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白日陰影

箱詰系、拘束系の18禁小説を書いています。関連の同人・版権作品のレビューも書きます。18歳以下の閲覧禁止。

箱詰倶楽部の福箱詰


 福袋、それはお正月の風物詩。
 店によっては袋と言いつつ箱だったりすることもあるけど、そんな細かいことはどうでもよく、ちょっとお得にお高いものがランダムで手に入るチャンス、ということで日本人が大好きな風習だ。
 もちろんランダムだから好みじゃないものがたまに混じっていたりはするけど、その辺りも含めて福袋の醍醐味と言える。
 だから、いつもお世話になっているあの『例の倶楽部』で福箱が販売されると聞いた時、一も二もなく予約したのは確かだ。
 まさか、まさかとは思うけど、ひょっとしたら、という気持ちがあったのは否定しない。
 常識で考えたらありえないけど、あの倶楽部ならそういうことをやってくれるんじゃないかなという期待はあった。
 けれど、そのまさか、まさかじゃないか。

 本当に、箱詰めの『それ』が送られてくるなんて思わないじゃないか。

 僕はごくりと生唾を飲み込んだ。それを前に、そうすることしかできなかった。
 家に届いた時から、何かやばい気はしてたんだ。倶楽部専属の配送屋が届けに来たのもそうだし、四人がかりで運んできたのもそうだ。
 そしてなにより――わざわざ部屋の中まで運び込み、台座と共に置いていった段階で、そういう予感しかしなかった。
 一人暮らしの部屋には大きすぎる荷物。はっきりいって邪魔だけど、最低限の寝床と行動スペースは確保できていたので、まあ、問題ないといえば問題ない。
 そんな些細なことは置いて、僕の興味はそれ自体に釘付けだった。
 ついでにとばかりに置いていかれた小さな――といっても本体に比べればという意味で、十分ダンボールとしては大きい――箱も気になるが、本体の異様な存在感に、僕は本体から開けないわけにはいかなかった。
 金属製のパイプを台形に組んだ台座は、下部にゴムが貼ってあり、容易なことでは動きそうにない。
 設置していった作業員にも、なるべく動かさないように言われている。
 もしも緊急で動かさないと行けなくなった時は、動かしにきてくれるのだという。
 その台座の上に置かれた本体は、見た目だけ見ればただの寝かせた長方形の箱だ。台座で腰の位置の高さになっているけど、賽銭箱、という表現が一番わかりやすいかもしれない。
 材質は金属、鉄やアルミのような銀色だけど、触れてみた感じそのいずれでもなさそうだ。ヒンヤリしているかと思ったけど、思ったより冷たい感じはしなかった。
 箱の前後には『2019年 福箱』の文字がスタイリッシュな文字で刻印されている。こういう単なる装飾にも無駄に凝る感じはあの倶楽部らしい。
 そして上面、賽銭箱で言えばお金を入れる面は四隅がネジ止めされたフタになっていて、かなり厳重に閉じられている。フタも金属のような材質でできているようだから相当重いのではないだろうか。
 さらに、長方形の箱の中でも一番小さい面、左右の面には、なにやら複雑な切り込みのようなものが入っていた。
 向かって左側の側面は中心より少し上あたりに鍵穴が開くような形、反対側、右側の側面は潰れた円のような形に開くようになっているようだ。
 下側はそういった切り込みはなく、のっぺりとしている。ただ、何やら穴が空いていた。なんの目的かはわからないが、親指が入りそうなくらいの太さだ。試しに指を突っ込んでみたが、すぐに指先がフタのようなものに押し返されてしまった。
(さて、と……ここからどうすればいいのかな)
 上部のフタを開けてみようにも、止めてあるネジの頭は変わった形をしていて、普通の工具では開きそうにない。
(……ということは)
 僕は同時に届けられたもう一つの福箱を見る。恐らくはこっちの箱に開けるための工具や、この箱の説明などが入っているのだろう。
 段ボール箱はほどよい重さで、一般的な体格の僕でも持ち上げることが出来る程度だ。
 どっしりと重い感じは中身が詰まっているようで、工具一個、説明書一冊だけということはなさそうではある。
(ほんと、何が入っているんだろ……)
 半ば中身は予想できているのだけど、心臓のドキドキが止まらない。まさかという気持ちと、きっとそうだという気持ちが交錯している。
 心を落ちつかせながら、段ボールの蓋を開く。すると、想像通り箱の中には工具が入っていた。それは予想通りだったのだけど、納め方には意表を突かれた。
 段ボールの中には一回り小さい段ボール箱が入っていて、その蓋の上に工具らしきものだけがテープで貼り付けられていたのだ。
「……これは……なるほどそういうことか」
 もう一回り小さな箱を開ける前に、工具であの巨大な金属の箱を開けてみろという意図だろう。演出が凝っている。
 これはいよいよ、そういう内容物だという期待が高まった。
 僕は急いで、金属の箱の蓋の四隅にあるネジを外していく。くるくると小気味よくネジを外して、蓋に手をかける。この段に至っても、僕はまだ期待半分不安半分だった。もし中身がそうだとしたら、そうだとして。
 それをどう扱うべきなのかは難しい問題になりそうだったからだ。
 結論から言って、扱いに迷うようなことはなかった。
 なぜなら――蓋を開けた先には、もう一枚透明の蓋が待ち構えていたからだ。その蓋はいま外した蓋と違って、外せそうな構造をしていなかった。ただ、物凄く頑丈に出来ているようで、割ったり砕いたりすることはできそうにない。
 けれど透明だから中身は見える。中身を見た僕は、様々な意味で圧倒されてしまった。

 最初、それは黒い塊にしか見えなかった。

 箱の中に窮屈に押しこめられたそれは、明らかに人の姿をしていた。ただ、綺麗に四角に納められているので、一見しただけでは人に見えなかった。
 よくよく見れば、人間が箱の中に窮屈に押しこめられているのだということがわかる。
 体勢は正座を基本として、足首がお尻の横に来るように少し崩した状態だ。お尻を床に着ける、俗に女の子座りと呼ばれる姿勢。その状態で、その人は上半身をべったりと前に倒していた。頭頂部が箱の底面に突くほど身体を折り畳んでいるので、人間の身体とは思えないほど平べったくなっていた。
 身体が硬い男性には取りづらい体勢だし、あの倶楽部の客層から考えても、たぶん、女性だろう。
 女性だと断言できなかったのは、箱に詰められた人の身体が、ほぼ全てラバーに覆われていたためだ。
 全身を包むラバースーツ、頭部を覆う全頭マスク、手や足の先までしっかり覆われていて、性別を判断できる要素がおおよそ全て隠されていた。胸が膨らんでいるかどうかは、彼女の体勢が問題でわからない。
 お尻や肩の丸みからすると女性っぽいけど、最近の男性の中にはどう見ても女性にしか見えない人もいるし、それだけでは断言が出来なかった。
 とりあえず推定彼女としておく。
 その体格にぴったり合わせたのだろう箱は、それだけで彼女の自由をほぼ完全に奪っていたけど、彼女に施された拘束はそれだけではなかった。
 まず、足首。分厚い金属製の枷のようなものがかけられていて、その枷は金属製の箱と一体化している。ねじ穴も見当たらず、そこから一ミリも動かせそうにない。
 自由になりうる両手は、アームバインダーというものによって一本の棒のように身体の背面で固定されている。その先端は丸くなっていて手先の動きは完全に封じられていた。アームバインダーの先端には金属の輪っかがあって、お尻側の箱の壁面に繋がっていた。
 また、ハッキリとは見えないが、なにやら口には口枷みたいなもの、首には無骨な首輪らしきもの、腰には金属で出来たパンツのようなものが装着されているようだった。

