとしたステージからは遠く、ひたすらに地味な格好で地味なトレーニングを繰り返した。
 ミサは良い子ではあるけど飽きっぽい子でもあったから、正直このきつい練習についてこれるのか心配だったけど、チアガールへの憧れのためか、普段の飽きっぽさを堪えて真面目に練習に打ち込んでいた。
 そうなると私もミサに負けてられないという気持ちが湧いてきて、練習にひたすら打ち込んだ。そうやってミサと競っていたのが良かったのかもしれない。
 二年生になって、普通は三年生にしか選ばれないメンバーに、私とミサは揃って選ばれた。自分たちの名前が呼ばれた時は、喜びのあまりミサと抱き合ってしまったくらいだ。
「やったねスズちゃん!」
「信じられないわ……!」
 こうして私たちはチアガールのユニフォームを手にすることが出来た。
 そのユニフォームは私たちにとって憧れの存在で、散々地味な練習着で過ごしてきた私たちにとって、最高のご褒美だった。
 その時、私たちはあまりに浮かれすぎていて、一部の部員がすごい形相でこちらを睨んでいることに気づけなかった。


 メンバーに選ばれた数日後。
 私とミサは更衣室で真新しいチアガールのユニフォームに身を包んでいた。
 学校の校章が胸のワンポイントとして光り、色は清廉潔白をイメージした白を基調としたもの。ノースリーブかつミニスカートのため、肌の露出が多く、活発なイメージを見る人に与える。靴下も白いソックスで、更衣室内だからいまは履いていないけど、動きやすいシューズも真っ白だった。
 誰が見てもチアガールだと一発でわかる服。憧れのユニフォーム。