 拘束されて箱詰めにされた人間が、目の前にいた。

 そうじゃないかと期待はしていたのだけど、実際こうしてそれが現実になると改めて圧倒されてしまう。
 さすがは箱詰倶楽部。福箱に全力だった。
 僕はあの倶楽部の会員であるが、箱詰めになりたいのではなく、箱詰めされた人を見るのが好きだった。
 そういうものに理解のある彼女がいたら、やってみてもらっていただろうけど、あいにく僕にそういういい人はいない。
 だからこれまで、箱詰倶楽部の活動を見学したり、販売される動画を購入して過ごしてきた。倶楽部で福箱が販売されるというアナウンスがあったときは、きっと基本的にはそういう動画とか写真の詰め合わせになると思っていた。
 でも、もしかしたらその福箱の中に、箱詰めされた会員が含まれているんじゃないかと、そう期待していた。
 僕のその予想は見事に的中したことになる。福箱を購入した人全員がこんな福箱を受け取っているわけはないし、僕はめちゃくちゃ運が良かったのだろう。
 興奮が隠せない。
(でも……このあとどうしたらいいんだろ……普段の見学とか動画と違って、思う存分見れるのはいいけど……)
 福袋はそれなりの値段で購入したけれど、当然人身売買に値するような値段ではないし、箱詰めにされている彼女も会員のはずだから、そんなことはできないだろう。
 時間的な期限があるはずだった。
 そもそも、そんなに長期間箱詰めにしっぱなしにしたら彼女の体が保たないだろう。
 人形なのだとしたらその辺りの問題は解決するけど、さすがにここまで大掛かりなことをしておいてそれもないはず。よくよく彼女を見ていると、呼吸によってか微かに体が上下しているようだし。
 生きている人間なら、メンテナンスは必要だ。
 僕は段ボール箱の中に詰められていた、もう一つの段ボール箱を開いて、中を見てみた。
 その中には、様々な道具と共に、一番上に僕の求めるものがあった。
「マル秘取扱説明書……マル秘って」
 わざとらしくデカデカと赤文字で書かれたそれを見て、思わず笑ってしまった。ちょっと男心がくすぐられてしまう。
 中を開くと、まず前文として箱詰倶楽部の社長の挨拶が載っていた。
『いつも箱詰倶楽部を御利用ありがとうございます。特別版福箱のご当選、おめでとうございます! すでに本体はご覧になられましたでしょうか? もしかすると人形なのではないかと誤解していらっしゃるかもしれませんが――』
 なにげに考えていたことを言い当てられて思わずびくりとする。
『無論、人形などではございません! 倶楽部会員のひとりでございます。参考として普段の様子を撮影した写真を同封しております』
 そこまで読み進めた時、説明書の中に挟んであった写真に気づいた。手から伝わってくる感覚で、何か栞みたいなものが挟まっていると思ってたけど、どうやらこれがその写真のようだ。それを取り出してみる。
「……マジかよ」
 思わず、その写真に映っている人と、箱の中に入っている黒い塊のようなものを見比べてしまった。
 写真には、すごく健康的で溌剌とした様子の女性が映っていた。
 それも、かなり若い。下手したら大学生だ。まさか高校生ということはないと思うけど。
 テニスをしているところを撮ったもので、汗を流して真剣にラケットを振るっている。
 顔立ちもかなり整っていて、とてもこんな変態的なプレイをするようなタイプには見えない。男性から引く手あまただろうに。
 こんな冴えない男のところに、箱詰めにされて送られてきているなんて。
 箱を覗き込んで見ると、そこには黒いラバースーツに全身を包まれ、徹底的に拘束されて身動ぎひとつにも苦労しそうなほど、箱詰めされた肉体があった。
 この写真のスポーティな女性が、この黒い塊になっている。
 写真に映っている人物が本当に箱の中に入っているのかという保証はなかったけど、想像するとギャップでますます興奮する材料になる。ズボンの中で痛いほどあれが反応しているのを感じていた。
 さらに社長の挨拶文を読んでいく。
『本当は差し上げたいところですが、さすがに弊倶楽部でも人身売買を行うわけには参りませんので、一時的な貸し出しということになります。当人の承諾は得ておりますので、ご安心ください。期限は一週間となります』
「一週間……! ずいぶん長いなぁ」
 そんなに長時間閉じ込め続けて、大丈夫なんだろうか。
『なお、メンテナンスの方法や、取り扱い方、スキンシップの取り方などは、すべてこの本に書いてあります。大事に扱ってくださいますよう、よろしくお願いいたします。それでは今年も箱詰倶楽部をよろしくお願いいたします』
 前文はそれで全部だった。説明書をぺらぺらと捲って見たところ、あの箱には色々と機能があり、それを使うことで彼女の健康を維持できるようだ。
 とりあえず一通り読もうと思ったけど、そのうちの一つの説明が目に入った。
 僕は彼女の入った箱に近づき、前面側の板に触れる。少し確かめて見ると、説明書通り、その板がパカリと外れた。天板と同じで、板の先にはもう一つ透明な壁があり、彼女本体に触れることはできなかったけど、箱詰めされた彼女の姿が横からも見れるようになった。
 上からは見えなかった部分が、はっきり見える。
 目立つのは俯いていた顔だろう。上からだと全頭マスクを被っていることしかわからなかったけど、横から見るとどうなっているのかはっきりわかる。
 まず、目はアイマスクのようなもので塞がれていた。分厚いクッションのようなものが目を覆っているので、ほとんど光も感じられないんじゃないだろうか。
 さらに口は口枷で塞がれているのは、上から見てもわかっていたけど、横から見るとその口枷がどんな形状なのかはっきりわかった。
 いわゆる開口具というものだ。顎から鼻先までしっかりラバーマスクで覆われているのだけど、口をギリギリまで開いた時の大きさの穴が中央に開いている。その穴は湯船の底にあるような、ゴムの栓で塞がれていた。本来なら、その栓を抜いたあと、男のものを突っ込んで強制的に奉仕させるための仕組みだろう。
 箱詰めにするだけならそんな機能は要らないはずだから、おそらくまだ秘密があるはずだ。
 その機能の追求はあとにして、まずは彼女の横姿をじっくり堪能する。
 折り畳まれた彼女の体。その見事な流線型を保った彼女の、ラバーに包まれた胸もまた、はっきりとは見えないが窮屈に押しつぶされているのがわかって、それだけでも興奮した。
 普段の写真を見たときから感じていたけど、結構な大きさだ。この大きさだと結構胸が圧迫されてかなり苦しいのではないだろうか。実際のところがどうかはわからない。
 ともかく、そんな箱詰めの彼女を眺めつつ、説明書を読み始めた。

 なんとも最高の正月になったものだ。


箱詰倶楽部の福箱詰 おわり

箱詰倶楽部の聖夜詰

 その一年に一度の特別な日、私がいつも通っている箱詰倶楽部もまた、特別な装いになっていた。
 いつものように建物のロビーに入ると、広いホールになっている場所に、大きなツリーが設置されていた。きらびやかに飾り付けられ、四方八方からライトアップされたツリーの下には、クリスマスプレゼントの大きな箱が置かれている。
 一見どこにでもありそうな装飾だけど、この倶楽部のことだから、きっと何かあるのだろう。そう思って少し眼をこらしてみると、華やかなラッピングに包まれていると思われていた箱の表面が、妙につるつるしているのに気付いた。十字にかけられたリボンは本物みたいだけど、ラッピングに見えたものは、箱の表面に映し出された映像のようだ。
 私は受付に行く前に、少しその展示物に近づいてみる。近づくと余計に違和感が際だってきた。
(これ……箱の表面に映像が映し出されてるわけじゃ無いわね……)
 プレゼントボックスのすぐ傍まで近づいた私は、その箱に向けて手を伸ばす。
 すると、ライトの光が遮られ、箱に向けて影を落とした。

 その影が落ちた部分から、箱の中が見えるようになる。

 驚いて手を引くと、再び箱は何の変哲もないプレゼント包装をされた箱になった。速くなった鼓動を感じつつ、どういう原理か理解した。
(な、なるほど……周囲から照らしてるのは、ライトであると同時にプロジェクターでもあるわけね……それを使って、箱にラッピングをしているように見せかけている、と。つまり――)
 私は再び手を伸ばして箱に触れる。やはり、ライトを遮った部分の包装が消え、中が見えるようになった。いかにもクリスマスプレゼントのような包装をしているような箱は、リボンを除いて、透明な箱だったのだ。
 そして、その透明な箱の中には、想像通りの物が詰められている。

 窮屈そうに身体を折り畳み、リボンのような拘束具によって縛られた女性がいた。

 一言でいうと、すごい体勢だった。
 全体的には、椅子に浅く腰掛けて背もたれに身体を預けているような体勢だ。
 ただ、床につけているお尻から腰にかけての部分が斜めになっているのか、特に不安定な様子はなく、安定しているように見える。彼女の身体の形に添うように箱の底が作られているのかもしれない。
 両手は後ろに回した上で交差しているようで、箱の隅に沿って手のひらが伸びているのが見える。縛られているかは正面から見てもわからないけど、縛られていなかったとしても、自分の身体と箱との間に挟まっていて、自由に動かせそうにはなかった。
 それだけならまだしも、私がすごい体勢と言ったのは、足の納められ方にあった。
 彼女は、自分の顎の下で両足の足首ふくらはぎを交差するような体勢で――私が同じ体勢を取れと言われても無理だろう――酷く身体の柔らかさを必要とするような体勢になっていた。
 彼女の両足は白いファーのついた薄くて赤いハイソックスに覆われている。その赤はとてもクリスマスらしかった。膝下までが赤く、そこから上は普通の肌色なので、赤い部分が×印描いていた。もしかするとクリスマスの「X」をイメージしているのかもしれない。
 それがクリスマスをイメージした体勢だとすると、彼女はとても可哀想だった。なぜなら、その体勢を取るためには、当然両足の形は決まってしまうからだ。
 彼女は無防備に股間をこちらに向けるような体勢になってしまっている。それはとても恥ずかしい体勢で、実際彼女はとても恥ずかしがっている様子だった。
 顎の下で足を交差させられている彼女は、自らの足が邪魔になって俯くことが出来ず、真っ赤になった顔をまっすぐ前に向け続けなければならなかった。
 一応この場所が会社のロビーだからなのか、ハイソックス以外の服を身につけていないわけではない。だけど、果たしてその服を、服のうちに入れていいのかは疑問だった。
 まず、まともな服ではないことは確かだ。彼女の晒された股間には、前張りのように四角い金属製の板のようなものが宛がわれていた。
 内側がどうなっているかはわからないけど、この倶楽部のことだ。前とお尻とそれから尿道を埋める突起が内側にあったとしても驚かない。
 むしろ箱詰めの間のお楽しみのために凶悪な形のものが入っていると考えた方が自然だろう。その前張りは全体が金色で、表面に「Merry Christmas」とメッセージが彫られていて、見た目はクリスマスらしい華やかなものだったけど、内側はさぞ凶悪な構造になっているに違いなかった。
 彼女が下半身に身に付けているのは、その金属の前張りと、ハイソックスのみ。箱詰めになっていなければ寒くて仕方のなさそうな格好だ。両足を交差した状態で固定しているのは、リボンのように見えるベルトの拘束具で、彼女自身がクリスマスプレゼントであることを示しているようだった。
 交差した両足が彼女の上半身を隠しているけど、上半身もそれなりの格好にされているみたいだった。
 まず、普通の服は一切身につけていない。乳房もほとんどが露わになっていて、股間と同じ金属の板のようなものが、乳房の丸みに合わせて張り付いている。
 まさかとは思うけど、その薄い板のような物に乳首を虐めるための仕組みがあったとしても驚かない。バイブくらいは仕込めそうだし。
 さらに、一番拘束が凄いのは彼女の首から上だった。
 まず、口を大きく開いた状態で固定する、緑色の開口具がある。開口具の奥でちらちら動いているのは舌だろうか。喉が渇きそうな状態だけど、箱の中に詰められているから言うほどではないのかもしれない。
 そして、その開口具のちょうど中心に垂れ下がるように、鼻輪に通された金色のベルがあった。少し揺れているのは、彼女が口で呼吸する際に空気がそこを通るからだ。耳を澄ませると、ちりんという涼やかなベルの音がほんの少しだけする。
 緑色の開口具は珍しいと思ったけど、その鈴があるおかげで意図は明白だった。クリスマスリースを模しているのだ。その下で交差する赤いハイソックスの「X」も合わさり、クリスマススペシャルと言ったところか。
 目隠しはされていなかったから、ばっちりと眼があってしまった。ゆでだこのように真っ赤になるのを見て、私は慌てて少し離れる。
 するとライトの光が箱を照らし、彼女の姿を隠してしまった。遠目から見れば、ただのクリスマスプレゼントの箱を模した飾りにしかみえない。
(……あれだけ透明度が高かったのに……投射できるのね)
 ただのプロジェクターでは、ガラスのように透明な物に映像を映し出すことは出来ない。つまり、なんらかの特殊な技術が使われているということだ。
 本当に相変わらず、この倶楽部は力を入れるところがどこか間違っている気がする。
(まあ、それを満喫しに来てる私がいえることじゃないか……)
 ツリーの下には他にもクリスマスプレゼントの箱がおいてあったけど、私は寄り道はそれくらいにして、受付の方へと向かった。

 私は箱詰めにされた者を見に来たのではなく、箱詰めにされにきたのだから。

 受付には、いつもの人が立っていた。ロビーをうろついていた私に声をかけることもなく、私の気が済むまで待ってくれていたのだ。
 彼女はいつもは、非常に真面目で有能そうな受付嬢なのだけど、今日は少し雰囲気が違った。
 というのも、イベントに合わせてか、いつもの制服ではなく、サンタ服を身に付けていたからだ。
 かなりきわどいミニスカと、明らかに布の面積が少ない上半身の服。にも関わらず両手と両足は丈の長い手袋とニーソックスに覆われている。そして、極めつけが白いふさふさのファーと、丸いボンボンが着いて、可愛さが強調されたサンタ帽を被っていた。
 なんともエロティックで、可愛らしい格好だった。彼女らしからぬ、とは思うけど、美人さんなので似合ってしまっているのがなんとも言いがたい。
 平静を心がけているようだったけど、酷く恥ずかしがっているのが真っ赤になった頬の様子から明らかだった。会社の方針には従わざるを得なかったのだろう。倶楽部の社長さんはひどくマイペースな方だと記憶しているので、押し切られたのかもしれない。
 受付嬢はカウンターの近くまで来た私に、いつもの丁寧なお辞儀をする。
「Merry Christmas.箱詰倶楽部へようこそ。本日はクリスマス限定イベントとして、愛しの方への『クリスマスプレゼント包装』および『輸送』を承っております」
 私はその言葉を聴いて、心臓がどくんと強く跳ねるのを感じた。