 私とミサはそれを着た状態で、縛り上げられていた。

「むううぅう~!!」
 声を上げて助けを求めようとしても、口にかまされた猿ぐつわのせいで大きな声があげられない。猿ぐつわをかませる前に、ご丁寧にハンカチを口の中に詰められたせいだ。
 その猿ぐつわは私たちの後頭部でしっかりと固く結び目を作られていて、もがいた程度じゃ外れそうもなかった。
 私たちの身体は、赤くて太いロープのようなもので縛られていた。これもまた私たちが暴れた程度じゃ千切れる様子もなく、私たちの身体をぎちぎちに縛りあげている。
 ミサと私は抱き合うような形で縛られていた。お互いの身体を抱きしめるような形で、両手がまとめて縛られていて、もがこうとするとミサの身体と擦れ合うことになってしまい、もがきにくい。足もお互いの足に絡めるような形でまとめてしばられていて、下手に動くとお互いに痛い思いをすることになった。
 その上、私たちは細長いロッカーの中に押し込められている。ロッカーはひとり用の狭いもので、人間が入ることをそもそも想定していない。なのに二人合わせてそこに押し込められているものだから、狭い上に苦しい。
 幸いというべきか扉には空気を取り入れるための隙間があって、そこから光も差し込んでくるし、窒息もしなさそうというのが救いだ。
 何度か試してみたけど、ロッカーには外から鍵がかけられたのか、あるいは前に何かおかれてしまったみたいで、いくら押してもびくともしなかった。
 私たちはそんな状況に陥っていた。
 なんとか脱出しようともがいても、どうしようもない。
 どうしてこんな状態になってしまったのか、すごく単純な話で、他の部員からの嫉妬だった。
 二年生で唯一メンバーに選ばれた私たちが気にくわなかったのだろう。同級生の部員が数名、グループで私たちを襲って来て、呆気にとられている間に縛られてしまった。
 まさかこんな古典的ないじめのようなことをされると思っていなかったから油断した。
 実は今日はチアガール部の公開練習日で、この日に欠席したメンバーはいかなる理由であってもメンバーから外されると顧問の先生に言われていた。
 要は体調管理が出来ない者はメンバーに相応しくないということなんだろうけど、それを利用してこんなことをする人がいるなんて。
 私たちがメンバー落ちしたところで、その人たちがメンバーになれるわけではないのに。
 そうは思う者の、後悔先に立たず。ロッカーに閉じ込められてしまった私たちは、なんとかこの場から脱出しようともがいていた。
「うぅ……むぅぅ……!」
 せっかくの新品のユニフォームも、縄が食い込んで皺だらけになってしまっていた。それが哀しいし、縄の後が肌に残ってしまわないかも心配だった。縄は人を縛る用の縄なのか肌触り自体はそこまで痛くなかったけど、それでも縄目があることには違いない。
 肌に食い込む痛みは感じていた。
「んんんっ! んんっ!」
 なんとか縄が緩まないかと身体を揺すっていたら、涙目になったミサが必死に頭を振った。どうやら、私が動いた分ミサが痛かったようだ。
(ごめん……でもなんとかしないと……っ)
 私は再度ミサを視線で促して、力を合わせて扉を押してみようと訴える。
 ミサは躊躇いながらも頷いて、一緒に身体を揺すって扉に体当たりを試みた。
 けれど、元々狭いロッカー内。その上ぴったり密着するように縛られていることもあって、中々思うように扉にぶつかることは出来なかった。
「ふぅ……っ、ふぅ……!」
 口が猿ぐつわで塞がっているから、自然と鼻で息をしなければならず、荒くなるとお互いに鼻息がお互いにかかってしまう。生暖かいというか、熱い息が、むき出しになった肩を撫でて、思わず身震いしてしまった。
 同じようにミサも身震いするものだから、互いの震動が互いにダイレクトに伝わる。
「……ふぅ……ふぅ」
 狭い場所で強引に身体を動かしたせいで、ロッカー内の空気は酷く熱くなっていた。サウナというレベルではないけど、蒸し蒸しとした熱気が充満している。
(ダメ……脱出できない……っ)
 焦りと熱さでじっとりとした汗が滲み、ミサの前髪が額に張り付いているのが見えた。私も同じような状態になっているであろうことは感覚でなんとなくわかった。
 お互い、密着した身体が熱い。離れたいのに離れられないので、熱さは増すばかりだった。息苦しくなって、意識が遠くなる。
 ぼーっとした意識の中、すぐ傍にあるミサの鼓動が胸越しに伝わってきた。
 どう足掻いても脱出できそうにない無力感の中、ミサの存在は心強かった。もしひとりでこんな暗いところに閉じ込められていたら泣いてしまっていたかもしれない。
 その心はミサも同じなのか、ふたりして暴れることを諦め、お互いの感覚だけを感じたまま、静かに目を閉じた。


 結果から言うと、その後夜になってから、私たちは捜してくれた他の部員によって助けられた。
 そして、私たちを縛って閉じ込めた子たちは、全員退部になった。当たり前だ。
 そもそも「公開練習に出なければメンバー降格」という取り決めは、そういう馬鹿なことをする子をもっと重要な公式戦の時までにあぶり出すためのものだったようだ。
 私たちは無事メンバーに選ばれたままだった。
 緊縛のせいでぐちゃぐちゃになってしまったユニフォームも、補填してくれることになって、私たちは無事チアリーダーとしての活動を続けられるようになった。
 ……のだけれど。
 ひとつ、あの経験が私たちに遺したものがあった。
 それはふたりしてあんな経験をしたせいで、緊縛趣味に目覚めてしまったということだ。ダメになったユニフォームを着て、お互いに縛ったり、縛られたり、そういうことを楽しむようになってしまった。
 もし人に見つかったら大変なことになるのに、校内でもそういうプレイをしてしまうのだ。むしろそういうところでやることに興奮してしまう。
 卒業まで無事に過ごすことが出来るのか。

 私たちは不安になりながらも、ユニフォームを来て緊縛することを辞められないのだった。


おわり  
[ 2018/04/06 01:43 ] ワンドロ企画 | TB(0) | CM(2)
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