 今日はその『クリスマスプレゼント包装』をしてもらうために来たのだ。




 受付で必要な手続きを終え、私はいつものように箱詰プレイをしてもらう部屋に通されていた。
 慣れている私は、さっそく着ていた服を全て脱ぎ、ピアスや指輪といった装飾具も全てひとつの小さな箱の中に納めた。
「いつも当倶楽部をご利用ありがとうございます。コースは『クリスマス特別コース』、輸送先はご自宅ではなく、パートナー会員様のお宅でよろしいですね?」
 箱詰めにしてくれる従業員さんの確認に、私は頷いて応じる。激しく高鳴る心臓のせいで、上手く声が出なかったからだ。
 この倶楽部に私が嵌まるきっかけを作った彼とは、二人きりのクリスマスパーティを彼の家でする話はつけてある。驚かせるために箱詰倶楽部にお願いすることまでは言っていないけど、お互いの嗜好はよくわかっていることだし、半ば予想されてはいるだろう。
 けれど、それも含めてのクリスマスパーティだから、きっと彼も楽しんでくれるはず。
 体調やこれから行う箱詰めプレイの内容の最終確認を手早く済ませ、ついにその時がやってきた。
「まずは『中身』のデコレーションから行います」
 もちろんプレゼントの中身は、私自身だ。
 手渡されたのは、ロビーで晒されていた彼女も身に付けていた、ハイソックスだった。片足ずつ、それを履いていく。全裸にハイソックスだけ身に付けるというのは、なんともおかしな状態で、なんだかとても恥ずかしかった。全裸の方が恥ずかしくないというのも変な話だけど。足先が覆われている分、余計にむき出しになっている股間や上半身の頼りなさが浮き彫りになってしまうのだ。
 続けて着るように促されたのは、肘の上くらいまで覆うグローブだ。これも白いファーがついている赤いものだった。ただし、材質が少し違う。
「これ……ラバー……?」
「はい。薄いものですが、ちょっと爪でひっかいたりした程度では破れません」
 私が感心しつつもグローブに腕を通していくと、その先端の形状が変わっていることに気付いた。普通のグローブなら指の形に分かれているが、これはわかれていない。手の先は少し膨らんでいて、押し込むようにすると手首のあたりがちょうど窄まっており、ぴったりと密着してくる。
 手の先は手刀の形に固定され、細かな作業は出来なくなってしまった。両手を使えば、マグカップに注いだコーヒーくらいは飲めるかもしれないけど。
 もう片方のグローブは自分では身に付けられないので、従業員さんに手伝ってもらって身に付ける。手の先が両方封じられてしまった。
「次は、こちらです」
 そういって彼女が出してきたのは、あの金属の板のようなものだった。流線型の形はどこにフィットするのか、はっきりとわかる。
 そして、あのロビーではわからなかった、身体に触れる部分の構造は、おおむね私の想像通りだった。想像通りでないとすれば。
「お、大きくないですか……?」
 身体の内部に差し込むと思われる突起物が、明らかに外国人のそれに等しいサイズの大きさと太さをしていたことだろうか。
 私は拡張プレイをしているわけではないので、そんな太く大きなものが入るのか非常に疑問だった。
「ご安心ください。こちら少々特殊な素材で出来ておりまして……」
 彼女は外に面する側の、板の流線型の部分を軽く指先で弾く。すると、どういう仕組みなのか、太く大きなものだった突起物がみるみるうちに小さく細くなり、私でも楽々入るであろう小さく細いものに変わった。
「このように小さくして挿入することが出来るのです。挿入後は、そこにある何らかの液体を吸収し、大きくなっていきます。一定の圧力がかかればそれ以上膨らまなくなりますので、ご安心ください」
 ただのゴム製の張り子かと思えば、とんでもないハイテク道具らしい。突起物の数からなんとなく理解していたけど、どうやら吸収する液体はなんでもいいみたいだ。腸内に関しては、先に浣腸までしてすっきりさせているから問題ない。
「失礼します」
 従業員さんは私の前に跪き、その突起物のある金属の板を私の股間に添える。慎重に突起物と穴の位置を合わせ、ゆっくりと挿入していってくれた。あらかじめローションか何かを馴染ませていたのか、あるいは私の方の準備が万全だったからか、あっさりと突起物が私の中へと入ってくる。
「ふぁ……っ、んっ」
 柔らかくも確かな存在感を持つものが私の中に差し込まれる。従業員さんは手を離しているのに、私の締め付ける力を利用して突起物は自然と私の中に入り込んできた。
「うひゃぁっ!」
 思わず飛び上がったけど、その勢いでさらに奥まで突起物が入り込んで来た。あまりの刺激の強さに伸びきった足が震える。
 気付けば、金属製の板が私の股間を覆っていた。傍から見ると金属の前張りをされているだけのように見えるけど、私自身の身体はみっちりと入り込まれている感覚があって、正直、気持ち良かった。
「ふぅ、ふぅ……っ」
「落ちつかれましたら、こちらを着けさせていただきます」
 そう言って従業員さんが示したのは、丸い金属の輪っかだった。金色の小さなベルがついていて、ふたつでワンセットだ。私が頼んだオプションである。
「おね、がいします……」
 私は恥ずかしい思いを堪えつつ、両腕を後ろに回し、胸を反らして彼女に身体を晒した。その輪っかを取りつける場所については、簡単に予想が付くだろう。
 それは、乳首に取りつけるものだった。
 乳輪を含め、ピンク色の綺麗さに密かな自信を持っている私の乳首は、ここまでの作業ですでにしっかりと硬くなっていた。
 従業員さんがそんな私の乳首を挟むように、金属の輪っかを装着する。
「ひぅっ……っ!」
 鋭い快感が脳天まで貫いた。悲鳴をあげそうになるのを、喉元で抑え込んだ。私のぷっくり膨らんだ乳首を、金属の輪っかが挟み込んでいた。絶妙な力加減で保持されていて、穴をあけているわけでもないのに、そう簡単には取れそうにない。
 少なくとも箱詰め状態の私が暴れた程度の動きでは取れそうになかった。
 もう片方の乳首も輪っかで挟んでもらい、装飾は完了。身もだえする度にチリンチリンとベルが鳴る。
(クリスマスっぽいから……と思ってお願いしたけど……これ、かなり恥ずかしい……!)
 股間のそれのように乳首を彩る案もあったんだけど、なんとなく股間とは別の方式で彩りたいなんて思ったのが良くなかったかも知れない。
 彼以外に見せる気はないけど、あのロビーで箱詰めになっていた人みたいに、他人に見られたら恥ずかしくて仕方ないだろう。
 乳首への刺激が落ちついたところで、次は首輪だった。赤い皮で出来たそれは、犬の首輪というよりは、チョーカーの方が近いかも知れない。クリスマスを意識したデザインなのは間違いないのだけど。しっかりと首にフィットして、彩りを加える。
 さらに拘束具はあって、鼻下から顎までをしっかり覆うタイプの口枷が嵌められる。口は開いた状態で、噛みしめて固定するタイプのものだ。中央は丸い円筒形に穴が空くようになっていて、栓を抜けばいわゆるフェラチオも出来るようになっている。
 今回の場合はその栓にメッセージカードが丸めて納めてあって、到着後彼に引き出してもらって私からのメッセージを読んでもらうつもりだった。
 あと、輸送中不意に声をあげられないようにするための処置でもある。
「最後に、こちらを被っていただきまして……うん。とても素敵なクリスマスプレゼントになりましたよ」
 可愛らしいサンタ帽を被せてもらって、『中身』の下ごしらえは完了。
 いよいよ、箱に詰められる時だ。
 私は身体が特別柔らかいわけではないので、ロビーにいた人のような体勢は取れない。
 だから、あまり無理のないような体勢をお願いしていた。
 まず、用意された箱の中に入り、底にあぐらを搔いて座る。箱の大きさはかなりギリギリで、少し膝が浮いてしまうくらいだった。両手は胸の前で交差するようにして、自分の肩を抱くような形にする。
 そして、背中を丸め、膝と膝の間に身体を納めるように縮こまる。
「蓋を閉めますね」
 背中からうなじのあたりを圧迫されるように抑え付けられ、少し息が苦しいというくらいで固定された。ぎゅっと、身体を縮ませてじっとしていると、自分の鼓動しか聞こえない、いつもの箱詰めの空間が完成した。
 私は息を浅く速く繰り返しつつ、しばし箱詰めの快感を堪能する。あそこが濡れ、それを吸収した突起が身体の中で少し大きくなったことを感じる。
 喜んでくれるであろう彼の顔を想像しながら、彼が箱を開けたときには笑顔で顔をあげようと心に決めつつ、幸せな気持ちで瞼を閉じた。

 その後、『クリスマスプレゼント』を受け取った彼がどれほど喜び、そして二人がどれほど愛し合ったかは――語るまでもないだろう。


箱詰倶楽部の聖夜詰 おわり

2018年、ご愛読ありがとうございました!

来年、2019年はより多くの執筆活動に尽力しますよ~^w^
各ジャンルで途中になってる作品は多いので……ひとつひとつがんばります!

それでは皆様、良いお年を!
また来年お会いしましょう!
[ 2018/12/31 23:36 ] 連絡 | TB(0) | CM(0)

ヒトイヌフェスティバル


「うわぁ……なにこれ……」
 思わず、そんな声が出た。
 目の前にはとても広い公園。
 茂みなどが少なく、開けた運動場。
 そこにいる、ヒト、ヒト、ヒト。テレビで見るような人混みに比べれば、人数自体は遠く及ばないにしても、どちらの光景に圧倒されるかといえば、断然いま目の前に広がっている光景だと百人中百人が言うに違いない。
 それくらい、目の前に広がっている光景は圧巻だった。
 なぜなら運動場に溢れんばかりに揃ったヒトたち。

 そのほとんどが、ヒトイヌなのだから。

 身体をラバースーツに彩られ、四肢を拘束され、マスクを被せられ、口枷を噛まされたヒトイヌたち。
 ヒトイヌが感情を表現するために体内に挿入されている尻尾が、それぞれの感情を反映し、揺れている。
 複数同時にいるだけでも珍しいだろうに、目の前の広場には数十を越えるヒトイヌが集まっていた。ラバースーツの黒と、白い素肌の対比が目に眩しい。ヒトイヌは個体ごとに身に付けている装備が微妙に違うため、それぞれを見比べるだけでも楽しかった。
「……ほんと、すごい……っとと。ごめんよ」
 移動しようとして、危うく足下にいたヒトイヌを蹴っ飛ばすところだった。
 当然ヒトイヌも避けてくれるのだが、視界や動きがかなり制限されているから、普通に動けるこちらが注意しなければならない。
 うっかり不注意で出禁になったりしたら大変だ。
 気をつけて移動しながら、彼は改めてこの「ヒトイヌ公園」の特異性に圧倒されていた。


 十一月十一日。
 わんわんわんわん、で犬の日とされているその日。
 犬と聞いたら思わず反応せずにはいられないのであろう、ヒトイヌ公園でもイベントが開催されていた。
 題して「ヒトイヌフェスティバル」。
 普段この公園ではヒトイヌからも入園料や施設利用料を取っているが、この日は大盤振る舞いの無料開放。すべての施設が自由に使える。
 さらに、事前に予約し、個別に相談することで、参加のための協力までしてくれる。具体的には送迎手段の確保やアリバイの作成。
 住まいが遠くの人にはなるべく長く楽しめるように前日からの宿泊までをサポート。噂では全ヒトイヌ会員の九十九パーセントが参加しているとかいないとか。
 とんでもない無償奉仕にもほどがあるが、その甲斐あって、いまだかつてない規模のヒトイヌ愛好家が集まっていた。以前、この公園ではヒトイヌ拘束脱出ゲームというイベントが開かれていたが、その時ですら比べものにならない。
 数十のヒトイヌが思い思いに過ごしている様は、この趣味嗜好を持つものにとっては天国か極楽か。ヒトイヌとなっている者も、仲間が人よりもたくさんいる特殊な環境ゆえか、いつもよりリラックスしているように見えた。
 現在、ヒトイヌ入場に制限はないが、人の入場には制限がかかっている。
 普段の公園はヒトイヌ愛好家の中にも、ヒトイヌになりたい者とヒトイヌを愛でたい人がいて、ヒトイヌよりも人の方が多いのが普通だ。
 ヒトイヌに「同時に接触できるのはふたりまで」、「一日に設定された人数以上の接触は禁じられる」といった制限があるため、ヒトイヌが人に囲まれて困ることはないものの、ヒトイヌになりたいという者より人の方が多いのは自然なことだろう。
 だがいまは愛でる側の入場が制限されているため、ヒトイヌの方が圧倒的に多くなっている。
 ちなみに制限にかかって公園に入れなかった者に対しては、公園の外に特設会場が用意されていた。
 そこでは、公園内の様子を自由にモニタリングすることができたり、限定映像の入ったディスクやグッズなどを販売会でゲットしていたり、高名な調教師の座談会が開催されていたりと、そちらはそちらで盛り上がっていた。
 どう考えても赤字ではあろうが、それを少しでも緩和するための手段も取っているあたり、なんだかんだちゃっかりしているのである。


 広場にいるヒトイヌは、接触オーケーのヒトイヌたちだ。
 そのためか、膝を突いて触ろうとすると、一斉に寄ってきて触って欲しいと求めてくる。よく動物園などの触れ合い広場などで、餌を持った客に動物が殺到する場合があるが、まさにその光景と同じだった。
 その集まってくるのがヒトイヌという存在なのだから、愛好家にはとんでもなく贅沢で、かつ信じがたい光景である。
「うわ……っ、ははっ、なんか、もう、最高!」
 どのヒトイヌから触ろうか、などという実に贅沢な悩みを覚え、思わず笑み崩れながら彼が手を伸ばしてヒトイヌたちの頭や背中を撫でる。
「くぅん……っ」
「わふっ、わふっ」
 気持ちよさそうに目を細めたり、くすぐったそうに身を捩ったり。
 ヒトイヌの中でも人懐っこい性格の子たちが、彼に殺到していた。ちなみに、これは普段からそうだが、公園内に入ることの出来る人は選ばれた存在だけである。ヒトイヌ拘束され、抵抗出来ない者たちがいる場所に、下手な者を入れるわけにはいかないのだから、選別は当然だ。
 重んじられるのは性格や性質。怒りっぽかったり不機嫌になりがちだったりする精神的に不安定な者はまず真っ先に排除される。自分のためではなく、ヒトイヌが快適に過ごせるように言われなくても努力する者は許可がされやすい。
 彼もそういう人間のため、なるべくたくさんのヒトイヌを満足させてあげるべく、順番に集まったヒトイヌたちに構ってあげていた。
 そして、そういったきめ細かな気配りが見られると、当然ヒトイヌたちもそれを察し、彼と遊びたがる。
 結果、彼には八頭ものヒトイヌが付いて歩いていた。常ならばあり得ない光景に、彼も嬉しくなってしまう。
「よし……それじゃあ、遊ぼうか!」
 そういって彼が取り出したのは、色とりどりのボールだ。それをヒトイヌ一頭一頭に咥えさせていく。
 今回、広場に集まったヒトイヌたちは、口枷を共通の機能を持つものに揃えられていた。形や方式は細かく違うこともあるが、機能だけは共通している。その共通した機能のひとつが、ボールなどを咥えて運ぶことの出来る機能だ。
「よし、皆自分の咥えたボールの色は覚えておいてねー。それで呼ぶから」
 ヒトイヌごとの名前はわからないため、便宜上の呼び名代わりというわけだ。
「赤色の! 取っておいで!」
 呼びかけながらボールを受け取り、軽く放る。それに向かっていくヒトイヌ。動き方や癖を観察し、どの程度の距離に投げればいいかを見極めていく。
 全員にほどよい運動をさせるための気配りもまた愛でる者の義務なのだ。
 そして、全員にほどよく汗を搔かせたあと、彼は飲み物を準備した。
「水分補給もちゃんとしないとね。一頭ずつ来てー」
 水分補給用のボトルは先端が尖っていて、口枷に差し込んで呑ませるようになっている。
 まるで赤ん坊にミルクを与えるような姿にも見えるが、彼はいたって真剣だ。ヒトイヌたちも恥ずかしそうにしながらも、一頭ずつ水を飲ませてもらう。
 似たような光景が広場のいたるところで繰り広げられていた。
 遊び方に工夫する者、ブラッシングをするように全身をくまなく撫でてあげる者、積極的に性的な快感を与えるようにしている者など、それぞれの愛で方でヒトイヌを愛で、ヒトイヌ側が求める愛でられ方をされにいく。
 ヒトイヌ愛好家たちの楽園がそこに現出していた。


 普段からフレンドリーなヒトイヌも多いけど、ヒトイヌの中には当然特定のパートナーとのみ交流したいという者もいる。
 むしろ、普段はそちらが主流だった。特定の相手以外の接触は不可にして、パートナーとプレイを楽しむ。
 ただ、大規模なイベントということで、今日だけ誰とでも接触可能としている人が多いみたい。
 まあ、完全無料解放の条件がそれだから、大半はそれが目当てなんだろうけど。
(乱暴されたりはしないにしても……みんな、よく他人からの接触を許可するわよね……)
 更衣室のモニターに映し出された公園内の様子を見ながら、私はひとつため息を吐いた。
「どうかなさいましたか? 何かご不安が……?」
 そのため息を聞かれていたらしい。
「っと、すみません。なんでもないです」
 そう慌てて言いつくろう。
「ちゃっちゃと着ちゃいますね」
 私はいまから、イベント中の公園にヒトイヌとして入ろうとしていた。
 ヒトイヌ拘束を楽しみたい私にとって、この公園はとても都合がいい。普段は誰からの接触も禁止して、拘束を存分に楽しんでいる。
 接触や記録を完全に拒否する場合(映像などに映り込んだ場合は加工して消してくれる)、ヒトイヌ利用だとしても、公園の利用料は金額的に決して安くは無くなるのだけど、ここでしか出来ない体験が出来るのだから妥当だと考えている。
 今回はイベントということで、元々利用料はかなり安い。
 完全許可ではないコースを選択したから、無料にはならなかったけど、それでも破格の安さでヒトイヌ拘束をしてもらえるということで、利用しに来たのだった。
(まずは……と)
 全裸になった私は、早速ラバースーツに手足を通していった。ツナギのように全身一体のそのラバースーツは、私の身体のラインをいやらしく強調し、また全身を余すところなく締め付けてくる。
 潤滑油なのか汗なのかよくわからない物が身体とラバースーツの摩擦を弱め、キュッキュッと小気味のいい音を立てて、私の身体にまとわりついてくれていた。
(うん、この感覚……やっぱりいいラバーは感触が違うわねぇ)
 自前のラバースーツは持っているのだけど、比較的安いものだからかこれほどいい着心地はしない。家でこっそり遊ぶ用としてはそこそこ満足だけど、長時間身に付けるのにはやはり公園のラバースーツが一番だ。
 皺が出来ないように慎重に着ていった結果、スーツがぴっちぴちになって、身体の膨らみがより強調され、立っているだけでも恥ずかしい。
 他のヒトイヌの中には四肢の拘束だけでヒトイヌとなる猛者もいたけど、私はなるべく素肌を露出することのない格好を選んでいた。
 公園内を動き回る際、それが一番安全だと思っているからだ。実際は素肌で転がり回っても問題ないほどに公園内は整備されているのだけど。
(考えてみれば、その整備費だけでもすごい額でしょうに、こんな無料奉仕みたいなイベントをやってて大丈夫なのかしら……?)
 一利用者に過ぎない私が言っても仕方ないことだとは思うけど、経営は大丈夫なのだろうか。そんな疑問はさておいて。
 私は次に用意された道具を手に取った。それは、細いアナルプラグと連動した尻尾。
 軽く先端を唾液で濡らし、ちょっとがに股になりつつそれをお尻の穴へと差し込んでいく。係員とはいえ人の前でそういうことをやるのは死ぬほど恥ずかしいけど、かといって自分の性格的に人に任せることも出来ないのだから仕方ない。
 異物がお尻に入って来て、思わず括約筋で締め付けると、お腹の中で傘が開いたような間隔があった。
「う――ひぃっ!」
 わかっていたのに、突き上げるような衝撃を感じて変な声が出てしまった。死にたい。
 私は真っ赤になっているであろう顔をうつむけて隠しつつ、手早く次の道具に移った。
 どうしようか迷っていたけど、結局選んでしまった張り子付きラバーパンツ。それを普通のパンツを履くように足に通し、前の穴に張り子が収まるように引き上げていく。
 あらかじめ塗られていたオイルと、自分自身の分泌した液が潤滑油となり、あっさりと張り子は私の中に入り込んできた。いまは指一本くらいの細いものだというのもあるのだろうけど。
 ラバーパンツは肛門に干渉しないようになっている。しっかり腰まで引き揚げ、位置を調整した後、係員にお願いして特殊なスプレーをかけてもらった。それによってラバーパンツはラバースーツに癒着し、再び薬を使わない限り脱げなくなった。いわば簡易的な貞操帯というわけだ。
 安全のことだけ考えれば金属の貞操帯の方がいいのだろうけど、なるべくごつごつしたものを取りつけたくない私は、この形状の貞操帯を愛用している。
 もし万が一不埒なことを考えている利用者に襲われたとしても、警備員が駆けつけるまでに犯されたりすることはこれでまずない。
「よし……次ね」
 ドキドキと心臓が跳ねる。次に私が手に取ったのはバイトギャグ。完全に言葉を奪うことを目的とした無骨な口枷だ。この公園専用の加工として、咥える部分と連動した、犬の顎のフォルムが作られている。口枷をかみしめたり緩めたりすることで、その顎の部分が開閉し、物を咥えることができる。水を飲むための機能もあって、人間としての言葉を奪いつつも、ヒトイヌとして色々出来るようにする、という理想と実用性に富んだものだった。
 それを大口を開けて咥え、頭の後ろでベルトを固定する。ベルトは横だけではなく、縦ににも走り、私の頭部をぎゅっと締め付けていた。
 さらにそこにイヤーマフのついた犬耳を装着。スピーカーとマイクがセットになったこの犬耳の効果で、まるで本当に頭の上側にある犬耳から音が聞こえているような、臨場感のある状態を実現している。
 なにより、このイヤーマフは結構可愛い。横の部分にヒトイヌ公園のシンボルである、犬の肉球を表現したマークがプリントされている。私は片方にマークをオリジナルのシンボルに変えてもらっていた。といってもあんまりあからさまなのは恥ずかしいので、肉球の一部をハート型にしてもらっているだけだけど。
 ともあれ、これで自分で出来る大まかな準備は終了。
 ちらりと係員の方を見ると、係員は心得ているとばかりに頷いた。
「それでは、手足の拘束をさせていただきます。四つん這いになってください」
 私は言われた通り、四つん這いになった。手足の拘束ばかりは、人にやってもらうしかない。
 腕と足を折り曲げた状態で、袋状の拘束具に差し入れる。肘と膝に当たる部分にはちゃんとクッションがあり、比較的長時間四つん這いで動き回っても大丈夫なようになっていた。
 いくつもあるベルトを引き絞ってもらえば、私の四肢は折り曲げたまま、四つん這いで動くことしかできなくなった。
 この自由をほぼ剥奪された状態が心地よい。
 最後に赤いプレートのついた首輪を巻いてもらい、準備は完了。
「それでは参りましょう」
「ウゥー」
 更衣室から公園に出るまでの短い間、係員の彼女にリードを引いてもらう。
 人間からヒトイヌへ。短い時間でも人にリードを引いてもらうことで、その意識の切り替えがスムーズに行える。
 扉の前まで来ると、跪いた係員が私の首輪からリードを外してくれた。
「それでは、当公園をお楽しみくださいませ」
「ウゥッ」
 私はお礼代わりに唸ると、開かれた扉から公園へと繰り出した。
 公園内には、たくさんの人が――いえ、ヒトイヌがいた。
(うわぁ……すごいわね……)
 映像を見てわかっていたつもりだったけど、実際公園に入って見ると想像以上の数だ。
 広場はまだ遠いのに、多数のヒトイヌがそこら中をうろついている。

 追いかけっこをしているのか、道を走っているヒトイヌたち。
 芝生の中で、あられもない格好をしてくつろいでいるヒトイヌたち。
 身体や鼻先を擦りつけ合い、押し合い、じゃれ合って遊んでいるヒトイヌたち。
 茂みの影で、なにやら身体を重ねてどうやら交尾をしているらしいヒトイヌたち。
 歩いていて喉が渇いたのか、休憩所で水を飲んで一服しているらしいヒトイヌたち。

 とにかく、色んなヒトイヌが色んな形で自由に過ごしていた。


つづく

10月に書きすすめようとしている作品たち(※あくまで備忘録です)

白日陰影で途中になっている作品の一覧です。

・ヒトイヌ拘束脱出ゲーム(それぞれの目的地に到着するふたり。そこで待ち受けている鍵を得るためのミニゲームとは……)
[ 2018/10/01 18:43 ] 連絡 | TB(0) | CM(0)

肛門拘束(仮) おわり

 肛門と秘部を同時に責められ、ただでさえふらふらしている私に、彼は容赦なく追い打ちを掛けてきた。
「ほら、あともうちょっとだ。頑張れ」
 そう言いながら、あろうことか私の背後に回り、私を前に立たせたのだ。
 いままでは彼がある程度視線を遮る盾になってくれていた。だから、私は彼の背中を見て、ただ歩くだけに集中していれば良かった。
 けれど、その彼に前に押し出されると、私を守ってくれるものはなにもいなくなる。
「ひぅ……っ」
 悲鳴をあげそうになって、飲み込む。こんなところでそんな悲鳴をあげたら、彼もフォローし切れなくなる。警察を呼ばれて事情聴取なんか受ける羽目になったら一大事だ。
 だから、私はいままでと同じように、できる限り身体を曲げず、反らさずに歩き続けなければならない。
 だけど。
 いままでと違って、すれ違う人たちの視線がみえる。奇妙な格好をしている私を横目で見ていくのがわかる。首輪なんかはすごく目立つだろう。当然、そこから紐が前後に垂れているのもみえているはず。
 ひそひそ話している声が、私を嘲笑している声に聞こえてしまう。
「ん、ぎ……っ!」
 思わず身体を丸めそうになって、アナルフックが肛門を持ち上げた。
 慌てて背筋を伸ばすと、今度は前の穴が引っぱられる。前の穴に刺さっているバイブは震動しているから、その刺激は強烈だった。
 あまりの刺激に目の前に星が飛ぶ。気持ちいいのか痛いのか、よくわからなかった。
「あっ……う……!」
 刺激が強烈すぎて、私は思わずその場に立ち止まり、身体を震わせる。
 生暖かい感触が、私の股間に広がった。ざわめきや人の視線がさらに強くなったように錯覚する。
 失禁、という言葉が人ごとのように頭の中を過ぎた。
「げっ」
 彼がそんな声を上げるのが聞こえた。
 少し慌てた様子で私の隣に並び、首に繋げてあった紐を外す。前の方だけ。それだけでずいぶん楽にはなった。バイブの震動も止まっている。
 でも生暖かい感触は止まらず、太股や膝に広がり、靴下と靴が気持ち悪いくらいに濡れてしまった。
 呆然としている私の肩を抱き、彼は商店街の入口と急いだ。ざわめきが遠ざかる。
 商店街を脱出すると、彼は予め置いてあった車の助手席に私を座らせる――前に、席に大きなタオルを広げて敷いた。その上に私は腰を下ろす。ぐちゃり、と気持ち悪い感触が股間から広がった。
「あーあ……すまん。ちょっと刺激が強すぎたか……」
 彼は運転席に乗り込み、急いで車を発進させた。
 しばらく無言のまま車は移動し、商店街から十分離れた位置のコンビニで止まる。
「大丈夫か?」
 彼はそう言いながら私の両手を自由にしてくれる。
 そこに至って、私は漸く自分の状況に、思考を追いつかせることができた。
「わたし……あ、あんなところで……っ」
 顔から火が出るとはこういうことを言うのだと思う。
「漏らしちまったなぁ」
「ば、ばかっ!!」
 茶化すように言う彼の肩を思いっきり叩く。「いってぇ!」と彼は悲鳴をあげたが、それくらいは甘んじて受けてもらおう。
「な、なな、なんてことしてくれるのよ……!」
 私は顔を両手で隠して呻く。恥ずかしすぎて死にそうだった。
 でも彼はにやにやと笑ったままだ。
「いやー、ちょっとやりすぎたなぁ。悪い悪い」
「……絶対悪いって思ってないでしょ」
 ジト目で彼を睨み付けると、案の定良い笑顔を浮かべていた。
「めっちゃエロかったぜ? 正直、気持ちよかっただろ?」
「~~~っ! 知らないっ! 早く着替えたいから、車出してよ!」
 そっぽを向きつつ、そう叫ぶ。
 彼は笑いながら車を発進させた。
 今回も大変な目に遭わされてしまった。まあ、まだ現在進行形でアナルフックとバイブが入ったままなんだけど。
「しかし、イクと同時に漏らすとは思ってなかったな……次は大人用おむつでも上から履いてやるか?」
「二度とやらないから!」
 私はそう強く拒絶の声をあげておく。彼は笑うだけで何も言わなかった。
 そうして、その日のプレイは終わった。

 ただ、私が再びその日と同じような格好で――あるいはもっと厳しい格好で――街を歩くのは、それほど遠い日の話ではなかった。
 そう、私は――拘束されながら露出することに、嵌まってしまったのだ。

~肛門拘束 おわり~

肛門拘束(仮) 4

 前に屈んでも、後ろに反らしても、どちらかの穴が引っ張られる。
 秘部に入れられた方はゴム紐のせいで普通にしていても引っ張られてしまい、ただじっとしていることも許されない。
「よし、準備完了。いくぞ」
 肘の辺りを掴まれ、私は再び商店街を歩かされた。さっきよりもキツい。後ろだけなら平気になっていたのに。
 ふらつきながらも、なんとか耐えて歩く。体幹をまっすぐに保つことを意識して、必死に歩いた。
(うぅ……っ! ダメっ、前の奴が食い込んで来て……っ)
 ゴム紐の伸縮性自体はそんなに強くないはずだった。けれど、歩く度に中を満たしているそれの感触が走って、頭を震わせてくる。
 そしてそのことを意識してしまうと、つい秘部の中を締めてしまい、食い込んでいるそのフックの形をはっきり自覚してしまう。
 そしてそれと連動して、アナルの方にも力が入るので、慣れたはずのそっちの感触もさらに強く感じてしまっていた。
 それが嫌で前屈みになろうとすると後ろが引っぱられ、思わず仰け反るとまた前の方が食い込んでくる。
 前後の穴に与えられる感触に翻弄されつつ、顔や態度に出さないように懸命に歩く。そんな私の様子を、彼は楽しそうに見ていた。
「気持ちいいか?」
 こっそりと耳打ちするように聞いてくる。
「むっ、無理矢理穴を広げられているのよ? 気持ちいいと思う?」
 思わず憎まれ口を叩いた私に対し、彼は。
「そっか、じゃあ気持ちよくしてやるよ」
 そんな不吉なことを言った。
 その手には、ピンク色の、リモコンらしきものが。
「ま、待って……っ」
 それが何のリモコンかわからなくても、私は咄嗟に止めていた。それで彼が止めてくれることなんてないとわかっていたけど、言わずにはいられなかった。
 案の定、彼は応える代わりにそのリモコンのスイッチを入れる。
 それと同時に、衝撃が走った。前に挿し込まれたフック状の道具は、ただの張り子じゃなくて、遠隔操作できるバイブ機能付きだった。
「んくっ、ううっ……!!」
 思わずあがりそうになった声を抑えるようとして、思わず身体を丸めてしまう。
 そうすれば当然、肛門で銜え込んでいたアナルフックが引かれ、肛門が広げられる異様な感覚が走った。
「んぎい……っ」
「ほらほら、歩かないと不審に思われるぜ?」
 真横に立っている彼が、私を急かして促し、歩かせる。覚束ない足取りで、前に進むことを強制される。震動は止めてくれない。あまりに強烈な感覚に、いまにも気を失ってしまいそうだった。
 こんな普通の人たちもいっぱい周りにいる中で、秘部と肛門をフックに抉られながら、両手の自由もなく、震動による快感を与えられている。歩き方も不自然になっているからか、時折私の方を見て怪訝な顔をする人もいた。こそこそ内緒話をしているように感じるのは、自意識過剰だろうか。気づかれているのかもしれないし、そうでないのかもしれない。
 そんなシチュエーションの異常さに、かえって興奮してしまうのだから、私も彼のことを変態とは言えなかった。

つづく

肛門拘束(仮) 3

 二個目のアナルフックなんて使ったら、肛門がとんでもないことになる。
「ちょっと待って! 二個目はいや!」
 抵抗しようとする私の肩に彼が手を置き、宥めるように言う。
「しぃっ! 静かに! 見つかったらやべーだろっ。後ろ用じゃねーよこれは」
 そういう彼は、真剣な目をしていた。確かにいくら同意の上とは言え、見つかったら説明も面倒だし騒ぎになると誤魔化すのも大変だ。私はぐっと口を噤みつつ、彼に視線で問いかける。「どういうこと?」という意思を込めて睨むと、彼は冷静な様子で説明を始めた。
「いいか? こいつは前に使う。こうして……」
 彼が私の首輪の前に紐を結び、服の中を通して下半身の方へと垂らす。
 服の裾から彼が腕を突っ込み、紐はブラジャーの下を通された。その紐はちょうど私のあそこに届くか届かないかくらいの長さになっているようだった。
「そんでもってこの先端にこれをつけて、だ」
 さっき見せられたフック型の道具を紐の先端に繋げると、ちょうど私のあそこにその道具の先端が当たる。ズボンとショーツの中に手を突っ込んで道具の位置を調整していた彼が、不意にニヤリと笑った。
「……一応、ローションも用意しておいたんだが、この濡れようなら必要ないな?」
「……し、知らないっ」
 彼に指摘されるまでもなく、私のあそこが十分濡れているというのは自覚していた。
 その場所に彼がフックの先端を擦れさせ、そこから溢れる液体をそれに塗りつけた。
「尻穴を抉られながら歩いてただけだっつーのに、こんなに濡らすとはなぁ。お前が変態で俺は嬉しいぜ」
「……っ、ばかっ」
 言葉で煽られて顔が真っ赤になるのがわかる。顔を隠そうにも、腕の自由が利かないからどうしようもない。
 そんな風に私を言葉で煽りながら、彼はフック型の道具の先端を、私の中に潜り込ませてくる。道具はそれなりの太さで、私の内壁を抉ってきた。
「……っ、くぅ……っ」
「よし、こんなもんか。離すぞ?」
 そう彼がいうのを、私はてっきり、「離すから道具を落とさないようにしっかりくわえ込めよ」的な意味だと思っていた。結構大きな道具だったし、紐が繋がっていて、ショーツで押さえているとはいえ、そのままにしてると落ちるのではないかと。
 けれど、違った。
「っ……!? んあっ!?」
 彼が手を私のショーツから抜いた瞬間――私の中に潜り込んでいたそれは、私の首輪を引っ張り、私のあそこを上向きに持ち上げた。
 首輪に結ばれた紐が、ただの紐じゃ無くて、ゴム紐であったことに、この段階まで気づかなかった。縮む力が強いのか、まるで彼に指をひっかけて持ち上げられているような、そんな錯覚すら覚える。
「痛っ……っい、ぎぁっ!!」
 思わず前屈みになりかけて、アナルフックのことを忘れていた。前屈みになろうとした分、アナルフックが引き上げられて、思いっきり肛門が歪むのがわかる。
 激痛に目の前に星が瞬いた。

つづく

肛門拘束(仮) 2

 私は家の中で十分だと言ったのに、外を歩こうと提案してきたのは彼だった。
 いくらぱっと見は普通に見えるようにしているとはいえ、首輪は丸見えだし、よく見ればそこから伸びた紐が服の下に潜り込んでいるのは見えているはずだし、肘同士を結んでいるリボンもよく見れば腕の自由を著しく制限しているのもわかるはずだし、変態的なプレイをしていることが、いつ誰かに気づかれるんじゃないかとひやひやものだった。
 そのスリルに興奮してしまっているのだから、私には彼のことを変態という資格はないのかもしれない。


 彼の背に隠れつつ、商店街の散歩を続ける。
 歩く度にわずかな震動がアナルフックを引き上げ、気にしないようにしても意識せざるを得ない。
 それ以上引っ張られないように背筋をまっすぐ伸ばすと、それに伴って突き出された胸が揺れるのが気になる。
 自慢ではないのだけど、私の胸はかなり大きい部類に入る。
 なので、背筋を伸ばして歩くと、ただでさえ大きなそれを強調しているような状態になってしまい、かなり恥ずかしかった。
 隠そうにも両腕は拘束されているから動かせない。
 結果として、私は羞恥に耐えつつ歩き続けなければならなくなっていた。
 彼の方はといえば、私が胸を突き出すような格好で歩くのが嬉しいのか、いつも以上に笑顔だ。このおっぱい好きめ。
 ただ、そのコンプレックス一歩手前にある胸に注目しているのは、確かに彼だけじゃなく、道行く人もそうだった。すれ違う人のうち、大抵の人が私の突き出された胸に視線が一瞬吸い寄せられているのがわかる。老若男女関係ない。
 幼すぎる子供は別として、やっぱり私の大きな胸は目立つのだ。それを突き出して強調しているわけだから、注目されないわけがなかった。
 いつもの私は前屈みになってそれを隠そうとするのだけど、いまはそれをすると肛門が引っ張られてしまう。
 さっきの衝撃を覚えている私としては、気を遣って歩かなければならなかった。
(ん……少し、慣れてきた、かも……)
 歩き方によっては常にアナルフックが引っ張られ、肛門が刺激されてしまっていたけど、だんだんどう歩けばそういった刺激を与えずに済むのかわかってきた。
 胸が強調される歩き方なのは変わりないので、恥ずかしさは変わらなかったけど、これなら十分歩き切れそうだ。
 それを意地悪な彼が許すわけもなかったけど。
「ちょっとこっち」
 彼はそう言って私の肘辺りを掴んで、狭い路地に入り込む。
 急に何をするのかと思っていると、彼は私が商店街側から見えないように自分の身体を盾にしつつ、ポケットからとんでもないものを取り出した。
「だいぶ慣れたみたいだからな。第二段階に進もうじゃないか」
 彼がそう言いながら取り出したのは、もうひとつのフック型の道具だった。

つづく

肛門拘束(仮) 1

 激しく高鳴る鼓動を服の上から抑えつつ、私は商店街を歩いていた。
 道行く人たちはいつもと変わらない。ここは元々人通りの多いところで、すれ違う人がどういう人か気にしている人はいないとわかっていても、私は皆が自分を見ているような錯覚に陥って、くらくらと目眩がした。
 前を歩く彼の背中に、つい密着してしまう。
「おいおい、歩きづらいだろ」
 そんな風に言ってくる彼は、言葉とは裏腹に顔は笑っていて楽しそうだった。
 元々こんなところを『こんな状態』で歩くというのは彼の発案だったので、私は少しむっとしてしまう。
「は、恥ずかしいんだから……盾になってよ……」
「はいはい。……でもやっぱ『そう』してた方が絶対良いって。割と視線集めてるし」
 その彼の言葉にぎょっとして、思わず背中を丸めそうになって――その瞬間、肛門が上向きに引っ張られて激痛が走った。
 それと同時に首も絞まって苦しくなる。
「んぎっ……ッ!」
 あげかけた悲鳴をなんとか飲み込み、ぐっと背中に力を入れて身体を反らす。そうすると肛門にかかる力が和らいで、少し楽になった。
 私のそんな動きを見てか、彼が呆れた顔を浮かべていた。
「おいおい、大丈夫か?」
「う、うるさい……っ」
 そう攻撃的に返してしまいつつ、私はなるべく体幹をまっすぐ保つように意識して歩く。
 いま、私の肛門には、アナルフックという道具が、首輪に接続された状態で挿し込まれていた。
 だから、少しでも背中を丸めると、それによってアナルフックが引っ張られ、激痛が走る状態になっているのだった。


 昔から知らず知らずのうちに猫背になってしまうのが悩みだった。
 猫背は身体にあまりよくないとも言うし、治したかったのだけど、中々治そうと思っても治せるものでもない。
 どうしたら治せるものかと悩んでいた時、付き合っていた彼氏がアナルフックを用いたプレイ兼荒療治を提案してきたのだった。
 ぶっちゃけ、半分以上は彼の趣味だと思うし、それに乗っかっちゃった私もどうかと思うけど。
 しかも彼の趣味で、私は左右のポケットに手を突っ込んだ状態から動かせなくなっていた。彼がワイヤーを使って手首の辺りをズボンに固定してしまったからだ。さらに左右の肘を細いリボンで背中側を通して結ばれているので、手を前に持ってくることもできない。
 転びそうになったら彼が助けてくれるとは思うけど、腕が自由に動かせない状態で歩くというのは中々スリリングな体験だった。
 拘束されている箇所は少ないけど、ろくに自由が利かないという意味では、あまり拘束の度合いに意味はなかった。

つづく
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夜空さくら

Author:夜空さくら

はじめに
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